ゴブリンじゃないから!
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「さて……ここからどう進むかだよな」
ゴブリンの巣穴を指定して、移動した場所は俺が流れ着いた水辺。ゴブリンが盗んだであろう置物は前と変わらない位置にある。MAPで確認して見ると、赤の点、野良ゴブリンが五体いるのと、プレイヤーやNPCを示す黄の点がゴブリン達の中心部に光ってる。そこにいるって事はゴブ蔵だよな。
俺は鎧に身を隠さず、砂まみれだけど、ゴブリン達にも姿を見せた状態でいる。それでも攻撃される事もなければ、ゴブ蔵に報告にいく素振りもみせない。けど、移動した時に手下のゴブリンに見つかったんだよな。そこで一巻の終わりだと思ったけど、俺に砂を掛けるというか……埋めただけ。
ゴブリンに鎧は見えないし、『ヒロインの左腕』も付けてないから、頭蓋骨だけの状態。臭いを嗅がれて、納得した顔で埋められた。同じ臭いだったから? ああ……そういえば、ゴブリンの鼻骨を『補骨』してた。不細工な鼻で耐がマイナスという嫌な骨だったけど、仲間の骨と勘違いしてるなら、案外役に立つもんだな。
「ゴブ蔵だけを警戒すればいい。変に隠れると怪しまれる」
「私の気持ちとしては……ポン骨のデカ鼻を叩き折りたいんだけど」
草井さんも俺と同じ砂まみれで倒れていて、流石にレイはそんなわけなく、宙に浮いてても、ゴブリンはスルーしている。ゴーストだから見えてないわけじゃない。レイを見て、念仏を唱えていたからな。ゴブリンの霊と勘違いしたんだろう。これもゴブリンの鼻骨による匂いが、装備扱いのレイや草井さんにも効果が付与されたからだと思う。レイも一応女子なんで、ゴブリンと同じ匂いは許せないだろうけど。
「今は止めてくれ……ある程度の距離まで行けば、レイのポルターガイストで、ゴブ蔵を狙えるかもしれないけど。勿論物影に隠れてだけど」
「私の手で倒せるなら嬉しいんだけど……それで倒せるの?」
そうなんだよな。周りにある置物にもよるし、ゴブ蔵のHPや防御力次第なんだよな。倒せなかった場合、反撃が予想される。手下のゴブリンの攻撃がレイに通じないなら、誘き寄せてもらって、俺と草井さんが倒すのが良いかな? 攻撃は草井さんの棍棒の義足があるし、防御は俺が鎧で……パラメーター上昇の表示はなかったけど、一度ぐらいは耐えて欲しい。
加えて、念のために俺が攻撃出来るように『ヒロインの左腕』を先に付けておくか。これを付けても、草井さんがバレてないんだから大丈夫だろ。
「って……ぉ」
思わず声を出しそうになったのを、草井さんが頭蓋骨を更に砂へ突っ込む事で口を塞いでくれた。いや……だって『ヒロインの左腕』の指先部分に緑の液体が付着しているんだけど。何か変な物を触った記憶はないんだけど、魔物の血……じゃないよな?




