ゲームオーバー
「濃い煙の方に光がいそうだよな。薄いのは残滓と思うべきなんだろうけど……自分の勘を信じるしかないよな」
漂ってる臭いは薄いのも含めて複数。今にも消えそうなのは頭蓋骨を壊した場所からだ。という事は光の所持品……種族はスケルトンに間違いないよな? けど、両腕が動いてるのに濃さが別のなのはどういう事だ?
「見つけた! って、『ヒロインの左腕』みたいに宙に浮いてる。あれだって、バットの羽を奪われたからで……」
片腕を発見。俺から逃げるように、手のひらがこっちを向いていない。それよりもだ! 羽もないのに浮いてるのはどうなの? 魔力の高さが理由なら、性能差がありすぎだろ。あんな姿で『補骨』したってのも無理があるぞ。
「何かムカつく! 俺も勝手に『与骨』されなかったら、『補骨』しなくても問題ない強さだったかもしれないのに」
あれが本体だと信じて、早めに倒さないと。今思えば、キャラメイクの質問の一つに魂はどの部分に宿るかというのもあったし、それが腕でも問題ないわけだ。まぁ……背中に刺さったナイフを抜いたせいで、血が止まらないみたいに、HPが地味に減っていくのが理由なんだよな。塞ぐためにもう一回突き刺すのも手だと思うんだけど、背中だから見えないし、別の箇所に刺さる可能性も。TV画面が俺達に注目してたら、見てる観客がいるかもしれないし、乱入者がそんなので死亡なんて……目も当てられない。
「HPは減ってるけど、スピードはこっちの方が上。頭蓋骨みたいに叩き割ってやる」
少し……かなりの嫉妬があったのが悪かった。光には腕はもう一つある。スピードが上なのを過信して、腕の移動速度が遅くなっている事も。標的だけに集中し過ぎて、臭いが薄まっていくのも気付かなかった。
俺が片腕を掴む前、壊れはしないけど、力尽きたように地面に落ちていく。その直後、俺の背中にナイフがまた刺さり、HPが減っていくのもあって、ここでゲームオーバー。死ぬ直前に振り向くと、やっぱりもう一方の腕の骨。しかも、臭いの煙が濃くなっていく状態なのが分かった。もしかしたら、徐々に右腕から左腕に力を移行したのかも。それでナイフの二段攻撃も時間差が発生したわけだ。




