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エピローグ 始まりの戻り


 エンターギガスが討伐されてから数日後。


「先日も申し上げましたが。この度は、ありがとうございました、皆様」


 俺達は、迷宮都市の、祭り実行委員会の集会所で、市長や運営の職員たちからそんな言葉を受けていた。


「避難誘導から、エンターギガスの討伐まで。何から何まで手伝って頂き、今回の祭りでは本当に超特進クラスの皆様に助けられました……。特にクロノさんには何とお礼を言っていいやら」

「いやいや。もう沢山お礼はもらいましたって」


 どうやら、あのエンターギガスとの戦いのシーンは中継器できっちり撮られていたようで。

 運営の方から、祝勝会を開いて貰ったり、様々な歓待やもてなしを受けた。

 

 また避難誘導など、今回の事態収拾に協力したということで、今回泊まった豪華な温泉旅館の宿泊チケットなども、超特進クラスの皆にプレゼントして貰ったし。


 むしろ貰ってばかりだった。

 

 そんな状態でこの三日間、毎日のように騒いで遊んだ結果、あっという間に帰宅する日となったのだから。

 

 だのに、市長は首を横に振る。

 

「それ位じゃ全然足りませんよ。皆様の力があったからこそ、迷宮都市も、エンターマインも無事だったのですから」

「いやまあ、イージスさんとか、迷宮都市側のひと達の頑張りがあってこそだと思いますが。……って、そういえば、エンターマインが直ったのは良かったですね」

「はい。あれから、数日経ちましたが、自己修理機能で、エンターマインは問題なく稼働できています」


 そう。あのエンターギガスを倒してから、エンターマインは落ち着きを取り戻したようで。

 この三日間、問題なくダンジョンの入り口を纏める場所として稼働していた。

 

 というか、以前よりもしっかりとダンジョンのまとめ方が成長したらしく、難易度が高い順にに山頂から並べたりしているようだ。

 そして難易度が高すぎるダンジョンが同時発生する事も今の所無いらしい。

 それはとても良い事なのだが、 

 

「因みに、あの巨人は一体なんだったのか、調べは着いたんです?」


 突然現れたエンターギガスについては、未だ、分からないところが多く迷宮都市や魔王城の方で研究する事になったらしい。とはいえ気になるので現時点で分かる事はないかと聞いたら、


「あれはまあ、エンターマインがため込んでいた魔力があふれ出た結晶みたいなものっぽい、というのは判明しているかな」

 

 イージスが答えてきた。


「溢れた魔力の結晶があんな姿になるんですか……。珍しいというかなんというか」

「うん。流石に今後似たような事は起きないと思う程度には珍事だったかな。その位珍しい事じゃないと、あんなに強い物体がぽんぽん出ちゃうから、勘弁してほしいしね」


 ははは、と未だに包帯の巻かれた手を振りながらイージスは言う。

 それを見て、クラスメイトも頷いている。


「本当に強かったな」

「ええ。クロノさんが血を流す所、初めて見ましたし」

 

 ちょっと待て。


「いや、その判断はおかしいというか、俺だって怪我するぞ? あの重たい奴とか、かなりパンチ力あったし」

「ふふ、鋼鬼を押しのけるパワーを、かなりで片付けるのか……いやあ、凄いな」


 イージスまでクラスメイトと話を合わせているし。

 何だこの状況は。

 どうなっているんだ。


「あはは、まあ、今回はクロノが結構なことを見せてくれたから仕方ないね」

「リザさんまで何を言ってるんですか」

「まあまあ、褒め言葉だよ。ともあれ、クロノのお陰で参事は避けられたけど。問題が起きたのは確かだからね。この後、魔王城から調査部隊を出して、壊れている所が無いかチェックはするつもりだよ」

 

 そんなリザの言葉に、市長はぺこりと頭を下げる。

  

「ありがとうございます、魔王様」

「良いの良いの。魔王の遺産っていうものの信用は、私たちにとっても、魔族の生活の中でも、大事な事なんだから。それに……今回の課外講習で、凄くお世話になったからね。持ちつ持たれつってやつだよ。今回は魔王城の皆を受け入れてくれて、ありがとうね、市長さん」

「いえいえ。何度も同じことを言ってしまいますが、……本当にこちらこそ、ありがとうございました」


 そんな風に軽く挨拶を交わしたのち、俺達は集会所の天幕を後にする。そして、


「それじゃみんな。課外講習はこれで完了! 魔王城に帰ろうか!!」

「はい!」


 こうして今回の課外講習で様々な事を学んだ俺達は、魔王城への帰路へと着くのだった。

 

 

 ●


 その青年は、迷宮都市を見下ろせる高台から、エンターマインを見ていた。


「エンターマインの機能は、正常……か。まあ、無理をしなくなったのだから、結果オーライか」

 青年は、懐から一枚の紙を取り出す。

 迷宮都市に号外として配られた、一枚の新聞だ。

 

「そして、こっちに書かれたのは、魔王の遺産の暴走を止めた英雄か」


 そこには一人の名前が載っていた。


「クロノ・アルコン。なるほど。……あの地獄で育てられたのは、彼なんだろうね」


 それを見て、青年はふう、と息を吐いてから笑みを浮かべる。


「彼が凄い存在であるのは分かっているが、それでも――彼を含めて、魔王の遺産を解き放つために。私も、動いていかないとな。意思を持った『魔王の遺産』の一人として……」

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