第21話 ダンジョンの攻略方法
総勢十四人のパーティーになった俺達は、ミスラとアリアの先導の元、一階層を歩いていた。
「前回の探索で、ある程度のマッピングはしたからね。途中まではスムーズに行けると思うから、案内させて貰いたいんだけど、いいかい、クロノ君」
「ああ、その辺りは任せたよ」
という感じで、途中までは彼女たちからアドバイスを受けながら進むことになったのだが、
「この階層は、随分と狭いんだな」
歩いて数分後。
俺達は直ぐに洞窟の最奥にたどり着いてしまった。
特にモンスターや、トラップに出会う事もなく、ただひたすら歩いただけで、である。
「あはは……まあ、このダンジョンは十二階層あるから。一階層から優しいのはボク達からすると有り難いんだけどね」
ミスラは苦笑しながら言う。
「へえ、十二階層もあるのか。……って、なんで知っているんだ? この覇竜のダンジョン、未攻略なんだろ?」
「うん。でも、始祖の探索で十二層あることだけ突き止めたことが、ボクたちの世代まで情報が残っていたんだよ」
なるほどな。ということは、始祖は攻略しかけていたってことなのか。
「ゴールが分かっているのは有り難いが、他に情報は残っていなかったのか?」
「うん。それが殆ど無くてね。一昨日からボクたちは必死に潜って、どうにか情報収集は進めたんだよ。敵の配置やら、階層の移動方法やらを、ね」
「階層……ってそうだよ。周りに階段が無いけれど、どうやって移動するんだ?」
俺達はもう洞窟の突き当りまで来てしまっている。
ここまでの道のりで階段らしきものは無かったのだが、一体どうやって移動するのか。疑問だったのだ。
「ああ、うん。それはまず、こうやって調べるんだよ」
すると、ミスラは微笑みながら、洞窟の突き当りの一部に手を触れて、周辺をなぞっていく。すると、
――ポッ。
っと、赤と青の混じった光の魔法陣が、目の前に浮かび上がってきた。
「これは?」
「転送用の魔法陣だよ。魔力のある何かで転送ポイントが隠れている箇所に触れると浮かび上がってくるんだ。これに乗る事で、次の階層に行けるんだ」
「お、おお、階段じゃないのか。なんつー都会的なシステムなんだ……」
俺は今までダンジョンという物は階段で移動するモノだとばかり思っていたけれど、こういう仕組みもあるのか、と思っていたら、
「え、そ、そこに驚くの? 意外とよくあるシステムだと思うけれど……ボクらも自分のダンジョンでは、コアを使ってワープする事も出来るんだし……」
「生憎と、俺はそのよくあるシステムをあまり使う機会がなくてなあ……」
何せ自分のダンジョンの一階層だけで生活しているし。というか広すぎて、他の階層に行く気にもなれないし。
しかし、そうか。こういう仕組みがあるなら、自分のダンジョンを改造する時に取り入れても良いかも知れない。勉強になるなあ、と思いながら魔法陣を見ていると、
「あれ、ミスラ。なんか魔法陣の周りに『一度転送ポイント使用すると、一分後、消去され、別の個所に転送ポイントが作成されます』って書いてあるんだけど」
「ああ、条件付けと説明書きだね。このダンジョンの魔法陣は、そうやって条件を書き記してある事が多いんだ」
「この説明、本当なのか?」
「うん、その言葉通り、誰かが踏んだら本当に一分後には消えて、別の場所への転送ポイントが再生成されちゃって探さなきゃいけなくなるよ。一度、先走ってアリアが入った後、ボクが間に合わなかった時があって、その時は分断されちゃったしね」
ミスラのセリフに、うんうんとアリアは頷く。
「ええ、本当に、本当にあの時は辛かったわね! 二階層と三階層で別れちゃって、戦力半減したし。次から慎重に動くようになったわ!」
「というわけで、こちらとしては良い反省材料になったんだけれども、ね。結構、大変だよ」
「だなあ。この大人数でも戦力を分散されるのは痛いし、注意しながら進んで、見つけたら一斉に乗った方が良さそうだな」
でなきゃ大勢で着た意味がない。そう思って言うと、皆もうんうん、と肯定して来る。
「異議なしです。では、見つけ次第、声を上げて連絡し合う事にしますか」
「ああ、そうだな。……一階でこうして作戦会議できると考えると、意外と手心あるダンジョンだな、ここ」
「あはは……あとはもうちょっと厳しくなければ、いいんだけどね。ともあれ、ここに乗ったら、次から危険な奴らも出て来るから。気を付けてね」
「おう!」
そうして、俺達は転送ポイントの魔法陣へと足を踏み入れる。
ここから、覇竜のダンジョン探索の本番が始まるのだった。