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38.オネエはガッカリしたようです

「この映画は1人の純朴な少女が上京したところから始まる。」


 次は演技テストだということで監督さんが映画のあらすじを語りだした。


「少女はある会社に就職するために上京したのだが朝鮮特需が終った影響で倒産していたのだった。」


「監督さん。朝鮮特需って何ですか?」


「良い質問だな。第二次世界大戦で日本が敗れた直後に朝鮮半島で戦争が始まって、隣国だった日本が武器弾薬類を供給したのだ。そのお陰で日本が戦後の痛手から復興できたのだよ。」


 俺が学校で習ったものと随分違うな。


 結果的に日本がアメリカ軍に武器弾薬類を供給したが、今や日本が誇る生産管理システムを戦時中の人海戦術的生産方式の日本の産業に教え込み、工業生産国となる礎だったとされている。


 それとは別に景気が良くなったのは、戦後GHQが暴力による搾取を許さず、引き締めるところは引き締め、駐留兵士たちから市中にお金が流れ込むようにシステムを作り上げたためだったと習ったんだがな。


 偶然、戦後日本が支払った占領軍経費と朝鮮特需でアメリカが支払った金額が同額だった所為で勝手な憶測に及んでいるが、占領軍経費が決められた時期と朝鮮戦争が始まった時期は全く別なのだ。


 それぞれ入ってきたところと出て行ったところは全く別でそれぞれが別々の意味で日本が恩恵を得ただけである。


 ジェネレーションギャップというやつだろうか。


「監督さんはそのとき何をされていたんですか?」


「生まれてもなかったよ。」


 当時を生き抜いた人間かと思ったのだが違うらしい。


「それでその少女はどうなったんですか?」


「ヒデタカ君が演じる予定の青年が銀座のホステスとしてスカウトするんだ。当時、GHQの引き上げが決まり、東京の歓楽街も実業家が通う場所となってきていたんだ。」


「解った! 『黒川』さん演じる銀座のバーのママさんが京都の祇園出身の芸伎あがりで、ホステスを集めていたんですね。」


「良く解ったな。大当たりだ。」


 おいおい。それじゃあ昔の映画のパクリじゃん。いや元々、あの映画にはモデルとなる人物が居たはずだよな。


「じゃあ、生粋の東京生まれ東京育ちのライバルとなるバーのママさんも居たりして。」


 こちらもモデルとなる人物が居たはずだ。映画の設定ほど険悪な仲じゃないみたいだけど。


「ライバルは居るには居るが元舞台女優で有名になった途端パトロンを見つけて若くして銀座のバーのママさんに成り上がったという設定なんだよ。」


 こっちは志保さんを当てこすっているのだろうか。志保さんも辞めれるなら辞めたいだろうな。


「この映画は純愛モノですよね。」


 ドロドロした愛憎劇に16歳の未成年を配役しないだろう。


「まあそうだ。少女はその純朴さで客を惹きつけ、2人の銀座のママさんの仲を取り持ち、ある企業の御曹司という恋人を見つけるんだが、相手には血筋の良い婚約者が居て、少女は身を引き、銀座に小さな店を出して貰うんだ。」


 それなりの愛憎もあるらしい。すっぱり割り切れるということは、それほど愛情があったわけじゃないんだろうな。純朴な少女と言えど銀座の女だったわけだ。これが順子さんだったら過激な行動に出そうだ。


「ヒデタカが演じるボーイと結ばれてハッピーエンドじゃないんですよね。」


 物語に深みも無ければアクションシーンも無い映画になりそうだ。


「ああ。少女はボーイを雇い、ホステスを探して貰うが若くして銀座のママに登りつめた少女に雇われたいというホステスが見つからず、酷い経営状態に陥った。そこを救ったのが縄張りとしていたヤクザで少女を気に入りホステスを都合して貰う代わりに出入りするようになったんだ。」


「なるほど。」


「ある時、店に鉄砲玉がやってきたがヤクザは裏口から逃げ出し、事なきを得たが少女が人質にとられた。ヤクザの情婦と思われたんだ。当然ヤクザが助けてくれる訳でもなく、ヤケになった鉄砲玉が少女に怪我を負わせてしまう。怒ったのがヒデタカ君演じるボーイで鉄砲玉に一声咆哮すると恐怖の余り、鉄砲玉のみならず辺り一帯の人間が固まってしまったんだ。誰も身動きが取れない状況下で唯一動けた少女がボーイにキスをすると周囲の人間が身動きが取れるようになり、鉄砲玉は取り押さえられた。」


 これって、山品家のこと?


 あの警備員室でのタツヤと俺とそっくりだ。


「そのボーイさんは何か特殊な能力を持っていたというわけですか?」


「そうだ。田舎では龍神の生まれ変わりと言われた一族の出身だったが、戦争で一族は全て死に絶え、唯一残ったのが、そのボーイだったというわけだ。ただ能力を暴走させると周囲の人間の神経が侵されてしまうほどで、唯一無二の相手にだけ能力が効かなく暴走を止められる。」


「そういう設定なんですね。」


「文献にはそういう一族が実際に居たと記されておる。そしてこの話も人伝で聞き集めたんだが実話という触れ込みだ。」


「それでどうなったんですか? 少女は、ボーイは。」


「内緒だ。オチを今バラしてどうする。」


すみませんストックが尽きました。

後はひたすら頑張るのみ。応援宜しくお願いします。

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