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自称!平凡魔族の英雄ライフ~B級魔族なのにチートダンジョンを作ってしまった結果~  作者: あまうい白一
第一章

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第26話 ダンジョン特有の後遺症

「おはようございますーって、あれ?」


 超特進クラスの部屋に行くと、ソファでぐったり寝転んでいるユキノがいた。


「二度寝中ですかね……?」

「いや、でも目は開いてるぞ?」


 ソフィアがこっそり声をかけてくるが、ユキノの目はぱっちりしていた。

 ただ、その顔はほんのり赤く、どうにも体調が悪そうだった。

 どうしたんだろう、と思っていると、


「あ、クロノ。ソフィアちゃん、いらっしゃいー」


 濡れタオルを持ったリザがこちらに歩いて来ていた。

 リザもリザでやや慌てているような表情をしている。


「ユキノさん、病気かなんかですか?」

「うーんと、病気とはちょっと違うんだけど、さっき倒れちゃったばっかりなんだよね」

「え? 倒れたって、大丈夫なんですか……?」


 俺が聞くと、ソファで寝転んでいたユキノがばね仕掛けのように体を起こした。


「大丈夫。問題ない。銀狼の地獄耳もこうして生きている……! そしておはよう、クロノ、ソフィア」


 挨拶してくるものの、目はうつろだ。


「あー、ダメだってば。熱があるんだから寝てなきゃ」

「ぐう……」


 そしてリザに寝かしつけられていた。

 見た感じあんまり大丈夫ではなさそうだ。


「熱があるってどうしたんです? 昨日は疲弊していたものの、すぐに回復して元気そうでしたが。疲れが回ってきたんですかね?」


 俺の言葉にリザは数秒悩んでから首を横に振った。


「ええっとねえ、どうにも魔王の遺産から『支配』を食らったみたいでね。体力や精神力が吸い取られているみたいなんだよ」

「支配っていうと……まさか俺がソフィアにやった感じのですか?」

「そうだね。つまり一種の奴隷契約が出ているんだ。鎖もギリギリ見えると思うよ」


 俺とソフィアは顔を見合わせ、ユキノに視線を移した。

 すると確かに彼女の胴体には茶色の鎖のようなものが見えた。

 

「だけど、これがまた、クロノがソフィアちゃんにやったような優しいものではなくてね。もっと物騒で危ない奴だったってワケだよ」

「危ないって言っても、命までは取られてない……ふわっくしゅん! うぎゅう……」


 盛大にくしゃみをしたユキノの目は、明らかにボーっとしていた。


「まあ、こんな感じで、少し重めの風邪ぐらいの体調不良を引き起こしているのさ」

「だとしたら、結構不味い事態じゃないですか。その支配を受け続けるって」

「そうだねえ。魔王のダンジョンには、強い力を持った魔王の遺産があるから。その一部から受けたんだと思う。魔王のダンジョンに潜ると稀に起きる現象だから『ダンジョン病』とか昔は呼んでいたらしいんだけどね。今では対処方法が多少あるんだけど……まあ結局、どうにか『支配』を解除しなきゃいけないんだよね」


 そこまで言った段階で、リザは俺とソフィアを交互に見た。


「あ、それで、二人にもお願いがあってね。クロノたちも支配を受けてないかチェックしたいから、調べさせてもらってもいいかな?」


 ああ、そうか。彼女と一緒のダンジョンにいた俺たちもそれを受けている可能性があるのか。

 一応、現時点で体に不調は無いけれども、念には念を入れておいた方がいいかな。


「調べるのは別にかまいませんよ」

「わ、私も大丈夫ですよ」

「良かった。ありがとー。……まあ、正直クロノの超強い支配力を考えると、相手からの支配は受け付けないような気もするんだけどね」

「え? 受け付けないとか、そういう現象もあるんですか」


 支配契約、その中でも奴隷契約についてはまだまだ知識が足りないので、その辺りはよくわかっていないんだよな。

 そう思って問うと、リザは首を縦に振った。


「もちろん。力が強い人は自動的に抵抗(レジスト)するからね。私なんかは無理やりの支配契約は効かないし。例外としては、力を封印されたり、奴隷契約に自ら応じちゃったりすると効くかなあって感じだね」

「なるほど。色々あるんですね……」


 ソフィアと支配契約で繋がってしまっているから、もっと調べなきゃとは思っていたから、この情報は有難い。


「まあ、抵抗とかについては了解です。ところで、俺たちを調べるってどうやるんですか?」

「うん、二代目魔王のダンジョンにちょっと入ってもらう事になるかな。それで、キミたちの体から変な魔力が感知されたら、軽く支配を受けているってことになるからね」

「では出発は今からということですかね?」


「いや、待って。安全に行くことを考えて、この部屋に教授陣も集めているから、それまでご飯とかお茶でもしながら待っていてほしいな。その間に私も支配契約をしてきそうな魔王の遺産を調べられるし……ユキノも喋り相手がほしいだろうしね」


 ユキノの方を見ると、彼女は静かに頷いた。


「……うん、喋ってると楽になるから、お喋りさせてほしい」

「まあ、ユキノさんがそう言うなら、お茶でもしましょうかね」


 そして俺たちは教授陣が集まるまで、やや風邪気味のユキノを元気づけるように喋ることにした。


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