お前らなのかよ！
「おおっ！ 『人』とは全然違う。パック別に違う歌にしたのかな？」
『魔人天生』の説明もなく、『魔』はいきなりライヴが始まる形なんだな。
「あれ？ 曲が止まった……わけじゃなくて」
激しい曲が一旦止んだのは、歌姫の登場の演出。カツカツと足音が聴こえ、こちらに近付いてくるのが分かり、歌声が響き渡る。『人』は透き通った歌声だったけど、力強い歌声だと最初から分かる。どんな奴が登場するか観客達は期待してる。セシリアが本当に登場してたのなら、『魔』も注目プレイヤーの一人を持ってくる？ ヒールの音にも聴こえたけど、人型の魔物だよな？
「我が名は魔王サタリア。お前達を骨抜きにしてやるぞ」
「…………」
観客達は黙ってしまってる。コイツ誰？ どう反応すればいいの？ って、感じだ。魔物！って感じも無ければ、アイドルなんかでもないし。けど、俺の中では『お前かよ！』とおもいっきり言いそうになったわ。
観客のあまり無反応な事にサタリアは後ろを向き、フルフルと震えてる。いきなり失敗した事に対して恥ずかしいと思ってるのか、首元が真っ赤になってるぞ。
それでも気を取り戻して、歌に入る。曲に合わせて、その迫力は魔王の叫びその物。サタリアはプレイヤーじゃなくて、NPCか運営メンバーの一人？聞いた事がある人気声優の声でもないし、有名歌手でもない。けど、声を当ててる誰かがいるのは確か。観客も最初は硬直してたのに、今はワーワーと声援を投げ掛けてる。
一曲目が終わり、休む事なく、二曲目にシフト。十分しか用意されてないのに、『魔』の時に『魔人天生』の説明をする気がないのか……サタリアなら十分考えられるけど、ここは現実だぞ？
「……マジか」
二曲目もバラードやポップ系でなく、激しい掛け合いの歌。というのも、歌手がもう一人増えたからだ。『人』の方も歌姫は二人だったみたいだし、『魔』に登場してもおかしくないんだけど、問題なのはもう一人の歌姫だ。
『お前もなのかよ！』と、サタリアに続いて、知っている人物と言えばいいのか……レイの姿がそこにあった。
