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自称!平凡魔族の英雄ライフ~B級魔族なのにチートダンジョンを作ってしまった結果~  作者: あまうい白一
第一章

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第1話 初日から更に上のクラスへ

 俺が教授に連れられてやってきたのは、豪勢な椅子や調度品が並ぶ部屋だった。

 応接間だろうか、と部屋の中をじろじろと見ていると、


「ああ、クロノ君。そこで座って待っていてくれると助かる。すぐに魔王様はお越しになるから」

「はあ……」


 そうして、やたらフカフカな椅子に座って待つこと数十秒。

 応接間の外から、誰かが走ってくる足音が聞こえてきた。そして、 

 

「ダンテ教授。連絡、受けたから早速来たよー」

 

 にこやかな笑顔と共にやってきたのは、背丈の小さな少女だ。

 耳は長く、頭には立派な角が生えている。

 ただ、このタイミングで来たということは、ただの魔族の少女ではないのだろうなあ、などと考えていたら、ダンテと呼ばれた教授が一礼した。

 

「ようこそお越しくださいました魔王様」


 ああ、やっぱり、俺の考えは的中したみたいだ。


 ……この耳の長い女の子が魔王様か。


 生まれてこの方、田舎から出たことがなかったので、魔王の顔も知らなかったけれど、こんな少女が魔王だとは奇妙な感じがするな。


 そんな風に、思っている間にも、教授と魔王の話は進んでいて、


「この子が、例の魔王級ダンジョン作成者のクロノ・アルコン君です」

「そっか、なら、はじめましての挨拶をしようかな。――私、五十代目魔王のリザ・マルタ・フィラニコスっていうの。リザって呼んでいいよ」


 そう言ってリザと名乗った魔王は手を差し出してきた。


「えっと、よろしくお願いします、リザ魔王様」

「リザとか、リザさんでいいってば。私もクロノって呼ばせて貰うし。だから、私のことをリザって呼んでね」

「あ、はい。了解です、リザさん」


 かなりフレンドリーな魔王様だ。

 だがまあ、変な威圧感などがない分、話がしやすくて有難くもある。そんな風に思っていると、彼女がこちらをじっと見つめて来た。


「クロノ、君がでっかいダンジョンを作ったって聞いたけど、本当なんだよね」

「ええ、まあ。そうみたいですね」

「ダンテ教授。ダンジョンの形は報告書の通りなの?」

「ええ、四百階層のダンジョンを作り上げてしまいました。マザーコアが一つ、彼の力に乗っ取られた状態ですよ。お陰で丸ごと新品に取り換えることになりましたから」


 俺と教授の言葉を聞いた瞬間、リザの目つきが変わった。

 こちらの体をじっくり調べているような真剣な目だ。


「コア一つの処理能力で、魔族三百人は余裕で賄えるというのに、それは凄いね。……ね、クロノ、体に触ってもいい?」

「え? ああ、構いませんが」

「ん、ありがと。それじゃ失礼してっと」


 リザはそう言うと近づいてきて、こちらの唇に細い指を触れさせてくる。

 そしてそのまま、体もそっと寄せてくる。

 

 いくら小さな体とはいえ、スタイルは良いし露出も激しいので見る場所に困る。


 ……なんで魔族の女性は小さくても大きくても妖艶な人ばっかりなんだろうなあ。


 などと俺が目線の置き場所を探っていると、

 

「――これは凄いね。驚いた」


 リザが感嘆の声を上げた。


「彼自身の奥底から力がほとばしっている。ダンジョンの作成により眠っていた力の源泉が開いたのかもしれないね。うん、これだけの力、私は見たことがないもの」

「ま、魔王様から見ても、クロノ君レベルの力は異常なのですか……。クロノ君、キミは一体どうやってそんな力を身につけたんだ」


 ダンテ教授が聞いてくるけれども俺が聞きたいくらいだ。普通に田舎から出てきたら、こんな状態に陥ってるんだから。


「子供のころから何か特訓を受けていたりしたのかね?」

「いや、普通に田舎で暮らしていただけですよ。親の薬師業の手伝いとか、夕飯のため小さい竜とか、獣を狩ったりしてましたけど。それも普通でしょう?」


 どこの家でもやっていることだろう。そう思って言ったら、教授は目を丸くした。


「竜とは、ドラゴンということか?」

「はい。小さいのですけれどね。たまに村の近隣に迷い込んでくるんで、ちょうどいいんですよ」

「ええと……その、待ってくれ。君の田舎には竜がうろうろしているのか?」

「そうですよ」


 頷くと、教授は目を擦ってから、視線を手元の名簿に落とした。

 

