表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自称!平凡魔族の英雄ライフ~B級魔族なのにチートダンジョンを作ってしまった結果~  作者: あまうい白一
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/130

第6話 エアポケットの温かみ

 昼間から一時間だけしか潜っていなかったので、十代目のダンジョンから戻ってきても、外はまだまだ明るかった。


「これなら、城下街か、城の商店に行けるな」


 よくよく考えてみれば、今日まで俺は自分のダンジョンと超特進クラスと歴代魔王のダンジョンを行ったり来たりしているだけだった。


 これはこれで楽ではあるのだけどさ、


 ……あまりにルーチンワークすぎるだろう。

 

 故郷にいた時ですら、もっと色々な所に足を運んでいた。

 だから、こうして空いた時間を利用してもう少し移動個所を増やそう。


 そう思って魔王城の一階、エントランスを歩いていると、


「よっ、クロノ。今日はもう講義終わりか?」


 同級生数名を引き連れた竜人の男が話しかけて来た。


 ゴツめ顔立ちをした男で、竜のような尻尾が特徴的だ。

 確か名前は、コーディと言ったような気がする。


「幸いなことに早めに終わったんだよ、コーディ」


 名前を言うと、嬉しそうな顔をした。

 

 どうやら俺の記憶は合っていたらしい。


「おお、名前を覚えていてくれたのか。光栄だよ」

「君だって俺の名前を覚えているだろうよ」

「はは、歴代一位のダンジョンを作った男の名前を忘れるわけがないだろ。めっちゃ目立ってたんだから」

「目立ちたくて目立ったわけじゃないけどな。――で、コーディも講義は終わりか?」


 聞くと、コーディは腕をパンパンと叩きながら頷いてきた。


「おうよ。特進クラスでこってり絞られて筋肉痛になったけど、普通に終わったぞ。これから城の大浴場にいって休む予定だ」

「そうか。大変そうだな」

「いや、俺たちはこれくらい平気だ。むしろ、クロノの方が大変じゃねえの? 魔王様の特別講義を受けているんだって言うし」


 なるほど。超特進クラスの話は、外部的に特別講義として捉えられているのか。


 いきなり特進クラスの講義に出なくなってどういう扱いになっているのか知らなかったけれど、悪いように捉えられてなくて安心だ。


「しかし、魔王の特別講義が大変とか、そういう話は結構出回ってるんだな」

「まあ、この城には同年代が多い分、噂の回りも早いしな。めっちゃ忙しくて、自由時間が殆ど取れない、とかな」


 その辺りはどうなんだろうな。俺は奴隷問題解決のために色々と動いているが、そういう問題がなければ、普通に過ごせているんじゃないかとも思える。ただ、 


「忙しいのは事実だけど、問題が無ければ早めに終われるって感じだな」

「そうか。ってことは、今日はもうフリーなのか?」

「ああ。それでちょうどいいから、城の中を見回ろうと思ったんだよ」


 そう言うと、コーディは一瞬驚いたような顔になった後、すぐさま後ろにいる同級生と目配せをしあった。そして


「よっしゃ、クロノ。俺たちも案内に付き合うぜ!」


 後ろにいた同級生たちと共にそんな事を言い出した。


「え、案内に付き合うって、コーディたちもこれから大浴場に行くんじゃないのか?」

「いや、俺たちはいつでも、どこでも行けるが、クロノは特進クラスの中でも魔王様に付き合って忙しいんだろ? 食堂で吸血鬼の姫さんが『クロノさんはいつも大変そうです』って心配してたくらいだったしな」

「ソフィアがそんな事を言っていたのか」

「ああ、特進クラスの女子がいつも聞いていて、クロノが大変だって話はクラス中に広まっているんだよ」


 そうだったのか。物凄い広まり方をしてしまっているな。


 忙しいのは確かだが、ダンジョン探索はそこまで大変じゃないので、余計な心配を抱かせてしまったか。とはいえ、


 ……心配してもらえる、ってのは有難い話だな。


 そう思っていると、コーディの言葉は続き、


「それで、俺たちもさ、同級生が大変そうなら、少しでも手伝えることがないかって思っていたんだよ」

「手伝えること?」

「おう。でも、クロノより力が弱いから、何が出来るかわからなくて、今までは遠目から見ることしかできなかったんだけどさ。だから、手伝いになるか分からないが、城の中の案内くらいはさせてもらおうと――って、クロノ?」


 コーディの言葉に、俺は思わず目を伏せた。そして、


「……泣きそうだ」

「お、おい、クロノ!? 大丈夫か?!」


 突然の優しさに思わず目の端から涙がこぼれたよ。


 エアポケットを作って、微妙に避けられていると思っていたのだが、俺の勘違いが混じっていたとは。


 本当に優しくて気のいい同級生を持ったみたいだ。

 そうして嬉し涙をぬぐいながら俺はコーディ達に向き直る。


「いやあ、うん。ありがとう、コーディ。皆。そのお言葉に甘えるよ。俺を案内してほしい」


 そう言うと、若干戸惑っていた同級生は、しかし嬉しそうな顔になり、


「お、おう。分かったぜ。とりあえず魔王城の事なら任せておけ。長らく過ごして俺たちも詳しくなってるからな!」


 そうしてエアポケットが無くなり始めた同級生と共に、俺は城の中を巡ることにした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
●同時連載作品のご紹介
こちらの連載も応援して頂けると助かります!
最強の預言者な男が、世界中にいる英雄の弟子に慕われながら冒険者をやる話です。
 100人の英雄を育てた最強預言者は、冒険者になっても世界中の弟子から慕われてます
https://ncode.syosetu.com/n2477fb/

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