メジェド様
「布を引き摺るぐらいがベストと思ったけど、ミイラの包帯よりも生地が足りなかったんだよ。宙に浮くのは無理な話だし、すね毛を生やした足じゃないんだし、骨なら別にありなんじゃ……」
「クオリティが学園祭のお化け屋敷以下だろ。まぁ……もっと馬鹿らしくすれば、そっちに目が行くかもしれないか」
かおリンは絵の具のような物を口に咥え、俺の顔辺りに落書きし始めた。近くにあった湖で確認してみると、大きな目が二つ描かれてるだけ。何処かで見た事があるような……と思ったら、エジプトのメジェド様だ! 様々なゲームで使われる時、ほぼ一緒の姿。本当にそう思われたら、余計に攻撃されないか? いや……分身もミイラ男の姿になってるから、『魔人天生』の中でコスプレしてるとか、エジプト気分と思ってくれたら御の字だ。俺的には……メジェド様の姿になるのは悪くない。
「場所が砂漠なら、気分はエジプトなんだけどな」
「ん? 知っていて、分身をミイラにしたんだろ。ゴーストが出現するのは砂漠の移動オアシスなんだから」
「へっ? 場所をちゃんと確認してなかったから。……本当に砂漠なの? かおリンの部屋の近くなんだよね」
砂漠となれば、魔界でも絶対暑いだろ。それなのに布を被ったり、包帯を巻くなんてドMか! 骨に直接当たらないだけ、マシと思うべきか……かおリンも、その近くに部屋があるなんて可哀想に……
「景色なんて一転して変わるから。『仲間の森』を抜けたら、墓地みたいになってただろ。ここに湖はあるけど……」
「……マジか!」
その湖を迂回して、森を抜けると……そこは砂漠! 本当に区切りが凄くないか。
「私の部屋はここを横切るぐらいで、オアシスは奥に進んで、探さないと駄目だな。なんせ、移動オアシスだし。私は素材探しを途中で諦めたな。面倒臭い事に、熱というか、砂漠耐性? そんなのがないと水分のある道具が必要になるんだよ。じゃないと、HPが減っていくから」
人じゃなくても、砂漠対策が必要なの? 精神耐性で何とかならないか? かおリンは場所が分かってるなら、対策を考えてきてるんだよな?
「ちょっと待て……移動オアシスはダンジョンなのか? じゃないと、砂漠一帯が大量発生になるような……」
次の大量発生まで一時間を切っている。けど、砂漠の始まりに結界は展開されてない。遠目にみても、結界の姿形すらないんだけど……
「一度オアシスに入れたけど、ダンジョンじゃなかったぞ。狭かったから、あそこでの大量発生は数が少ないと踏んでるんだけど……すぐに探しに行くか?」
それはかおリンの部屋に寄らない……わけにはいかないだろ! 転移先を増やしたいのもあるし、女子の部屋なんて滅多に行けないんだから。