野良に骨はなかったみたいです
「おおっ……これが魔界か! 空は紅いんだな。森の木々も変な形だし、生きてるというか……臭いもやっぱり凄いぞ」
別のVRゲームは経験済みだけど、ゲームによって世界の景色はやっぱり違う。他のゲームで魔界の空は夜のように黒く、臭いまでは再現されてなかったり。『魔人天生』の魔界は空を紅く、森の中では不気味な声、独特な臭い、風でさえも生きてる感じがする。
「そうだよね。初めて外の景色を見た時は驚いたんだから。城の中とは全然違うし、私を食べようとする魔物もいるんだよ」
外の世界に出たんだから、レイに触れる魔物もいるだろうな。同族がいてもおかしくないわけだし。まぁ……NPC、サポーターを食べようとしたのは野良魔物かプレイヤーなんだろうけど、食べる事なんて……あるかもしれないか。それなのに、レイは何事もないように森の中を進んでいくけど、凄い度胸があるよな。
「私と草井さんの移動速度だと、森を抜けて三十分ぐらいで街に着くかな? 一応……魔物は色々と歩いてるけど、どうする? 相手は私達を気にも止めてないから、先制出来ると思うけど」
ゴーストであるレイの移動が少し浮いてる事もあって、地面付近にいる魔物は気付きにくいみたいだ。周囲、下に目を向けてみると、足の生えたキノコや泥の手が移動したり、花の蜜部分が口になってる魔物が声を出したりと色々いるんだけど……
「骨がある魔物がいねぇ! 草木系の魔物ばかりか? 泥に骨があるのもおかしいだろ。森なんだから、獣系がいてもおかしくないはずなのに」
「今のポン骨の姿で獣は無理だよ。倒せたとしても、歩くキノコぐらいじゃない?」
確かにレイが言うように獣系は無理だな。ドクロ棒でもないし、頭についてたとがった角はいつの間にか無くなってる。というか、レイが俺を使って攻撃するわけで、武器でもないからダメージをもろに受けるのでは? 花の魔物の場合はあの口にそのまま飲み込まれたり、泥の手はそのまま掴まれそう。キノコは……足が短いから蹴り飛ばされる事もなさそうだけど。
「ヘッドバットでキノコは潰れないと思うけど……投げつけるのも一緒だからな」
「大丈夫! ポン骨は話せるようになって口が動かせるんだから、噛みつけば問題ないんじゃない? 美味しく頂けるかも」
獣のような牙がないのに噛みつきなんて、人の歯でも大丈夫なのか? それに毒キノコで腹を壊してしまったら……って、スケルトンだから美味しく頂き事も出来ないから!
「う〜ん……今は止めとく。野良魔物を倒したとして、強くなれるか分からないし」
『人』パックと違って、Lvがないんだよな。経験値稼ぎのために倒す必要はないわけだし。食べる事でパラメーターアップする種族もいるだろうけど、俺の場合は骨だから。