早く人間になりた……くはない
「おおっ! みるみる力が湧いて……くるのか?」
勝手に進化を選んだ感想がそれかよ! ちょっと、どんな変化が起きるか期待したのに前と同じだよな? 進化の第一段階目だから、そこまで見た目が変わる事がない? 違和感を感じてるのは、逆に退化したって事は……草井さんならありそうだぞ。
「流石に何かあるだろ? 特技を手に入れたとか、ゾンビかゾンビナイトになったとか教えてくれたり」
スケルトンの『ファイター』や『マージ』と一緒だとして、武器がないと見た目は変わらないもんな。俺の装備から……外されてる! 鉄骨も無くなってるんだけど、それも進化素材に含まれてたわけ? しかも、右手の骨も消えてる。そこは返して欲しいし……装備品として、一緒にいたのにどうなるんだ?
「昨日は悪い。急に抜けた形になってさ。こんな時間になってしまって……あれ? 『ポン骨』が進化してなくて、草井がなってるし」
かおリンがドアも開けず、部屋の中に直接転移してきた。
「えっ! 分かるもんなの。かおリンは進化……してないよね?」
かおリンの姿は昨日と変わってない。運営からは緊急メンテの補填として、進化素材を貰えたんだよね? それを知ってるみたいだし、それを開けてない? いくつかの進化は出来る状態だったっけ?
「私は進化先を全て揃えてからで……人になりたいんだよな。草井の方が近付いてるから」
そういえば、『人間になった時には』とかおリンは言ってたけど、その冗談を今回も続けるか? それと草井さんが人間に近付いてるってのはスライムと違って、ゾンビだから。目が戻った事で、顔に魔力が流れたから。
「もしかして、気付いてないのか? 本人も気付いてないのかよ」
草井さんも首を傾げてる。いや、装備から外れた事で、何かが起きたのは確かなんだけど。
「腐敗の臭いが薄まってるんだよ。どういう進化なのか分からないけど、右腕が、腐ったのじゃなくて、普通の人間の腕になってるだろ? 一緒に居すぎて、その臭いに慣れてしまったわけだ」
「……うおっ! マジだ。肌のきめ細やかさが違う。まさか、ベースとなったのは俺の右手の骨か」
右手の骨が消えたのも、それで納得出来るか。体に取り込んだとすれば、『与骨』したのと一緒かも。それに俺の装備だった『鉄骨』も使ったわけだし、装備から外れても、離れた場所へ一緒に転移してもらいたいところだな。




