レイの判別方法
「どこ見てるんだ? 反対側だぞ。その頭蓋骨は分身ではないし、『補骨』も出来ない。私が持って帰るから」
反対側? レイの姿はないし、分身じゃないのなら、話すのは無理か。
「ポン骨か? 返事もないし、一向に見つからないから怒ってるぞ。それに……他に誰かいるのみたいだな?」
俺の声に気付いたみたいで、分身が返事をしたのは反対側の牢屋。後ろ向きの状態だから、サタリアの姿は見えないらしい。俺の記憶を少し持ってるなら、サタリアだと分かると思うんだけど……バラバラになった骨の情報もあって、そこまで気が回らないのかも。かおリンに話してるのもそうだ。
「ああ……サタリアが俺をここに呼んだんだよ。レイを助けるために協力してくれるらしくて。かおリンにそれを伝えてくれ」
「ここに俺が移動したのは」
その先の言葉を言う前に、分身の姿は消えてしまった。分身が転移やログアウトが出来ない。時間になって、『ヒロインの左腕』の暴走が始まった?
牢屋の奥……レイが鎖に繋がれている。『ヒロインの左腕』じゃなくて、それ以外の首や右腕の部分。両足はないけど……翼か? 背中に黒い靄が翼の形を形成してるような……これってバッドの翼骨がレイの背中に移動した? バットの骨も『ヒロインの左腕』に取り込まれたからな。
「暴走した様子はないか……というか、本当にレイなのか? 進化してるような」
『ヒロインの左腕』は肉体を得たまま。使用すれば、魔力は無くなると共に骨に戻る。あの翼みたいなのも魔力が流れてそうなんだけど、大量発生に登場した話は一度もなかったよな? レイは疲れ果てた様に、下を向いたままだ。
「分身はかおリンの方へ送っておいた。私が魔力を与えてるから、暴走はないから中へ入って、確認してみればいいぞ。『ヒロインの左腕』に捕らわれたままだから、意識は回復してないけど」
牢屋は開いたまま。中に入って、レイの側に寄ると、何かが水のような物が落ちていく。無意識に俺が来た事に涙を流している? 『ヒロインの左腕』の取り込みに抵抗する痛みで涙が沸いて出てる? 俺は失礼だけど、レイの顔を覗き込んだ。
「ヨダレかよ! 鼻提灯が顔についたんだけど! 狙ってやってるだろ」
意識を失ってるというか、熟睡してるよ! 涙はヨダレだったし、タイミングが良く、鼻提灯が大きくなった時にレイの顔を覗き込んでしまったし。この時点でレイで間違いないと思ってしまったぞ。