史上最低の戦闘
『実は考えがあるんです。勿論、ポン骨の協力は不可欠だし、草井さんにも頑張って貰わないと』
俺が協力するといっても動く事も出来ないぞ。いや、犬男と前足犬を上手く動かせって……草井さんが犬男を操縦してるわけじゃないからな。
「いや……草井さんが犬男の邪魔してる……草井さ〜ん!」
犬男もいい加減邪魔だと思ったのか振り落とそうとした結果、ベルゼブの唾から犬男を守る盾となってしまった。顎犬の腐肉を溶かすんだから、草井の体も一ヶ所当たっただけで、ジワジワと溶け広がっていく。消化液は骨まで溶かさない。やっと人の形の骨を『補骨』出来る可能性が……草井さん、君の骨は無駄にしない。
『ちょっと……草井さんは死んでないから!』
溶けてない……俺が見たのは幻? まさか、「残像だ」とか言う渋い声で言ってくれるのか! なんて、人の骨が落ちてますけど。
『見分けがつくようになってよね。あれはポン骨を運んできたゾンビ! ベルゼブのために、犬男の動きを止めようとしてたの。草井さんはあそこ』
そういえば、俺を運んできたゾンビがいたな。草井さんは両腕と共に転がってる。手のひらが溶けてるんだけど、ベルゼブの消化液よりも溶け方が弱いような……
その原因は犬男の攻撃で理解した。ベルゼブが唾なら、犬男は小便。それにも消化する力があったみたいで、撒き散らす攻撃をしてる。草井さんの手は、犬男の小便に直接当たったわけでだ。それにしても、なんて汚い……史上最低の戦闘はこれかもしれない。前足犬も巻き込まれて、いつの間にか溶けていたし。
俺の『与骨』で、ベルゼブと戦ってくれてるのかもしれないけど、全く役に立ってないぞ。殴るなり、蹴るなり、噛みつきでも接近して攻撃を仕掛けてくれ。もしくは、返却希望だぞ。
『あっ! 変質者の突撃だ。ポン骨が命令したの? それだったら、チャンスかも』
俺の思った事が犬男に通じたのか、二足歩行でベルゼブへ突貫。肉を溶かして、骨で突くという感じか?
「相討ち狙いでちゅか! そうはさせまちゃんよ。この武器で粉砕してあげまちゅ」
ベルゼブはここにきて、カウンター狙いなのか俺を振り上げた。ドクロ棒の長さなら、犬男の手や足が届く前に潰す事が出来るだろう。
『そうしてくれるのを待ってたんだ。ポン骨は草井さんに『与骨』して! 草井さんなら怒らずに、無理にでも口に入れてくれるから』
このタイミングで草井さんに『与骨』? しかも、怒らないって事はレイと同化してる右手じゃなくて、鉄骨だろ。草井さんが武器になるわけでもないないだろうし、どうするんだ?