「君の出身地はアトラという北方の村らしいが、ここにはそんな凶暴なモンスターがいるのか……」

「いやいや、竜くらいは凶暴じゃないですよ。気配を消して森の中に入れば、大抵の竜からは逃げられますし」

「君は一体……どんな生活を送ってきたんだ。というか、君の言う田舎とは――」


 と、そこまで教授が言った段階で、彼の肩をリザが小突いた。


「はいはい、好奇心ストップストップ! クロノは物凄い力を持っていて、それに興味があるのは私も同じだけど、彼がここにいる理由は質問攻めにあう事じゃないでしょ」

「――っ申し訳ありません魔王様。つい気が逸ってしまいました」

「全く。ゴメンねクロノ。こんなんだけど、一応君の年の主任教授だから仲良くしてあげてね」

「あ、いえ、気にしないでください」

「なら良かった。んじゃ、本題に入ろうか」


 そう言ってから、リザは俺と目線を合わせてきた。


「クロノ、君は超特進クラスに入る気はあるかな」

「え? ちょうとくしん?」


 なんだそりゃ。

 聞いたことがないぞ。


「この学校にあるクラスは特進と普通の二つでは?」


 少なくとも俺が事前に知っていた情報では、二つしかなかった。

 だから言ったのだが、俺の言葉に対し、リザは目を丸くした。

 

「あれ。ダンテ教授、その辺りは説明してないの?」

「ええまあ。突然のことだったもので。応接間についてすぐに魔王様がお越しになられたので、その事を伝えるタイミングがつかめなかったんです」

「そうなの。じゃあ今、簡単に説明するとね、超特進クラスっていうのは、その年の成績で上位の数人に対して秘密裏に案内している特殊な活動グループのことなの。そのグループだけが覚える特殊技術とか強力な魔法の使い方が、一杯あるんだよ」


 なるほど。つまりは隠されたもう一クラスがあったわけか。


「具体的にはどう違うんです?」

「うーんとより実践的にダンジョンの改造について関われて、なんなら学園の運営側にも話が出来るようになるんだけど、まあ、具体的にいうと、学園でサボりやすくなるって感じかな!」


 リザはにっこりと笑顔で言ってきた。

 

「個人的には、クロノ程の力があったら、超特進クラスに入ったほうが楽だと思うの。このままだとクロノは特進クラス入りだけど、超特進クラスなら自由裁量で講義を受けれるからね。サボりたければサボってもいい環境になるんだ」


 魔王はこの学園の管理運営者だったはずだがサボリ云々言っていいんだろうか、と首をかしげつつも、同時に俺は思う。


 ……ううむ、楽だというのは、心ひかれるな。


 もともとそんな大層なダンジョンを作る気もなかったし、学園でのんびりしながら適当な力の使い方を学べれば良かった。


 ……特進クラスは、講義がそこそこ大変だと聞くしな……。


 だから、超特進クラスのほうが楽だというのであれば、そちらに行きたいものだが、

 

「楽なのであればそっちに行きますけど、今日からその超特進クラスって場所には入れるんですか?」

「えっとね、最初のほうの基本講義とかオリエンテーションは特進クラスの方で受けてもらうことになるかな。その後は、超特進クラスで活動してもらうって感じになると思うよ」


 今すぐ別クラスに移るわけではないのか。

 それならば、少しやってみたいことがある。


「あの、超特進クラスの体験とかできます? 本当に楽なら行きますけど、楽じゃなければ特進でいいかな、と思うので」

「うん! 大丈夫だよ。今日の放課後とかにでも、超特進クラスの人とか、やる事とか案内してあげる!」


 リザはそうやって頷いた後で、応接間の時計を見た。 


「――っと、もう次の仕事の時間が来ちゃった。それじゃ、私は一旦戻るね! バイバイ、クロノー」


 そう言って手を振りながら、リザは走り去って行った。


「……なんだか、凄く親しみやすい性格をしているんですね、リザさんって」

「いや、まあ、あんなに親しみを見せるのは中々ないのだけれどもな。少なくとも初対面の人間に対してはもう少し威厳があるのだが……ともあれ、説明も終わったことだし、特進クラスの教室に案内させて貰おう。あちらこちらに連れまわして申し訳ないが、付いてきてほしい」


「あ、了解です」


 そうして、俺はようやく、今年の同級生たちが待つ部屋に向かうことになった。

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