13.お嫁に行けなくなりました
「おまたせ。じゃあ行きましょうね。」
結局、クラスの女の子の半分くらいが同行することになった。ここの流水プールは興味があっても入場制限で二の足を踏んでいたらしい。
「チー君。何その格好。」
知り合いと出会ったら嫌なのでスッピンで入り、有料の個室休憩室で日焼け止めとウォータープルーフの化粧品を使いシッカリとメイクしてきたのだが、優子さんが不満そうな顔をする。
「何ってラッシュガードよ。可愛いでしょ水玉なの。アタシに似合うと思わない?」
女装ルームで男性とバレずに女性水着を着る方法も教えて貰ったが実践する気は無かったので、男性用水着の上にユニセクシャル風のラッシュガードのパーカーと短パンを穿いてきたのだ。
鏡で確認したが女性に見えなくもない格好になっている。オネエなんだから、これでいいはずなんだ。
「透けてる。」
優子さんが俺の胸の辺りをススっと触ってくる。
「・・・いやん。エッチ。」
流石の俺も一瞬リアクションに困った。両腕で胸を覆い隠しながら、内股でイヤイヤと身体を左右に振る。この反応しかないよな。
ユウタ、ヒデタカ、タツヤが一斉に目を逸らしやがった。現実を直視しろよな。君らには俺のオネエを見届ける義務があるはずだ。
「あらどうしたの?」
そのとき、順子さんがこちらに駆け寄ってきた。ビキニの水着から零れ落ちそうなくらい大きな胸がゆっさゆっさと揺れている。ああ生きてて良かった。
「聞いてくださいよ。チー君ったら胸に何も着けないんですよ。ほら形が浮き彫りになっているでしょ。」
優子さんが強引に俺の腕を退けてパーカー生地を胸の辺りに貼り付ける。
それは今、優子さんが触ったから反応しただけでしょうが・・・。リアクションに困ること言わないで欲しい。恥ずかし過ぎて下を向いていることしかできないじゃないか。
「それはダメよ。『透けてる貧乳美少女』というタイトルでエッチなサイトに画像が載っちゃうぞ。向こうの売店にシリコンブラも水着も売っていたわ。何でも買ってあげるから。」
ロリコン男性教師じゃあるまいし! 順子さん、なんでそんなことを知っているんですか!
順子さんに強引に売店の前に連れていかれた。クラスの女の子たちも興味深々な様子でついてくる。
「可愛い! これを買ってください。」
ここの料金システムは入場時に貰った腕輪を購入のときに示して退場のときに精算するのだ。だから購入した商品が会計の担当者にバレバレだ。万が一、その担当者が知り合いだったらと思うと生きた心地がしないのだ。
周囲では順子さんやクラスの女の子たちが、アレでも無いコレでも無いとシリコンブラや水着を持って俺の身体に合わせてくる。これをモテると言うのだろうか。絶対に違うよな。
一番無難に花柄のニップレスを順子さんに手渡した。
「えー!」
今度は順子さんが不満そうな顔をする。
「えー。じゃないですよ。」
順子さんに好きと言われたのは、きっと『このオモチャが好き』くらいだったんだ。これでも男なんですがね。解ってます?
「私はこれくらいの大きさが理想なの。後で触らせてなんて言わないから、これにしなさい。」
順子さんに小ぶりなシリコンブラを見せられる。なんか今日に限って強引だなあ。しかも触りたいらしい。シリコンなんて触って何が楽しいのだろう。どうせなら本物だよな。隣の大きな胸をチラ見する。
「なに。触りたいの?」
バレた。順子さんから好きだと言われてから、直ぐにオネエの仮面が崩れるな。気をつけないと。
「後で触らせてあげるから、ラッシュガードは羽織るだけにして、このビキニとシリコンブラを着けてあげる。」
「ちょっと待って。アタシに『買ってあげる』の間違いですよね。」
欲望に負けてウッカリ頷いてから気付いた。今『着けてあげる』って言った。しかもラッシュガードの短パンを脱がなくてはいけないらしい。
「約束は守って貰うわよ。有料の個室休憩室を使っているんだったわね。」
ちょっと強引にも程がある。良いとも悪いとも言う暇を与えて貰えない。
「ヤダ! せめてスカートタイプにして!」
とりあえず目に付いたものから拒絶する。幾らなんでもハイレグタイプは無理だ。
「いいわよ。じゃあコレね。」
順子さんは既に見繕ってあったのかミニスカートタイプのビキニを余裕の表情で会計を済ませる。嫌がられると解っていて本命を残しておいたようだ。ハメられたらしい。ユウタの従姉だもんな。ソックリだ。
「ここです。」
男性更衣室とも女性更衣室とも違う。別の通路を使って辿りつく。
「覚悟してね。優子ちゃんに胸を触らせた貴方が悪いんだからね。」
個室休憩室に入るなり、順子さんが豹変した。不可抗力だったとか突然だったという言い訳は聞こえないらしい。
☆
「もうお嫁に行けない!」
個室休憩室で順子さんにイロイロされた腹いせにユウタに抱きつく。だが周囲の反応は芳しくない。タツヤやヒデタカの顔は引き攣っているがクラスの女の子はキャーキャー言っているだけだ。やっぱり男が居ないと反応薄いよな。つまらないや。
「チヒロ可愛いよ。」
ユウタは俺の腕からスルリと抜け出すと少し離れたところでジッと見つめる。だからリアクションに困る反応は止めてくれ。全くユウタには敵わないな。タツヤに抱きつくべきたっだ。
「そのスカートの下はどうなっているんだ? 女の子にしか見えない。」
ヒデタカがしゃがみ込んで下から覗き込むように言う。少しエッチな視線なような気がするが本物の女の子じゃない俺には区別がつかない。
「オネエの神秘よ。内緒に決まっているじゃない。」




