そういうつもりはありません
「アンタ……もしかして、アイドルの『光』? ライヴにも参加してたらしいし」
「あれ? 深く帽子を被って、顔を見えなくしてたんだけどな。正解!」
おかんの言う通り。光は帽子を少し上にして、顔を見えるようにした。初めて見たけど、可愛い顔立ち? 確か……グループが多くの男性アイドルが所蔵する『マネーズ』という事務所の一員なのも納得だ。
「あれ……?」
光とちゃんと目があった後、俺の姿を舐めるように見る……というのは、言い過ぎか? 知り合いでもないし……もしかして、そっちの気が? それとも、俺が『マネーズ』にスカウトされたり……
「ちょっと! 顔か近いって。俺はどっちとも興味がないから」
「どっち? っと! 僕もそんなつもりはないよ。TVもないし、体を張る事はないからさ」
TVだったら……俺が全国的に辱しめを受けるというか、『光』のファン達に狙われそうだから止めてくれ。
「なら……じろじろ見てきたのは何でだ? 一応、アンタからしたら、不親切な息子だと思ってるかもしれないけど、違うから。酷いのは母親の方だから。人にライヴに行かせておいて、置き去りだぞ。財布も持ってないのに」
ここは言い訳されてもらおう。アイドルだろうと気にしない……というか、何でウロウロしてるんだ? 『魔人天生』のイベントは終わったはずなんだけど、次の仕事まで休憩中か?
「ハハッ……って、ゴメン。君にとっては笑い事じゃないんだよね? こっちはもう少し時間を潰さないと駄目なんだ。VRの対戦ゲームで一度ご相手頂けたら、家まで車で送るか、交通費をあげるよ」
何を言ってるだ。困ってるのは確かだけど、家まで送ってくれるとかおかしくないか? それも条件がVRの対戦ゲームなんて……時間潰しでも別の方法があるだろ。
「えっと……怪しい勧誘? 俺達は会ったばかりなのに、意味が分からないんだけど」
「ああっ……こっちが一方的に知ってる……というのもおかしいかな? 君は『魔』のスケルトン、『ポン骨』でしょ。本来の『魔人天生』じゃないけど、対戦するのは面白いと思ってさ」
待って……何で俺が『ポン骨』なんて知ってるんだ? 俺の姿をトレースはしたけど、頭蓋骨だけで分かるわけ……そもそも、注目プレイヤーとして動画で映ってないはずだから、バレるわけがないぞ。




