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第15話 木の棒を振るうなつかしさ


 二代目魔王のダンジョンは、初代のそれとは大きく異なり、植物で構成されたものだった

 いくつもの樹木が重なって捻じれ合いながら、通路や部屋を作っている。

 

 そしてやや湿気もあり、薄暗い森の中というような雰囲気を醸し出している。

 さらに特筆すべきは、

 

「このダンジョン、モンスターが多すぎじゃないですかね」


 ダンジョンに入ってしばらくすると、きのこに手足が生えたようなモンスターが、地面からポコポコ湧いて、殴りかかってきた。

 幸いにもダンジョンの外壁から引きはがした木の棒で追い払うことはできているが、やけに数が多かった。


「先に行った人は、モンスターを無視していったのかもねえ」


 などとリザは気楽にいってくるが、モンスターが多いと歩きにくくて嫌になる。

 そんなことを思いながらモンスターを追い払った俺は背後を見た。


「リザさん。こっちは軽く片付けましたよ」


 振り向けば、金属の剣を振り回しながら同じくキノコを殴っているリザとソフィアがいた

 キノコに刃が通りづらいようで、やや苦戦しているようだ。


「手伝いましょうか?」

「ううん、大丈夫。でも、クロノは倒すの速いね。こいつらは魔菌糸類のマタンゴって言って、割と強い力を持っているモンスターなんだけど。木の棒だけでよくサクサク倒していけると思うよ」

「そ、そうですよね。私も、魔王様にもらった剣で殴ってますけど、本当に堅くて……。クロノさんが木の棒で勝てる意味がわかりません……」


 リザとソフィアは揃ってキノコをぼこぼこにしながら、そんな事を言ってくる。


 彼女たちはダンジョンに入ると同時に金属製の剣を生み出して使っていた。

 二人とも武器の取り扱いがうまく、マタンゴを華麗にぶん殴っている。その点、俺は木の棒だ。


 ……俺からすると、そんな細い体で、重厚な剣を振りまわしている二人の方が凄いと思うんだがな。


 そんな事を思いながら、横から襲ってきたマタンゴをぶん殴る。

 木の棒はしなりながらマタンゴの胴体にぶち当たり、その体を裂きながら吹っ飛ばした。


「あの……クロノさんの動き、なんだか手慣れているというか、早すぎる気がするんですが、剣術か何かやられていたんですか?」

「いや、全然。ただまあ子供の頃は木の棒を振りまわして遊んでいたからな。強引にやると折れるから、折れない振り方とか考えてやっていたんだけど……どこにでもいる子供だったさ」


 だからこうして、マタンゴを雑に吹き飛ばしているわけだし。剣術とか習っている人ならもっと綺麗にぶった切っているはずだ。


「……いやあ、マタンゴを雑に裂くほどの力で木の棒を振りぬく子供はいないと思うなあ」

「そうですかね? ああでも、俺の場合は田舎の方でも似たようなのがいたから、ちょっと慣れてるのもあるのかもしれません」


 キノコ系のモンスターは少しだけ相手にした経験がある。それが生きているのかもしれない。


「え、クロノさんの故郷にもこんなモンスターがいらっしゃったんです?」

「木の傍とかに突っ立ってて、幹をへし折りながら襲ってくるから、割と怖かった記憶があるなあ」

「あの、幹をへし折るマタンゴは見たことがないんですけど、クロノさんの住んでいた所には、そんなのがいて大丈夫なんですか?」

「そんなに脅威じゃないから大丈夫。森に薬草を取りに行く時くらいしか出会わないし。気配が薄いから不意打ちには気をつけなきゃいけないけどな」


 暗い森の中からぬっと出てくる動くきのこは結構ホラーだった。

 だから、森に入るときは常に気を張っていた記憶がある。


「前々から思っていたけど、なんだかクロノの田舎の難易度、高そうだなあ。行ってみたいけど、ちょっと怖くなってきたよー」

「人の田舎に難易度を付けないでくださいよ。一応、そこで普通に生活していたんですから」

「あはは、ごめんごめん。……っと、クロノ。もしかして、田舎にいたキノコってあれくらい?」


 そういってリザが指さしたのは、通路の端、樹木で出来た扉の前にいる筋骨逞しい人形だ。

 もはやキノコっぽいのは色だけで、いかつい顔でこちらをにらんでいた。


「ああ、あれくらいですね。でも、他とはなんだか体格が違うような気がしますが、マタンゴとは別種ですか?」

「うん、ゲートキーパーって言ってね。そのダンジョンの素材で出来た特殊なゴーレムなんだけど、倒さなきゃ部屋の中にいけない仕組みになっているんだ」


 なるほど。だから扉の前に立っているのか。

 

「ってことは、先に行った人はあそこの部屋を無視したってことなんですかね?」

「そうだねえ。あれが生きている以上、部屋の中は手付かずだろうね」

「なら、さっさと入りましょうか」

「え……? ちょっと待って、ゲートキーパーは周りのと違って性能が――」


 俺はリザの言葉が終わるよりも早く、木の棒でゲートキーパーの顔面をぶん殴った。

 すると予想通りというべきか、キノコの柔らかい弾力が手のほうに返ってくる。

 

 普通のマタンゴ相手ならば軽いのでここで振り止めて吹き飛ばせばいいのだが、この大きさになってくると振り止めても意味がない。

 だから俺はそのまま折れるのを気にせず振り切った。その結果、


「――!?」


 ゲートキーパーの首から上が吹き飛んだ。

 そしてその場に倒れ伏した。

 

「ふう。田舎のでかいキノコより柔らかくて助かった」

 

 代償として木の棒が砕けてしまったが仕方ない。

 同一素材だとリザは言っていたし、こうなるのも予想の内だ。

 俺は新たに外壁から木の棒を一本引きはがしながら、後ろで見ている二人に声をかける。

 

「さあ、部屋に入るか」

「あの、クロノさん。それは木の棒で倒しちゃいけないモノじゃないかなあ、と思うのですが……」

「うん? 言っている意味がよく分からないけど、まあ、別に通れるからいいじゃないか」

「そ、そうですね。確かに、それが目的ですもんね!」

 

 ソフィアは微妙に戸惑いながらも頷いていた。

 そしてその隣では、リザが冷や汗を流しながら苦笑していて、


「うーん、なんというか、クロノがいると本当にサクサク進んでいいなあ」

「まあ、ダンジョンに潜るのは初心者ですからね。最初はサクサク行くんで、フォローは頼みますよ、リザさん」

「了解ー。フォローできることが残っていれば良いんだけどねー……」


 そんな感じで喋りながら、俺たちは二代目魔王のダンジョンを進んでいく


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