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自称!平凡魔族の英雄ライフ~B級魔族なのにチートダンジョンを作ってしまった結果~  作者: あまうい白一
第一章

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第29話 食欲旺盛な存在

 一階から落下した結果、リザは二階の通路を歩いていた。

 後ろには教授達がいるが、


「皆ー、大丈夫ー?」


 教授陣の半分は足を引きずっている状態だった。


 ……肉体的な精鋭だったけど、体重は重めだし、空を飛べる人は少なかったからなあ。


 突然の落下に対し、各自、魔法による防護や受け身を選択したらしいが、どうにも高い所から落ち過ぎた。


 ……いくら堅いうろこがあって打撃に強くても、落下の衝撃に強いというわけではないしね。


 それに、破片の雨も大きすぎた。

 リザも彼らをサポートするために大気のクッションを作り出す魔法を使ったが、それでも幾人かは、そこそこのダメージを負ってしまった。


 ……あくまでそこそこで、命に全く別状は無いから魔族は頑丈だなあって思うんだけどさ。


 などと、心中で呟きながらもリザは足を止める。


「ここら辺で休んだ方が良さそうかな」


 そう言うと、後ろを歩いていたダンテが横に来て首を横に振った。彼も彼で擦り傷などを作っているが比較的軽傷だ。


「い、いえ、気になさらないでください。この位は平気です。そもそも魔王様による魔法、《ウインド・クッション》でしっかり衝撃を殺してもらったのに、怪我人が出たのはこちらの落ち度です」

「そんな事は気にしなくていいのにー。でもまあ、それならこのまま行くけど、……サラマードも休まなくて平気?」


 リザは振り返って自分の前方を歩くサラマードを見やる。

 彼女の体には傷一つ付いていない。


「ワタシは全然平気。着地姿勢も間に合ったし、銀狼は落下に強い骨格をしている」


 今回の落下で怪我をしていないのは、リザとサラマードだけだった。

 だからサラマードが先導し、自分が後方の怪我人をサポートしつつ移動するという陣形を作っている。

 

 現役で魔王のダンジョンに潜っていた成果というべきか。

 二人だけでも、無傷の者がいてくれてよかった、と思う。


「それで、リザ。この後は怪我した教授を一階まで運んでから、クロノを探すってことでいいんだよね?」

「うん、そうだね。まあ、クロノはこの辺りにはいなかったけど、空を飛べるソフィアちゃんもいたし。あの運動能力だったらたとえ最下層まで落ちてもどうにかなるから心配はしてないんだけどさ」


 だからと言って探さない理由にはならない。


 ただ、怪我人を連れ歩くのも問題であるし、ささっと教授達を城に戻してから潜る。

 一階層は大分崩落していたが、出入り口まで歩くルートはいくつかあるし、そちらを通ればいいだろう。


 そう予定を決めて今まで動いていた。


「ま、三階層からなら数分で戻れるからね。ささっと行っちゃおうか」


 リザはそのまま、予定通りに動こうとした。その瞬間だった。


「――うわああああああ!」


 自分たちの後ろを歩いていた筈の教授達が、吹き飛んできた。


「っ!?」

 

 慌ててリザとユキノは、吹き飛んできた者がいた方向を向く。すると、そこには、


「――!」


 樹木のような外皮を持つ巨大なトカゲが這いずりながら、床や壁をむさぼり食っていた。

 その頭には血が付着しており、おそらく教授達はこのトカゲに頭突きをされたのだろう。


「こいつは一体……」


 見たことがないモンスターだとリザが驚愕していると、隣のユキノが冷や汗を流しながら呟いた。


「これ、グラトリザード」

「え、でも大きさが全然報告と違うよ?」


 せいぜい一メートルくらいという話だったろうに、目の前にいるのは明らかに十メートルオーバーだ。

 だが、同時にリザは、資料に書いてあった情報を思い出す。


「魔王の遺産や制作物を食いまくって成長する生態型……ってことは、このダンジョンを食いまくって、成長したんだね……」

「かもね。まさかここまでのデカブツになるなんて、ワタシも思わなかったけど」


 ともあれ、いつまでも大きさに驚愕しているわけにはいかない。標的が現れて攻撃を受けたのだ。


 グラトリザードの目は明らかにこちらを向いており、樹木で出来ているとは思えないほど鋭い牙をちらつかせている。


「戦うよ! ダンテ、準備を!」

「はっ――大狼よ、来たれ! 《サモン・ダンジョンウルフ》!!」


 反撃のために、ダンテは地面から狼を生み出した。彼だけではなく、他の教授も一斉に狼を作り出す。


 そして大型の狼が揃い、グラトリザードに一斉に襲い掛かった。だが、

  

