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第19話 魔王のダンジョンの一部支配

 二代目魔王のダンジョンに入ってしばらくして、環境が午前中に比べて変化していることに気付いた。


「マタンゴが襲ってきませんね」


 壁や床から散々現れては突っかかってきた、マタンゴの襲撃がピタリと止まっていたのだ。

 一応、出現はするのだけれども、敵対の意思は見せてこない。

 というか、俺達に向かってぺこぺこと会釈をしている。


「……どうなってるんですかね、これ」

「あー、これはね。クロノがモンスターを生み出して使役していた契約印石を取ったからだねえ。その支配力が発動しているんだよ」


 そういえばモンスターを支配する石だと、説明を受けていた。けれど、


「取っただけで使えるんですか? 契約印石って」

「ううん、取っただけじゃ無理だよ。所有している事を示さなきゃ使えないし、そもそも所有するには一定以上の支配力が必要になってくるんだ。一定の力を付けて初めて、魔王の遺産は使えるんだよ」


 じゃあどうして、契約印石の力が発動しているんだ、と俺はポケットに入れっぱなしの石を手に取る。

 その石は微かに、見覚えのある黒い光に包まれていた。


 というか俺の鎖が石を覆っていた。


「あの、この鎖、いつの間にか勝手に巻きついているんですけど。なんですかね、これ」

「その鎖はクロノが所有者になっていることの表れだね。魔王の遺産の所有者として認められたんだよ。おめでとう!」

「いや、おめでとうと言われても。所有者として認められてなかったらどうなっていたんですか」

「その場合は効果が出ないだけだよ。今回は効果は発揮されて、モンスターの支配権がキミに移っているけどね。――あ、でも、所有しているだけじゃ本契約にならないから、モンスターは攻撃してこないだけで操れたりはしないから。そこは注意ね」


 なるほど。本契約とか、そういう細かな用途は良く分からないが、この魔王の遺産は、モンスター避けにも使えるというのは分かった。


 ……ゲートキーパーと違ってマタンゴは倒しても倒しても出てくるし、ちょっと面倒だったからなあ。


 操れたりしなくても、安全にダンジョン内部を進めるなら大助かりだ。


「それじゃ、サラマードさんを探しながら歩いてみますか」

「うん、そうしよう。開いた形跡のある扉を見つけて入っていけば追いつけると思うし」


 ドミネイターズの案内書には、ダンジョンに潜入した際、開けた扉は開けっ放しにするルールが書かれていた。そうすることで後から来た人に自分の居場所を伝えやすくするためだ。

 だから今回も、開けた扉を追っていくことになる。


「んじゃ、行きますか。ソフィアも途中で、何か変わった物音とか聞こえたら教えてくれ」

「はい、了解です。吸血鬼の聴覚全開で行きますね」


 吸血鬼は魔族の中ではトップクラスの聴覚を持っている。

 彼女がいれば、人の声なども聞き逃すことは無いだろう。


 そう思いながら、俺はマタンゴにペコペコされながら、ダンジョンの中をずんずん進んでいく。


 ……というか、この契約印石の効果、本当にすごいな。


 二階層、三階層と降りて行っても、マタンゴが襲ってくる気配が全くなかった。

 そのお陰で立ち止まることもなく、四階層まで降りて来たのだが、


「うわ、ゲートキーパー、ここにもいるんですね」


 四階層にある一本の大きな通路で、俺は足を止めることになった。

 扉の前にゲートキーパーが六体もいたからだ。


 一応、木の棒は持ってきているものの、流石に複数体を相手にするのは少し辛いし、危ない。


 リザとソフィアと協力しながら倒さなければならないけれど、疲れるだろうなあ、と嫌な顔をしていたのだが、


「ああ、大丈夫大丈夫。クロノなら、契約印石を掲げるだけで通れると思うよ」


 リザは笑ってそう言ってきた。

 この石はマタンゴだけを支配するものだと思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。


 ……本当かなあ。


 訝しみながらも、俺は契約印石を掲げて、ゲートキーパーの近くに行った。すると、


「……」


 ゲートキーパーたちは、すぐさま俺に跪いてきた。

 その静かで、少しだけ威圧感のある光景に、俺は少しヒキ気味になる。


「あの……リザさん。この契約印石の力、強すぎません? このダンジョンにいるモンスター全部に効いているんですけど」

「そりゃそうだよ。なんたって魔王の遺産だからね。強い力を持っていて当然さ!」


 リザは軽く言ってくる。


 安眠できるマットレスとか、無限の衣服が入るタンスとか、日常の役に立ちそうな魔王の遺産ばかり目にしていたから、そんな風には思えていなかったのだけれど、

 

 ……よくよく考えれば、マザーコアとかとんでもないものも魔王の遺産なんだよな。


 今さらながら、それを自覚したよ。


「なんというか、魔王の遺産って凄いですね」

「あはは、そうだねえ。それを理解してもらってよかったけど……実は、魔王の遺産の力だけって訳じゃないんだよね」

「え?」


 どういう事だろう、と首をかしげると、リザは契約印石を見てから、俺の目に視線を合わせて来た。


「ゲートキーパーをここまで跪かせたのは、君の支配力で、しっかり魔王の遺産を操れているからなんだよ。普通はこんな風に使えないんだから」

「そうなんですか?」

  

 他の人が使っているところを見たことがないから分からないのだけれども。


「うん。例えばダンテ教授が使ったら、マタンゴを抑えるのが精いっぱいだと思うしね。だからこの結果はクロノの力あってこそ何だよ。――魔王の遺産は使うもの次第では効果も変わるから、その辺りは注意して覚えておくといいよ」

「……なるほど。そうですね。よく覚えておきます」

「よろしい。……ふふ、この活動も講義の一環だからね。新しい事を教えられて良かったよ」


 そんな風にほほ笑みながら、リザは歩を進めていく。

 そして俺も改めて魔王の遺産の力を実感しながら、ソフィアと共に、ダンジョンの奥へと潜っていくのであった。

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