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ROBO to ME  作者: 遠野遠里
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探索

宇宙戦隊NOIZ(UCHUSENTAI:NOIZ)の『ROBO to ME』を元にした二次創作。歌詞不使用。

瓦礫の世界にせせらぎの音が聞こえる。


 もう人間など───否、生物など居なくなってしまった筈だった。我々を造り出した非常に高度な知識と技術故に、この星は人間の手で終わった。最早、ここは彼等の生きられる環境ではなくなってしまったのだ。

 ひび割れて陥没と隆起を不規則に繰り返すコンクリートの上を進む。あちらこちらに建つビルの残骸も風化が進んでおり、時折どこかで厚い壁が崩れて落下する音が響く。折れ曲がったり歪んだりしながらも健気に立っている鉄筋や鉄骨が、人間と我々の現状をも暗に表している。我々の身体も彼らと同族なのだ。コンクリートが風化しても鉄筋は残り、人間が滅びても我々は生きている。

 いや、「生きている」というのは適切ではないかも知れない。厳密には「死ねない」のだ。我々は自らの存在を護らなければならず、人間の存在無しにそれに反することはできない。そしてメンテナンスさえすれば半永久的に生き続けることができる我々に「死」は許されていない。

 高性能なヒト型のアンドロイドたちはこの環境に耐えられず早々と壊れていった。超精密機械であるアンドロイドのメンテナンスを行えるのは同じアンドロイドだけであり、しかもその最終的な作業が可能なのは結局のところ人間だけだったのだ。そんな彼等の繊細さは、間違いなく最も人間に近い機械だったということなのかも知れない。


 そしてこの荒廃した世界に最後まで残ったのは、我々の様なやや旧型のロボットだった。人間と変わらない見た目を持つアンドロイドとは違い、形としては人間を模してあるものの完全に機械である。アンドロイドほどの繊細さが無いため多少の環境の悪さは問題にならない───というよりも、そもそも人間では不可能な環境での作業を行う為に開発されたのが我々である。メンテナンスもそこまでの精密さを必要としないので同じロボット同士で行える。部品の交換ですら、極端な話その辺りに転がっている同型のものであれば良いのだ。アンドロイドは人間の手作業に頼るオーダーメイド品ともいえる。対して我々は量産品であり、我々を製造するのもまた我々の仕事だった。


 最新の機械よりも旧型のものの方が頑丈なのと同様に、下等であると見なされているものの方が生命力が強いのはよくある話である。この死んだ世界でも尚、植物だけは生きていた。辛うじて残った僅かばかりの草や木は少しずつ領地を広げ、花を咲かせ、健気に酸素を吐き出している。やがて彼等はこの大地を覆うのだろう。旧連邦の発電所が森に飲み込まれ、極東の高濃度汚染地域に草が生い茂った様に。

 しかし、我々の主君たる人間は居なくなってしまった。この星が地獄絵図と化した時、多くの人間は殺し、殺され、自ら死に、或いは弱って倒れていった。その一方で一部の富裕層や国家要人は星外へと脱出していったが、宇宙整備が整っていたのかどうかは明らかになっていない。


やがて、そんな緑が比較的多く復活している地域へと到達した。この辺りはかつては自然公園だったらしい。雑木林の中を川が流れ、芝生の広場では人間が犬や子供を遊ばせている様子がデータベースに残っている。その頃の姿にはまだ遠いが、逞しく根を張る草木の間を細々と水が流れている。先程のせせらぎの音はここから聞こえてきたのだろう。だが、その小川に魚などの生体反応はない。この星に存在する生命は今や植物だけである。

その向こうには巨大な工場の屍がそびえている。かつては国内有数の規模を誇る機械工場として、我々の様なロボットやアンドロイドの部品を製造していたという。その工場も大半が苔むして草に覆われ、あちこちから枝や葉が伸びている。自然公園は企業側が環境への配慮をアピールし、住民との調和を図ることを目的に造ったとの話である。環境破壊の末に世界が終わった今、その工場が緑に覆われているのは何とも皮肉なことだ。


我々がこうして廃墟を巡回しているのは、人間を探す為である。人間は我々の創造主であり主君であり保護対象なのだ。我々は何よりも人間を最優先する様にプログラムに叩き込まれている。もしもこの世界に生き残っている人間が居るのならば、何をおいても救い出して守らねばならない。

故に我々は、標準装備されている生体探索モニターで今なお人間を探し続けている。しかし見付かるのは亡骸ばかりであり、近頃はそれすらも風化が進んで発見することが少なくなってきた。それでも我々は機械的に───まさしく機械なのだから当然であるが───死んだ世界の隅々まで、人間を探して日々動き回っている。

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