「ガ……!」


 グラドリザードは体を思いっきり壁に激突させて、狼たちを振るい落した。そして、地面に倒れた狼を、その口で丸ごと飲み込んでしまった。


「これは……トカゲっていうか、もはや竜だね」


 その光景を見て、リザは思わずつぶやいた。

 これはまずい。


 教授の召喚獣ですら一飲みにしてしまう遺産と戦うには戦力が足りなさすぎる。


 この場にいる教授達がフル装備の状態で挑んでも勝てるか分からないモノなのに、今や半数以上が怪我人である。

 

「それに、私は強い戦闘能力があるタイプの魔王じゃないからなあ。一応力は付けているけれど、ここまで状況を崩されてしまうと、ちょっと辛いなあ……」


 だが、ぼやいてばかりもいられない。やるべきことは一つだ。


「とりあえず、皆ー、脱出優先で城に繋がる扉まで撤退するよー! 動けない人は動ける人が適当に引っ張って走って!」

「りょ、了解しました!」


 動ける教授達が、倒れた者たちを抱えて一斉に走り出す。


「魔王様も早く!」


 ダンテから言われるも、リザは走り出しはしなかった。

 彼女はその視線をグラトリザードの方に向けて止まっていた。


「魔王様!?」

「いやあ、私はサポート役として、しっかり殿を務めないといけないでしょ。それに君たちの上司だし、ここまでの状況を作っちゃった責任は取らなきゃね」

「ですが……!」

「はいはい、私に声をかける暇があったら走って走って。私もあとを追って逃げられるんだからさ。ダンテたちが早く逃げれば逃げるほど、私も足早で離脱できるんだから!」

「……っ、了解です。ありがとうございます、魔王様!」


 そう言って、走っていくダンテの後ろ姿を横目で確認した後、


「さあて、程々に頑張ってから、逃げないとなあ。――剣よ来たれ《サモン・ブレイド》」

 

 リザは床から剣を生み出して素振りを始める。


 そんな彼女の横に、ユキノが立った。


「あれ、サラマードは向こうに行かなかったの?」

「ワタシも手伝う。そっちの方が危険性も減るし……こいつがここまで来ているのは、ワタシの体力を吸い取って元気になったからかもしれない。私がやるのは当然」


 その眼は肉食獣のように鋭いものになっていた。


「サラマード、勝てそう?」

「それは無理。リザは?」

「うん、私も竜に単体で勝つなんて無理だよ。そもそも単体で勝てる人なんて早々いないし。……でも時間稼ぎと生き延びることは出来るかな」

「そう。ならワタシもそれをしながら、リザと一緒に上に昇る」

「はは、そうだね。――じゃあ、ガンバろっか」


 そして魔王と銀狼は竜に立ち向かう。



 俺たちが三階層に上がると同時、


 ――ドドン!


 と腹に響くような重たい音が響いた。


「あれ、クロノさん。なんだかすごい音が聞こえましたね。地響きというか、大きなものが激突する音みたいですけど」

「ああ……なんだか田舎を思い出す音で変な気分になるな」

「えっ? 田舎でこんな音が鳴るんですか?」

「おう、野生生物が家に激突してきた時、こんな感じの音が鳴るんだよ」


 木製の家だと一発でぶっ壊れるから、皆、色々な方法で強化したり工夫して建てていた記憶がある。


「あ、あはは……元気で大柄な動物が沢山いらっしゃるんですね……」

「元気というかはた迷惑なだけだと思うけどな。……ともあれ、こんな音が鳴ってる場所に長居したくないし、少し走りを早めるか」

「そ、そうですね。じゃあ、急ぎ目で行きましょうか」


 そうして俺たちの足取りは速くなっていく。


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