街へ出掛けよう
「何よ……喜んでくれないの? そんな風な顔をしてるんだけど」
骸骨の顔から表情を読み取らないでくれ。
「あの時、別れや感謝の言葉も言えなかったし、レイがいないと身動き出来ないから……嬉しいと思う気持ちは確かにあるぞ」
でも、出来るならゾンビの骨を、無理ならデビルドックの骨を一緒に持ってきて欲しかったんだけど。
「そうでしょ! ついでに私の目的も叶えられたら万々歳なんだけど、これは秘密ね。この謎の首飾りは付けたままでもいい? ポン骨の右手の方は草井さんも一緒に連れて行けないかと思って」
レイの目的? レイや草井さんはNPCというよりもサポーター的な扱いなのか? レイや草井さん専用のイベントがあったりするとか? 『魔』がソロ推奨なのも、プレイヤー達には魔物のパートナーがいるのかもしれないし。
「それで草井さんもか……右手を『与骨』で渡したいけど、腕がないんだもんな。一応、『与骨』で鉄骨を返却するのは止めてくれ。今回はドクロ棒になるつもりはないから」
レイが草井さんに右手を渡しただけで、俺の意思で動かせる事が出来る。それでも接着剤を貼られたみたいに鉄骨から離れず、上下に鉄骨を動かせるだけ。持ち上げるほど力が足りてない。そう動かすと、草井さんも変な声を出すのは駄目だろ。それに尻に突き刺さったのを、頭蓋骨に嵌めるのドン引きだ。
「そうなると、新しい骨を探すのが、今のところの目的になるわけね。外に出たけど、この一帯は森だから、骨を集めるなら近場にある街がいいと思うよ。私は何度ナンパされた事やら……ちゃんと彼氏がいると言ったから安心してね」
ネタバレだぞ、それは! 外の光景を最初に見るのもあるけど、サタリアが何処を選んだかを楽しみにしてたのに半減だ。それに一応レイも装備の一部扱いなのに、街に遊びに行ってナンパされるとは。美人である事は否定しないけど、彼氏役は俺なのか? それは嬉しいと思うべきなのか……ツッコミどころが満載だな!
「森の中じゃなく、街に骨があるのか? 何処に行くかも分からなかったし、掲示板で情報を確認しなかったからな。素材として売ってたりするのかも」
森の中にいる野良魔物を倒して、骨をGETしないと駄目かと思ったけど、街にあるなら利用するべきだな。強い骨がいいけど、今の状態で敵と戦うとして、攻撃はヘッドバットだけだし、草井さんが攻撃……出来るのか? まずは何でもいいから、体のパーツを増やすのが先決だ。
「よし! 今から街に行ってみよう。別のプレイヤーと会えそうだし、楽しみだな」
「了解、街に向かうんだね。草井さんも来るつもりなんだ」
レイは両手で俺を持った。俺の頭蓋骨はベルセブの魔力で白から赤へ。目立ちたくなかったけど、この姿だとレイが進化した感じで、そのための付属品が俺。頭蓋骨だけなのは恥ずかしいから、目眩ましになって丁度いいかも。
「草井さんは右手の装備扱いのままだからか……外に出る時に換気だ。ドアを開けっ放しなしでも大丈夫だよな?」
マイルームに別プレイヤーが泥棒に入る事はないだろ。草井さんはゾンビだから臭いが充満してるんだよな。換気のための窓もないし、ドアを開けたままにしておかないと。
「ちょっと……草井さんが少し傷付いてるよ。臭いなんて、ずっと一緒にいたら気にならなくなるから。それに魔物って独特な臭いがするもんだよ」
そう言われると複雑な気持ちになる。確かに魔物は無臭というか、独特な臭いがありそう。そう考えると、街の中は凄い事になってそうだ。嗅覚が回復しなかったほうが良かったのでは?