擬態
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「面倒臭い……案内するなんて言うんじゃなかったわ。部屋に戻ってもいいか?」
ゴースト大量発生場所の案内をするとかおリンから言い出したのに、ダラケだした。毎度の如く、かおリンは自分で移動するよりも運んでもらう。今回も俺の頭に乗ってる形なんだけど……
「これで少しは誤魔化せるかもしれないだろ? 本当にこの事をすっかり忘れてた俺達が悪いわけなんだし」
かおリンが面倒臭いと言った理由は、俺がスケルトンなのが問題なわけだ。大量発生時だから野良魔物は出現せず、プレイヤーしかいない。変な姿ばかりの俺だったけど、今は歴としたスケルトン(両腕はないけど!)。プレイヤー達に初めて狙われた事に、少し感動すらあったぞ。しかも、分身のせいでプレイヤーが二人いると勘違いする奴もいそうだけど。
「何ニヤついてるんだよ。最初だけだかな! 絶対『もういいわ!』と思うから」
骨なのに分かってしまう程か! いやいや、襲ってくるプレイヤーを俺が倒せたんだ! 大量発生の魔物でもなく、プレイヤーを! 俺が!
シルバーウルフの時は一瞬の輝きだったけど、草井さんの骨は強化は本当に凄い。進化したプレイヤーを蹴りだけで倒せるんだから。かおリンや分身の協力もなしで!
「少しは余韻があってもいいだろ。欲しい素材はそっちに渡してるんだから」
あっちが素材狙いで襲うように、逆も然り。返り討ちで素材を落とす。攻撃を仕掛けてきたのも五人目で、三つの素材はかおリンに渡してる。
「その分、私は骨を渡してるわけだからな。それに……本当にそれで誤魔化せると思ってるのが凄いわ」
何を言う! 完璧なカモフラージュだろ? ミイラ男のプレイヤーが落とした包帯で、体をぐるぐる巻きにしたんだ。それだけでミイラ男への擬態が完成。包帯が足りず、所々見えてるのはダメージを受けてる感じになりそうだし。
「……同じ意見だな。俺の方は良くても……お前は駄目だろ」
ちなみにミイラ男の姿になってるのは分身の方。両腕のない俺が器用に巻けるわけないだろ? 装備出来れば良かったけど、謎の鎧もあるわけだし。包帯も足りないし。
なら、俺はどう擬態してるか? 大きな袋? 布を覆い被ってるだけ。これでゴースト系の何かと勘違いされないか?
「何故? みたいに首を傾げるなよ。足の骨が見えてるし、宙に浮いてないから」