ハエの呼び出し
「ふんふん……『食べ物じゃないだろ!』 って。何で私が怒られないと駄目なのよ」
ゾンビは「ウガ〜」と声を出してるだけで、草井さんが特別なようだ。レイはデビルドッグは無理でも、ゾンビの通訳は出来るらしい。俺の声が分からないなら、レイの嫌がらせと思うだろうな。
「食べ物……『与骨』するのはそういう系? 強化するんだから、体に取り込めないと駄目なわけか」
犬は骨が好きだしな。ゾンビ映画だと、骨というよりも肉とか血? 鉄骨は流石に無理があるよな。骨自体に興味がないと『与骨』は反応しないどころか、怒らせる事もある。骨付き肉なら問題は……それこそゾンビ扱いになるか?
「あれ、何処行くんだろ? 案外気に入ったとか」
「だから! それは骨が傷つくから、レイもこいつを止めてくれ」
ゾンビははたき落とした俺の取っ手を持ち、引き摺りながらも何処かに運ぼうとする……というか、壊そうとしてるのでは?
「止めるって、私は触れる事も……出来るんだった。ポン骨の右手があるもんね。けど……それも無理っぽいかも。ハエが飛んでるから」
レイは一応横並びでついて来てくれるけど、ハエが飛んでるから無理? ベルゼブじゃなくて、ゾンビの周囲を飛んでる本当のハエ? そもそも、そこら辺に何匹も飛んでた気がするぞ。ゾンビ系が彷徨いてるわけだし。
「忘れてたけど、何匹かのハエはベルゼブの体の一部で、私達の監視をしてるんだよね。声は聞こえてないけど、デビルドッグが倒したのは見てたのかも。このゾンビはポン骨をベルゼブの部屋まで、連れてくるよう命令されたわけ」
「監視……そこは一番重要! 俺達の行動がバレてるわけだろ。デビルドッグを呼べずの、ベルゼブ戦になるんじゃないのか? 急展開すぎるって! 」
チュートリアルが終わったから、『ボスを倒せ』ってなったわけじゃないよな? レイも少しずつ俺から距離を取ろうとするな。序章クリア条件が『ベルゼブを倒せ』だけど、発端はレイなわけで、狙われるべきは俺よりもお前なんだからな。
といっても、レイがゾンビを倒せるわけがないんだよな。俺を取り戻せるわけもなく、ベルゼブがいる部屋まで運ばれていくんだけど、案外これもいいのかも。
ゾンビの動きは遅く、臭いにつられて、デビルドッグが寄り始めてきた。それもゾンビとベルゼブの一部がいるから攻撃を仕掛けてこない。この中に協力するデビルドッグがいれば、不意討ちで倒してくれる可能性だって、あるかもしれない。