あの進化はないない
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「来てくれまちちゃね。それを私に渡してくだちゃい」
俺はベルゼブの部屋まで無事に運ばれていしまった。今回は傷があまりつかず、土まみれになったのは仕方ない。
「レイの進言が当たりまちちゃね。監視バエが怪しい奴を発見しまちた。この骨を武器にするとは予想外でちちゃけど、魔王には相応しい武器でちゅ」
ベルゼブは俺やレイを裏切り者として扱わず、礼を言ってくる。俺をベルゼブ専用の武器にしようとしてる。まぁ……そう思うのも無理はないか。怪しい奴は俺やレイも見てしまったから。
『……良い具合に勘違いしてるみたいだけど、どうするの? あんなのが言う事聞くとは思えないよ』
レイはベルゼブに聞こえないよう、魂間で会話をする。
「それは否定出来ないけど……というか、目を反らしてしまうから。臭いに釣られて来てるなら、戦闘は免れないと思うんだけと」
どうなって、この会話になったのかは少し時間を遡る事になる。
ベルゼブの部屋まで着く間、俺の骨の臭いに釣られて、デビルドッグが寄ってきた。ゾンビがいるから少し距離をあけてだけど、予想通りの展開。それに前足だけが大きなってたり、犬なんだけど顎がしゃくれる変な形をしたのもいたりで、『与骨』でパワーアップしたのもちゃんといたのも助かる……はず……
「ねぇ、変なのがいるんだけど……あれって、デビルドッグなの? 顔は犬だよね。服も着てないから……丸見えなんだけど」
そう! ゾンビに運ばれながらも、デビルドッグの中に変質者がいるのが見えてしまった。レイが言うように顔はデビルドッグの顔をしてたんだけど、人みたいに二足歩行で移動してるんだよ。しかも、ゾンビでもボロボロの服をつけてるのに、パンツ一丁もつけてない。しかも、骨が見えたりしてるけど、筋肉も半端ない。
「丸見えなところに興味を示さなくても……ん? そういえば、思い当たる奴がいたかも」
デビルドッグが『与骨』で少しパワーアップしてるなら、何度も『与骨』しに来たデビルドッグAがいたぞ。そいつが進化して人間……のゾンビみたいになった?
という感じで、ベルゼブがデビルドッグAを怪しむのも無理はないだろ? 俺が『与骨』したのを知らなかったら、勝手に進化した事になるわけだし。その仲間が俺を倒したわけだから、裏切り者とは思ってないわけだ。
「まぁ……俺はベルゼブへ手渡されたから、デビルドッグと目を合わせる事になるんだろうけど」
ベルゼブを倒す武器なのに、立場が逆になるんだよ。手渡される前にレイが奪い返して欲しかったけど、あのデビルドッグの姿が衝撃的で……地味に俺達も恐怖を感じたというか……