骨を蹴飛ばそう
「あの骨……『補骨』出来ないんだよ。草井の骨で腕は無かったから、これ以上は無理だからか? それでも予備で所持した方が……骨取りが得意なかおリンにお願いしたいんだけど」
「罠かも? と言った私に確認しろだと……普通に落ちてる骨とは明らかに違うから。アンタが言ったら、余計にそう思うだろ」
「草井さんの大事な骨だから! 何か道具を転がしてみて、確認するのはどうだ? ……草井の骨からって、俺の頭蓋骨は駄目だからな!」
道の真ん中にあるから、そこを通らないと駄目なんだよな。骨を拾うかどうかで罠が発動する? それとも通るだけなら、何か道具を転がしてみれば……俺の頭蓋骨を見るな! 分身みたいに体がバラバラになって、元の姿に戻るかも分からないのに……
「何かを転がす前に、骨自体が少しずつ動いてるから」
もしかして、運営が言っていた『もう一人のスケルトン』の体の一部か? 『補骨』の選択肢が出てこないのもそれ……なんて、答えの一つはもう出てるから。かおリンも分かったようで、『さっさと取りに行けと』と冷めた視線を俺に向けてる。
「はぁ……どうせ、道具袋に入らないだろ。蹴飛ばしていくのが正解か?」
急に骨の扱いが雑になったのは、分身の骨の一つが先に行ってた事を思い出したから。『補骨』出来ないのも理由の一つだし、元に戻るために必死で動いてるんだろ? 分身が返事しようにも頭蓋骨じゃないから、声を出す事も出来ない……
「……それは酷くないか? もっと別の方法で運ぶのを希望するぞ」
「話せるのかよ! 頭蓋骨がないのに」
「骨だから、声帯はないから。魔力で話してるんだよ」
コイツ……俺達がオドオドしてるのを見て、楽しんでやがったな。しかも、『魔力で話してる』って、バラバラになってるのに魔力があるのかよ。俺の時は……レイが触れた時、レイだけに聞こえてたのに。バラバラになっても元の姿に戻るし、分身のくせに俺よりも高性能過ぎないか!
「……放っておいてもいいんじゃないか? あれだけで進めるみたいだし。俺やかおリンに手はないから、口で咥えるのは嫌だろ」
道具袋に入れられないなら、持ち運びには咥えるぐらいしかない。後は骨と骨の隙間に……入るか? ここに来るまでは協力的だったのに、態度が前みたいになってないか?
「そんな事言ってもいいのか? 俺の目の前に『ヒロインの左腕』……レイがいるぞ」




