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自称!平凡魔族の英雄ライフ~B級魔族なのにチートダンジョンを作ってしまった結果~  作者: あまうい白一
第二章

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第24話 都会の街ではイベントがいっぱい

 ブラドとソフィアの親子と共に俺は街の中を数分ほど歩いていた。

 

 突然の懐かしさに色々と忘れて話しまくってしまったが、数分もゆっくり歩いていれば落ち着くもので。

 さらにはリザから今後の作戦について念話を受けたことで、少し冷静になって考えをまとめることが出来た。

 そして、冷静になると、事態は複雑化しているように思えた。

 

 ……うん。俺は、昔からの知人の娘を奴隷にしたことになるんだよなあ……。


 それは、なんというか、より背徳感が出た気がする。

 いや、見ず知らずの魔族の娘を奴隷化してしまったとしても、申し訳なさはあるけれども、これはそこに気まずい要素が上乗せされた気分だ。

 

 ……とはいえ、俺がブラドのおっさんにやる事は決まっているんだよな。

 

 ソフィアとの事情は、隠すか、話すか、どちらかだ。

 これは最初から決めていたことで、対象が知り合いになっても変わらない。

 ただ、選択肢が増えたのは確かだ。


 ……ブラドのおっさんならば、話せば納得してくれる可能性はある。

 

 ただ、あくまで可能性だ。

 自分の知っているブラドの性格は、割と直情的だが冷めやすいといったものだ。

 どうやら昔とその部分も変わっていないように見えるし、そうだとしたら話すタイミングが重要になってくる。

 これは俺だけの問題ではないし、ソフィアにも迷惑を掛けたくないので、慎重に動く必要がある。 


 ……ま、どちらにしても、ソフィアともうちょっと相談するのは確定だな。

 

 などと考えていたら、 

 

「いやあ、クロノ少年! ワシはこの街を歩くのは久しぶりだが、都会はどうだね!? 楽しいかね?」


 ブラドが問いかけてきた。


「う、ん? まあ、楽しいな。慣れないことや、分からないことも多いけれど……凄く満喫していると思うな」


 そう言うと、ブラドは朗らかに笑った。

 

「ふはは、そうかそうか! うむ、若い魔族がそう思ってくれているのであれば有り難い限りだ。やはり、賑やかな街で様々な人に囲まれて学ぶというのは大事か! うむ、やはりこの仕組みは受け継いでいかんとなあ。ああ、この整備された道路も素晴らしい」


 そして、うんうんと頷き、地面を見ながら前へと進んでいく。

 この街を歩くのは久しぶりと言っていたが、魔王城への道のりは分かっているのだろう。その歩みに迷いはない。

 

 むしろ俺よりもこの街について詳しいんじゃないかこのおっさん、などと思っていると、

 

「ふふ、クロノさんは本当にお父様と仲が良いんですね」


 ソフィアがひっそりと話しかけてきた。

 とても小さな声なのは、おそらく前にいるブラドに聞かせない為だろう、と思いながら俺も小さな声で返す。


「ソフィアからはそう見えるか?」

「はい。家族の私から見ても、そう見えます」

「お墨付きをどうも。まあ……昔馴染み、って事になるのかな。十一年前と五年前に数か月駄弁ったり、遊んだ時に、馬が合ったんだ」

「そうだったんですか……。お父様は私が子供のころから、数か月単位で国を開けて旅をする事がありましたが、そのタイミングでクロノさんと会ったんでしょうね」

「国王なのに旅をしているのかよ、あのおっさん。どれだけ自由人なんだ」


 ただまあ、魔族というのは基本的に奔放なものだし。それが王様になっても変わらなかったというだけかもしれないけれど。

 

「……まあ、今回の件においては、おっさんと知り合いだったのは運が良かったかもな。作戦を変更するかどうか、ちょっと考えよう」

「はい。そうですね。私としても、クロノさんとお父様がお知り合いで助かったと思ってますし。焦らず動いていきましょう」


 と、俺たちがこっそりと話しつつ、街の大通りを歩いていたのだが、ふと気になることがあった。


「……この辺、なんか人多くね? しかも向こうの方とか、ざわざわしているし」


 見れば、大通りの奥の方に人だかりができている。

 そしてやけに巨大な人のような姿をしたものが動き回っているのが見えた。


「そう、ですね。何かのイベントでもやっているんでしょうか?」


 そう言って、ソフィアが大通りの奥、混雑している地点を見ようとした。

 その時だ。


「――危ない!」

 

 そんな叫び声が、混雑の向こうから聞こえてきた。更には、

 

「うおおお! 落下物注意――!」


 周辺にいた人々が、そんな声を出しながら走り出した。

 何事だと思い、急ぎ前を見ると、

 

「あん? 岩か?」

 

