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第22話 情報さえあれば、進行はサクサクと



「ここは、神殿のような建物の中でね。ゴーレムが多いゾーンだよ。気を付けて!」


 二階層に入るなり、ミスラは緊張した面持ちでそう言った。

 

 俺達が降り立ったのは、広大な白い石床が目立つ部屋の中だった。

 周囲には石壁ではなく、白く太い柱の様なものが幾本も立っており、そして柱の傍には同じく白い岩肌のゴーレムが何体も立っていた。

 

 というか、こちらが部屋の中央に現れた瞬間、一斉に起動して、こちらに歩いてきている。

 岩石製のゴーレムではあるが、結構俊敏だ。

  

「ここの転送ポイントも一階層と同じように隠れているから、あの滅茶苦茶堅いゴーレムを避けながら探す必要があるんだ……」


 ゴーレム達を見て冷や汗を流しながら、ミスラは言った。

 

「そんなに堅いのか、アイツラ」

「うん。ボクの氷でも、アリアの炎でも中々倒れなくてね。魔法で倒すのにとっても苦労するくらいには耐久力があるんだ……」

「ええ、酷いわよ、アイツラ。なんど炎を吐いても、効かないんだもの!」


 アリアは眉をひそめながら言っている。彼女にこんな表情を取らせる辺り、相当厄介だったんだろう。 

 

 ……どんな材質か、構造かも分からないし、物理的に殴りかかるのは控えた方が良さそうだな。

 この階層で手足を怪我するのは避けたいし。ただ、

「うーん、魔法がキツイくらい堅いなら……ちょっと他の方法を試してみてもいいかね。結局、あいつらがいると邪魔だし」

「え、ええ、大丈夫だけど、何をするの、クロノ君?」

「ちょっと鎖を使ってな……っと」


 俺は手足からうっすらと出ている支配の鎖を強く認識する。

 すると、それだけで俺の手を僅かに覆っていた、黒い鎖が現出する。

 

「そ、その鎖は『支配の鎖』かい? 高濃度の魔力の持ち主しか顕現させられないっていうあの……!」


 ミスラは俺の鎖を見ながら目を見開いている。


「高濃度云々はあんまりよく分からないんだけど、まあ、名前はそうだな」

「そ、そうなんだ。初めて、実物を見たよ。……あれ、でも、その鎖をどうするんだい? まさかそれでゴーレムを打ち付けるとか……」

「ああ、いや、そんな事には使わないさ」


 この程度の鎖で鞭打ったところで、あの石の体に大したダメージは与えられなさそうだし。だから、

 

「これは、単純に持ち手として使おうと思って――なっ!」


 俺は鎖の先をこちらに走り寄り始めたゴーレムの一体に投げつかた。

 そして鎖を操り、ゴーレムの胴体を一回りさせる。

 

「よし、ホールドした。そして、ここから。引き寄せてっと!」


 俺は鎖を引っ張り、捕まえたゴーレムの一体を手元まで寄せる。それから、 


「これを、ぶつける……!」


 手にしたゴーレムを思い切り、他のゴーレムに投げつけた。

 投げつけられたゴーレムはとっさに、その身体を受け止めようと姿勢を取ったが、

 

 ――ゴシャッ!


 と、鈍い音を立てて、俺が投擲したゴーレムは他のゴーレムを砕いた。

 どうやら、素材は魔法に強くて多少硬くても、ぶつけ合わせれば意外と楽に壊せるようだ。

 

「うん。この戦法はいいかもな」

「ご、ゴーレムをあっさり、と……凄い! 凄いわクロノ!」「

「どういたしまして、アリア」


 アリアは感動したのか、パチパチと拍手して来る。たいして、その隣にいたミスラは目を何度か擦って俺の方を見ており、


「あれ……え? クロノ君、今、魔法で強化とか、してないよね? ただの腕力、だよね?」

「うん。勿論。そうだけど?」

「そ、そっか。そうだよね。ま、まあ、竜でも壊せなかった筋力測定装置を壊せる位だし、腕力だけでゴーレムを振り回せるよね。あはは……」


 と、ミスラは力の抜けた笑い声をあげる。若干、どう反応してよいのか分からないようにも見えるが、

 

「ミスラルトさん。色々と驚くでしょうが、その内、私たちのように多少は慣れますから、大丈夫ですよ」

「そ、そうだね。ありがとう、ソフィアさん。が、頑張って慣れるようにするよ」


 そんな言葉を喋りながら、なぜかソフィアが慰めているようであった。

 なんだろう、この関係性は。微妙に変な気がするんだけどなあ、と思っていたら、

 

「おーい、こっちの方に魔法陣、あったぞー」


 俺がゴーレムを引き付けている内に超特進クラスの仲間達が、転送ポイントを見つけてくれた。

「おー、サンキュー。じゃあ、次の階層に行くか」


 と、軽く言うと、ミスラが再び、困った様な顔をしていて。

 

「と、戸惑っている内に一階層を突破できちゃうとは。いや、嬉しいけど……ボクたち、ここを突破するのに数時間かかったのになあ……」

「はは、まあ、ミスラやアリアの案内があったお陰だよ」

「そう言って貰えるのは嬉しいんだけど、なんだかそういうレベルじゃない気がするよ、クロノ君……」

「ええ、そうね。ミスラルト。この速度はあたしでも予想外だわ……!」


 そんな風に若干戸惑いを浮かべる天竜二人をよそに、俺達は次の階層へ進むことにしたのだった。

 

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