四つん這いになってるわけじゃない
「走れる、走れるぞ! 普通に歩くのはそれほどって感じだけど、走ると全然違うな! 攻撃速度も全然でヤバいヤバい」
鎧の中に隠れる事は無理になって残念な気持ちの反面、速く動ける事にテンション上がってるわ。部屋の中で走り、壁にぶつかるぐらいだ。それだけでバラバラになった事に焦ったけど、部屋の中だから回復してくれる。耐は+されてなかったからな。
「……もう大丈夫か? かおリンが待っているんだろ」
そんな生暖かい目で俺を見ないでくれ! 犬のようにはしゃぎ回ってしまった事が恥ずかしくなるから。ようやく、まともに歩ける(四本足だけど)ようになったんだから。
「えっ……あっ、うん。シンリーに移動します」
レイやかおリンもこの場にいないし、草井さんの前では虚勢とか張らずにいよう。今回はドアを前足で開けれるのでは……なんて、自動で開くのでした。
というわけで、シンリーに到着。前は姿を隠してたわけだけど、ついに正体がバレる事にドキドキだな。人型じゃないのも掲示板に書き込まれてたし、今のパラメーターなら問題なしだ。×4は伊達じゃないぞ!
「……あれ、バザーは? こんな場所に立て札なんてあったっけ? 何々……」
『この時期、魔物が大量発生する事が稀にありますので、バザーは一時閉鎖します。別の街の行き方は』
「マジか! もしかして、草井さんは知ってた?」
「ああ。一回目の大量発生が始まる前からだ。それでも別の場所へ行く方法は教えてくれてるだろ?」
知ってたのなら、そこは教えて欲しかった。立て札に書かれてるのは東西南北の矢印と場所の名前が書かれてるだけで、地図じゃないんだよな。
「もしかして……ポン骨と草井か? お前達って変な姿ばかりなるな」
声を掛けてきたのは勿論、待ち合わせをしていたかおリンだ。変な姿なんて……草井さんと一緒にしないで欲しい。
「草井は男前になってるけど、ポン骨は……何だ? 変態プレー……」
「誰が変態プレーだよ! 格好良い獣の姿……じゃないのか」
そういえば、『補骨』したのはシルバーウルフの脚骨だけ。尻尾もなければ、頭蓋骨が獣型に変わってるわけでもない。四つん這いになってる骨と認識されてる? 人面犬でさえなってない。
「獣……なるほどね。足の形はそうだわ。乗り物としても良い感じじゃない」
かおリンは断りもなく、俺の背中部分に乗ってきた。これは……俺が付属品扱いになる展開か。スライムライダーという新しい種族……乗ってるのがスライムだから違うな。
「あれ……俺の頭じゃなくて、背中に乗ってる?」
以前、謎の鎧を着た状態で、かおリンに体当たりされた時はすり抜けたはずなんだけど。




