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77.偽者扱いされました

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願い申し上げます。


いよいよクライマックスです。

「君、困ったことをしてくれたね。いったい、どういうつもりなんだい。」


 ここは理事長室だ。校長先生が担任の先生を問い詰めている。例の退学通知は担任の先生が勝手に学校印を使い、送ってきた。


 短絡的な犯行だ。退学通知を粛々と受け取り、長期間学校に来なくても家庭訪問を行った振りをして、最終的に退学の意思を確認したと嘘の報告をするつもりだったらしい。


「私は学校のことを思ってしたのです。実は彼はヤクザと繋がっている。そのことをご存知でしょうか?」


 理事長室には大きなテーブルが置いてあり、既に多くの理事たちが着席されている。その傍に置いてある応接セットに俺と担任の先生が呼ばれ、校長先生に説明をさせられているところだ。


 担任の先生は、苦々しげに俺の顔を見ると校長先生に向き直り、話を切り出した。


「山品家のことかね。あの家は事前に説明した通り、大昔のことだ。先祖の誰かが暴力団関係者だったからと子孫を糾弾するのかね。しかも本人じゃない、君は正気かね。」


「違う。結城くん。彼がヤクザと繋がっているんだ。」


 山ちゃんのことだろうか。陽子さんのことだろうか。まさかタツヤのことじゃないだろうな。山ちゃん自身は今でも暴力団関係者と友人関係を築いているだろうし、陽子さんも商売上、多くの暴力団関係者の客や知り合いも多いが繋がっているとは言いがたい。


 タツヤのことだったら、こちらにも考えがあるが違うだろう。


「証拠はあるのか。君はどうやって、それを知ったのかね。」


「証人は私自身で、彼に関わったことでヤクザに脅されました。」


「チーちゃんは心当たりはありそうですか?」


 一気に緊張感が無くなる。普段から、順子さんがそう呼んでいる所為か、お義父さんである校長先生にも定着してしまっている。どうにかならないのだろうか。


「アタシも山品家くらいしか思いつきません。そもそも先生とは担任以上の関係になった覚えはありません。」


 順子先生とは担任以上の関係になったけど、ハゲのオッサンと関わり合いになりたいとは俺でなくても思わないだろう。


「・・・っ・・・ゴホン・・ゴホゴホゴホ・・・。」


「校長先生大丈夫ですか?」


 順子さんとの関係に思い至ったのか校長先生が激しく咳き込む。俺はお義父さんの背中に回りこみさすってあげる。


「大丈夫。大丈夫だ。ありがとう。・・・君とチーちゃんとの関係とはなんだね。」


「それは・・・。」


「言いたくないのかね。チーちゃん。彼は昔、女装をしていたことがあったのだよ。おそらく、その辺りが関係しているんじゃないかな。」


 えっ・・・ハゲの担任のトモトモの父親が女装さん?


 ああ・・・彼が上条家の派遣会社へ勧誘したんだな。それならば話は通る。動機は俺がトモトモを泣かしたことだろうか。理屈は通るが、やはり彼との関係性が解らない。


「彼のような偽者の女装じゃないっ。私はニューハーフだ。」


 彼は古いタイプのトランスジェンダーのようだ。女装と呼ばれるのを嫌っている。


 心が女性で女性の物を身に付けることと、心が男性で女を装っていることは全く別であるという考えは今でもある。


 性同一性障害を持つ、自分が本物で、女を装う俺は偽者らしい。だが他人から見分けがつかない。


 新しいタイプのトランスジェンダーは違う。


 人は誰しも女の心と男の心を持つのだ。


 生物学的に男性のMTFさんを例に取ると喋り方だけ女言葉の人、料理や裁縫といった女性的な趣味を持つ人、女性の服を着る人、女性の身体になりたい人、男性の身体に嫌悪感を持つ人、いろんな人々が居ていいし、居るのが普通なのである。


 完全に男の心だけを持つ、女の心だけを持つなんてありえない。心や気持ちは、どうしても身体に引っ張られるところが多い。それは男性的欲望だったり、女性的な物腰の柔らかさだったりする。誰しも女性ホルモンや男性ホルモンの働きに制約を受ける。


 それは女性の身体に改造した男性であっても同じなのだ。


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