序章終了
「草井さん! 受け止めてあげて」
草井さんはレイの声に反応して、倒れながらも俺達がいる方向に顔を向けた。そうする事で『与骨』の選択が表示された。ベルゼブが持ってる状態でも大丈夫みたいだけど、別の形で渡す事が出来るのか? 例えば、俺がドクロ棒になった時みたいに光の球体になって、勝手に飛んでいくみたいな。
「任せな」
草井さんの渋い声で了承した事で『交渉成立』の文字が表示された。そうすると鉄骨が俺の頭蓋骨から発射された。ベルゼブの手が引き千切られる勢いに驚きだな。
「痛っ! こういう使い方が……骨が飛んでいく事がありまちちゃ!」
「これで犬男の攻撃が……届かないぞ。レイ、これは失敗なんじゃないのか?」
俺の頭蓋骨が外れて、飛ばされたな。ベルゼブもその逆バージョンだと勘違いしてくれたみたいだ。それも鉄骨が犬男の体を貫いてしまったのもある。そのまま倒れず、頑張って近寄って来てくれるけど……
『いいの! 犬男は囮で、本命はポン骨だから』
「まさか……ヘッドバッド!」
レイは鉄骨が発射された事で、空中に残された俺をキャッチした後、ベルゼブの頭に叩き込もうとした。鉄骨から頭が外れた時、装備品としての強さが残っていて、デビルドッグの顔を潰していった。レイはそれを利用するつもりだ。とがった角で突き刺す効果も得られるわけだし。
「ぶぶっ! レイ、裏切りまちちゃね。お前が……いや、その骨が黒幕なんでちゅね。まぁ……いいでちゅよ。倒される事は必要なのは分かってまちちゃから」
その攻撃は成功。ベルゼブの頭は潰れ、人の形を保てなくなったようで霧散……小さなハエ達がバラバラに飛んでいく。その中で捨て台詞を吐き捨てた後、『ベルゼブ撃破』が達成の知らせが届いた。
「えっ? これでいいのか。復活する感じがあるんだけど……って、臭っ!」
ベルゼブの捨て台詞は復活の伏線だよな? 種族別のイベントが先に用意されてるのかも。それよりもいきなり嗅覚が復活して、無茶苦茶臭いんだけど。
「あっ……ポン骨の声も聞こえるよ。鼻だけじゃなく、声も出るようになったんだね。きっと、ベルゼブを倒したからじゃない? 魔力を吸い取って、色も赤く染まってるから」
レイが言うには、俺の頭蓋骨は赤色で染まってるらしい。ボス撃破ボーナスで魔力+10が追加されていた。これが口と鼻の方へ向けられたわけだ。
「なるほど! 後は人の骨を手に入れたら、元のスケルトンの姿に戻れるんだな」
丁度ベルゼブが溶かしたゾンビの骨がある。犬男も力尽きて、『与骨』の返却されたら、序章クリアした後でも他プレイヤーに笑われる事はないはず。
と思ったら、『序章クリアにより、本編に突入。十秒後、ここから自動移動され、マイルーム作成』と表示が出てきた。
「待て待て待て! 十秒後は酷すぎるだろ。『補骨』でスケルトンの姿に……じゃなくて、レイに別れの言葉だって」
そう慌ててる間に時間は過ぎ、俺の視界はブラックアウトした。