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自称!平凡魔族の英雄ライフ~B級魔族なのにチートダンジョンを作ってしまった結果~  作者: あまうい白一
第二章

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第11話 外から見た超特進クラス

 俺は手元の地図を見ながら、十代目魔王のダンジョンに潜っていた。

 十代目魔王のダンジョンの一階層は、一フロア丸々ぶち抜いた、広大な大地になっていた。


 低い草木も茂っており、牧場をイメージさせるような環境だ。


 そんな空間が三階層まである。


 それが十代目魔王のダンジョンの構造らしい。だからこそ


 ……魔王の遺産も探しづらいんだよな。


 隠された小部屋などはなさそうだし、一階層のどこにお宝が埋もれているのかが、分かりづらかったりする。


 ……『十代目魔王は几帳面でね。魔王の遺産は工具箱とか宝箱に入れたって、日記資料にはあるから、それを目印にしてね』ってリザさんは言っていたけれどもな。


 これだけ土地が広いと、宝箱一つ、工具箱一つ見つけるのも一苦労だ。


 いっそのこと『魔王の遺産』探索装置、みたいなものがあれば有り難いのだが、そんな便利なものは見つかってないらしい。

 一応、十代目魔王のダンジョンにある遺産の中には、その探索装置らしき物体もあるらしいので、可能であればゲットしたい。

  

 だから今回、特進クラスのメンバーがダンジョンに潜ってくれたのはとても助かる。

 そんな事を思いながら、俺が一階層の大地を歩いていた。

 周辺には多少のモンスターがうろついてはいるものの、

 

「クロノさん、空にいる蝙蝠みたいなモンスターは片づけちゃいますね」

「おう、頼むわ。ソフィア」


 空からこちらを狙う敵はソフィアが撃墜して、


「……こっちは、もう倒した」

「ユキノさんは早いっすね。でもありがとうございます。お陰で歩きやすいです」


 地上のモンスターはユキノがささっと討伐してくれるから、とても楽に探索が出来ていた。

 モンスターがいなければ、草木の影を探すのも警戒しなくていいので楽になる。だから礼を言ったら、


「ううん、気にしないで。恩返しの一環だから。……まあ、でもお礼を言うなら、撫でてくれた方が嬉しい」

 

 言いながらユキノは狼耳の付いた頭をぐっと寄せて来た。


「撫でるのが礼ですか?」

「そう。銀狼種族は撫でられるのが快感だから、褒めるなら撫でるのが一緒だと、いい。礼儀みたいなもの」

「ああ、そうなんですか。では……」


 撫でを求められたので撫でることにした。


「は……う……」


 するとユキノは気持ちよさそうに目を細めた。

 本当にこれでいいらしい。

 種族ごとに礼儀も沢山あるんだなあ、と思っていると、


「あ、私の方も終わりましたよ、クロノさんー」


 ソフィアもすぐさま空から戻ってきた。

 見れば空から俺達を敵視していたモンスターはみな地面に落ちている。


「ソフィアも仕事が早いなあ。ありがとうな」

「はい、どういたしまして!」

 

 そう言った後で、ソフィアは羨ましそうな目でユキノを撫でる俺の手を見た。


「……私には撫で撫で、ナシなんです?」

「うん? 吸血鬼にも撫でるのが礼儀とかあるのか?」

「いやあ、無いですけれど。両親から褒められるときはいつも撫でられていたので」

「俺は親じゃないけどな。まあ、撫でていいんなら、撫でるけど――」

「――じゃあ、お願いします!」


 食い気味に来られたよ。まあ、でも求められているのであれば、撫でようと俺は彼女の髪の毛に触れる。


「ふふ、なんだかユキノさんを見ていたら羨ましくなってしまったのですが、こういうのは良いですねえ。嬉しくなってきます」

「お、おう、そうか」


 俺は同級生と先輩をなでなですることになって、変な気分になってくるけどな。

 ともあれ、そんな感じで、ソフィアやユキノと共にダンジョンを探索していたのだが、


「なあ。クロノは毎回こんなことをやっているのか?」


 俺達の後ろに付いてきていたコーディが、唖然とした表情で言ってきた。

 その後ろにいる同級生を含めて、若干、気不味そうな顔している。


「え? あ、誤解するなよ。毎回ナデナデしてるわけじゃないぞ?」

「ああ、そっちの事じゃない。オレは別にクロノが先輩と姫さんと何だか良い感じになっているのは良いと思うしな」


 それはそれで微妙に誤解があるようだが、俺が突っ込みをするよりも早くコーディは言葉をつづけた。


「オレ聞きたいのはそうじゃなくて、――先輩と姫さんの二人はこんな戦闘を、ダンジョンに潜って毎回やっているのかってことだ」

「あー……戦闘か。それなら毎回って程じゃないけど、割と普通にやっているな。何かおかしいか?」

「いや、おかしいって言うか、……こんなに強かったのか、吸血鬼の姫さんも。深窓の銀狼も。実戦経験者はやべえなって思ってさ」


 コーディは額のあたりに浮かんだ汗をぬぐいながら言ってくる。

 ただ、その言葉を聞いた二人は、お互いに顔を見合わせてから首を横に振った。


「うーん、申し訳ないですが、私たちはまだまだなんですよ」

「うん、これくらいは平気。これ以上の事が起きるのが魔王のダンジョンだからね。この前は、襲ってきた大きなドラゴンを相手にどうしようも出来ず、クロノに助けられて情けない所を見せたこともある位だし」


 二人揃ってそんな事を言うものだから、コーディを含めた同級生がちょっと引いた。


「あのさ、クロノ。あれだけ派手にモンスターをぶっ飛ばしていた二人をドラゴンから助けたって、……倒したってことか?」

「あー……まあ、そうかな。でも、あんまりドラゴンとしては大きくはなかったと思うぞ? 生体が特殊で堅かったけどさ」

「そ、そうか。大きくはなかったけど、ドラゴンを倒したのは事実なのか……」


 説明したら、またエアポケットが出来はじめたよ。

 そのドン引き癖はそろそろやめてほしいんだけれどな。


「ま、まあ、うん。クロノがやばいってのは分かっていた事だし、いずれ慣れるさ」

「一応言っておくけど、俺は猛獣とかじゃないんだからな。……まあ、俺の事は置いておいていいよ。とりあえず、二人がこれだけモンスターを蹴散らしてくれたんだから、安心して探し物をしようぜ」


 ここに来た目的は、モンスターの討伐やレベルアップではなく、宝探しなんだから。

 現にリュミエールなどは、既に俺達から離れて、モンスターのいなくなった地点から探索を行っているし。


「お、おう。そうだな。……俺達もクロノの肝の据わり方を見習って、魔王のダンジョンを歩きまわるぜ」

「そーしてくれ。手数が増えるのは大歓迎なんだ」


 言いながら、俺も俺で、一階の探索に入ることにした。


 

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