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自称!平凡魔族の英雄ライフ~B級魔族なのにチートダンジョンを作ってしまった結果~  作者: あまうい白一
第一章

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第27話 原因発覚と対処開始

 教授達が来るまでの間、俺はユキノと話すついでに二代目魔王のダンジョンの情報を得ていた。


「ユキノさんは、最下層まで潜った経験があるんですね」

「うん。十二階層はチラッと見ただけで帰ってきただけだし、殆ど探索はしてなかったけど。とりあえず潜っていた。だから、クロノ達が使っていた地図に描き足すこともしておいた」


 そう言って、彼女は地図を手渡してきた。

 そこには確かに、十二階層までの道のりが載っている。


「ああ、ありがとうございます」

「気にしない。助けてもらったお礼だし。ワタシもお宝を見つけるために、同志は多い方がいい」


 今さらだが、彼女も超特進クラスで、宝を見つけるために動いているんだったな。


「ユキノさんは何か目的の遺産とかあるんですか?」

「目的……か」


 ユキノはそのまま数秒黙った後、首を横に振った。


「今は特にない。ただ、潜って手当たり次第に探しながら、自分の実力を上げようとしているだけ」


 なるほど。まあ、俺たちのように特定の宝を求めて潜る方が少ないんだろうな。

 俺たちだって、ちょっとした事故がなければ目的の宝なんてなかったわけだし。


「ただ、二代目魔王のお宝はそこまで多くないと資料にある。だから見つけるのは大変だし、一緒に探す人もいなかった」

「へえ、そうなんですか」

「うん、他のダンジョンは、百と二百とか埋まってるところがある。でも、二代目魔王のダンジョンは十個もない」


 そう言われると本当に少ないな、と俺が驚いていると、


「遺産が多くないのは、二代目魔王が効果が大きい道具以外残さなかった主義のせいなんだけどね」


 円卓の方からリザが声をかけて来た。

 さきほどまで資料を散らかしながら、ユキノに支配をかけて来た遺産を調べていたはずだが、既に円卓の上は綺麗に片付いている。


「――そして、多くないから、絞り込みもしやすかったよ」

「そう言うってことは、ユキノさんを支配しているモノの調べがついたんですか?」

「どうにかね。サラマードから話を聞いたり、資料を漁ったりで調べたんだけどね。支配をかけてきそうな遺産は一つだけっぽいんだよね」


 そう言って、リザは一枚の資料を俺たちに見せて来た。

 そこに書かれているのは、


「『暴食の(グラトリザード)』ですか?」

「そう。今回の原因は、二代目魔王の使い魔として作られた生態型の遺産みたいだよ」

「生態型、って魔王の遺産には本当に色々なタイプがあるんですねえ」

「そうだねえ。だけど、こいつは最下層でずっと眠っているのが確認されていたはずなんだよ。ね、サラマード」


 リザの言葉にユキノは首を縦に振った。


「……ワタシが、半年くらい前に十二階層で確認したから、それは間違いない。そこそこ大きいトカゲみたいなのが、鼾をかいてちゃんと眠っていた」

 ユキノは両手を広げて、大きさを示しながら言ってくる。彼女の手の開き具合から見るに、おおよそ一メートルくらいだろうか。


「そうなんだよね。資料にも、昔、二代目魔王自身が眠らせたって書いてあるからねー」

「使い魔を眠らせるって、また何でそんな事をしたんですかね」


 使い魔というのは普通、自分の周りに控えさせておく筈だが、二代目魔王は違ったんだろうか。


「ええとね、この『グラトリザード』は魔王の遺産を食べて消化し、パワーアップする能力があるんだよね」

「え? ……魔王の遺産を食うって、何故にそんな変なものを作ったんですか……」

「遺産の廃棄場所だったらしいよ。二代目魔王が道具を開発したものの、出来に納得いかなかったら、食べさせるとかしてたみたいで。そのせいで、他の生物に支配契約を吹っかけて力を吸い取る能力を得ちゃったとかも書いてあるし」


 割ととんでもない代物が眠っていたもんだな。


「でも、眠っていても支配なんてかけられるんですか?」 

「いや、それは無理だよ。二代目魔王が近くにいるときは起きて扱われていたらしいし、今回も、もしかしたらちょっと起きちゃったのかもね。まあ、でも、これなら解除は楽だよ」

「楽、なんですか?」


 俺は奴隷契約をどうにも出来なくて困っているのだが、今回は楽に解除できるのだろうか。そう思って尋ねると、リザはこっくりと頷いた。


「契約を吹っかけた物がはっきりしているからね。魔王の遺産を倒すか、誰かが従えて所有するかで、解除できるんだよ」

「それ、簡単ですか?」

「簡単だよー。生態型だから手懐ければいいんだしね。ダメなら倒せばいいし」


 まあ、ユキノが言うような大きいトカゲくらいだったら、手懐けたり倒すことも出来るのか。


「……というか、俺もソフィアとの支配契約を、そんな感じで簡単に解除させることが出来ればよかったんですけどね。いや、倒されるのは嫌ですけど」


 そう言って、ソフィアと俺をつなぐ鎖を見やると、鎖の向こう側にいる彼女は困ったような笑みを浮かべた。


「あ、あはは、私も倒せるイメージが湧きませんし、たとえ倒せたとしても、クロノさんと争いたくないですよ。私の恩人なんですから」

「うーん。クロノとソフィアちゃんの場合はマザーコアとか仲介しているモノが厄介だからね。特殊な解除しか受け付けないから、仕方ないよー」

「ホント、二代目魔王のダンジョンで『打ち消しのタクト』とやらを見つけないとなあ……」


 などと俺がリザたちと会話をしていると、


「お待たせしました、魔王様! ダンテ他、今動ける教授陣八名、揃いました」

「おー、来たねー」


 超特進クラスに、ダンテを含め、八人の魔族の男たちが入ってきた。 

 それぞれ、革鎧のようなものを身につけている。

 戦う準備も出来ている、というような風体だ。


「え、こんなに沢山の人と一緒に入るんですか?」

「まあ、色々と調査したいからねえ」


 男たちはそれぞれ、屈強そうな体をしていた。

 そんな彼らから軽い会釈を受けて、握手を交わしていると、リザが隣に寄って来た。


「どう、クロノ。ウチの教授陣を見た感想は?」

「なんというか、皆さんゴツイですね」

「あはは、まあそれなりにね。私自身があんまり強い戦闘力を持っている魔王じゃないっていう理由もあるから、体格がよさそうな人達を集めているのさ。――ともあれ、一人一人の紹介はまた今度、時間のある時にするとして、今はクロノたちを調べよっか」

「あ、はい。了解です」


 そう言ったあと、リザはユキノの方を見た。


「ユキノも来る? 多分、クロノたちが支配を受けたか確認したあと、トカゲ討伐に行くと思うけど」

「うん、行く。熱はあるけど、動けるし。原因もこの目でみたい」

「そっか。じゃあ、もう少し頑張ってね」


 そうして準備を整えた俺たちは、二代目魔王のダンジョンに繋がる扉に入っていった。


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