 一軒家ほどもある巨大な岩石が、こちら目がけて、ものすごい速度ですっ飛んできた。ほぼ平行軌道だ。


「田舎でも落石はあったけど、都会でもあるんだな。しかも横方向とか珍しい」

「そ、そんな事を言ってる場合じゃないですよ! に、逃げないと――」


 と、ソフィアが慌てて言った瞬間だ。


「――ソフィア? 何から逃げるというのだ?」


 目の前を下を向きながら歩いていたブラドが振り向いた。


「え、ちょ、お父様!? う、後ろから岩が来ていますって!」

「岩??」


 そしてまた振り向き直して前を見た瞬間、ブラドの顔面に岩が激突した。

 

 ゴシャっという派手な音が響く。そして、

 

「うん?」


 ブラドの顔面にぶつかった岩の方が砕けた。


 しかし、降り注ぐ勢いは全く変わっていない。

 凄まじい勢いで大小の岩が、横殴りの雨のように降り注いでくる。


「え? こ、これ、よけきれないからガードを……!」


 ソフィアは対応しようと吸血鬼の翼を出し始めるが、遅い。

 このままではガード前に命中する。だから、


「ソフィア、ちょっとすまん」

「え? わ、ひゃあ……!?」


 俺は彼女を抱きかかえて、思い切り真上に跳躍する。

 それだけで岩の雨を回避する。

 

 周辺の建物に手も足も届かないので、空中にいられるのはわずかだが、岩の速度は速いので問題ない。

 

「ふう、回避成功っと」


 そうして再び地面に降り立つと、頭に岩の埃をかぶったブラドがやってきた。


「おお、クロノ少年! ソフィアを助けてくれてありがとう! 無事なようで何よりだ」

「ああ、どうにかな。おっさんも……大丈夫みたいだな」


 岩が激突したというのに鼻血の一つも出していない。


「ははは、なんのこのくらい。十五歳くらいだった君のパンチの方がもっと重かったさ! ……ああ、先ほどのジャンプができるような筋力で放たれる一撃はハンパなかったからな!」

「はあ、そうかい」


 と、俺とブラドが一息ついてやりとりをしていると、俺の腕の中にいるソフィアが呆然としているのに気づいた。

 

「すまんソフィア。抱き上げたままだと困るよな。今降ろすわ」

「あ、いえ、それは大丈夫なんですが……ま、まずありがとうございます。そして、その、やっぱり、お父様とクロノさんは似た者同士だって、改めて実感しました。お父様の耐久力もそうですが、クロノさんの動きがおかしかった気がしますし。……周りにいる大通りの人、私たちを見てちょっとシーンとしちゃってますし」

「その褒められ方は喜んでいいのか分からんぞ。まあ、何にせよ、……ソフィアも怪我はないんだよな?」

「はい、お陰様で。ありがとうございます。……しかしなんでまた、街中で落石なんて起きたんでしょうか」


 ソフィアは俺の腕から降りると、首を傾げて、前方を見た。岩が飛んできたことが不思議らしいが、


「普通は起きないのか?」

「起きませんよ! あんなのが何度も起きてたら街が滅茶苦茶になっちゃいます。……多分、クロノさんの言い方を鑑みるに、クロノさんの故郷では沢山あったんでしょうけれど……」

「おお、よくわかったな。竜の巣作り時期とかによくあるんだ。アイツら巣の材料として岩を運ぶくせにポロポロ落とすからさ」

「うう……その環境で街が滅びないことが不思議です……。もう、そこは流すことにしますけど」

 ソフィアはそう言って、諦めたように肩を落とした。

 

 ……うーん、最近俺の地元について、上手いこと説明が出来なくて申し訳ないなあ。


 その辺りは改善していかないとな、と思うも、今考えるべきはそこじゃない。

 都会では落石が起きないというのならばなぜ起きたのか。

 

 それなりに危険な目にあったのだから、原因を知りたいところだ、と思っていたら、


「あ、あんたら凄いな。で、でもきゅ、救護隊とか、呼ばなくて平気か?」


 大通りにいた獣人の男性が心配そうな表情で話しかけてきた。

 

「ああ、気遣いありがとう。問題は無いよ。ただ……これ、一体何が起きているんだ?」


 ちょうどいいと思って聞き返すと、獣人の男性は苦々しい表情で頷いた。


「巨人族と大型獣人の喧嘩だよ。二人で酒に酔った挙句、取っ組み合いしているんだ」

「あー、あのデカイ人みたいな姿は巨人族と獣人なのか」

「そうそう。力と体格がすげえもんだから、魔法店の看板やら、オブジェの大岩を投げ合ったり、殴り合っているものでさ。俺たちには手が付けられないんだ」


 なるほど。多種多様な種族が集まっているのがこの魔王城の城下町だ。

 そのくらいの悶着は起きるのは当然なのかもしれない。


「対応はどうしたんだ?」

「魔王城に連絡はしたから、そろそろ警護兵が到着して場もおさまると思うんだがなあ……。大型獣人は自分の体を倍化させる魔法まで使ってるから、本当に危なくてよ……」


 青年がそう言った瞬間だった。

 

「一人、そっち吹っ飛んでったぞ――!」


 再び、そんな声が聞こえたと思ったら、

 

 「――」


 次の瞬間。

 俺たちのほぼ直上に、巨人の体が吹き飛んできていたのだった。

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