左腕と右腕
「う~ん……ある意味奪われて正解なのか? レイを助けるのに必要な物じゃなかったし、俺一人で重要な道具を持ちすぎなのもあったよな。俺が始めて、そこまで経ったわけでもないし」
スケルトンが理由だけなら、優遇過ぎるんだよな。『謎』の装備だけで十分。奪われるのもイベントの一つだと思えば納得出来るし、あれを所持してた方が狙われやすい気もする。レイと一緒にいるんだから、離れていた方が良い。『女神の籠手』はクロスで手に入れたけど、あれは誰でも可能だったはず。
「MAPでもダークエルフの姿が消えてるからな」
全階層のMAPを確認。『尾香』に俺を示す青点だけで、敵を示す赤、NPCやプレイヤーを示す黄の光も表示されない。脱出の道具を使ったのかもしれないし、『尾香』を妨害出来る特技があると面倒臭い。安全を選ぶなら、戻る事が優先。どうせ、脱出する道具を所持してないから、みんなで帰らないと駄目だし。最悪、西側から出ればいい。
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「おかえり~、そっちは何もなかったみたいだね」
地下五階。レイが出迎えてくれた。かおリンはすでに戻っていて、分身の姿は……元に戻っているどころか、腕が四本になってる。バラバラになったのを元に戻せるなら、『補骨』まではいかなくても、引っ付ける事は可能? それなら俺の『補骨』の予備として置いててくれよ。
「何もなかった事はないから。色々あったんだよ……女神の籠手を奪われたり、???が別の左腕だったりしてさ」
セシリアの左腕だと確信はないから、かおリンには言わないのが正解だろうな。東のダンジョン、地下五階にあった突き刺さった『剣』が、消えていた。大量発生の時間が終わっても、その期間までは野良魔物は出現しない。けど、守護していた鎧はあの場所に一歩踏み入れると、動き出した。大量発生の時間に誰かが手に入れたのか、短時間で鎧を一度倒したのかは分からない。
「ん? 『そっちは』って事は、かおリンの方にも何かあったわけだよな」
こっちがダークエルフだったんだから、かおリンの方がゴースト大量発生になるのか。他プレイヤーがいるかどうかも分からないし、攻撃するのも難しい。『ヒロインの左腕』が登場するなら、レイが関係してた場合はそっち側なんだろうけど。
「西の大量発生の???は左腕じゃなくて、右腕。あれは……草井の右腕かなって。ポン骨を行かせようとしたのは、そのためと思ったんだけど」