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第20話 ダンジョンの好み、趣向による違い

 俺が超特進クラスの部屋に行くと既にそこにはもう、クラスのメンバーが集まっていた。それはもう、装備万端の状態で、だ。


「皆、気合十分だな」

「そりゃあ、魔王のダンジョンとは違う、特殊な場所に行くんだから。気合も入るってもんさ」


 軽装鎧を着こんだコーディーは、鎧の部分をゴンゴンと殴りながら言って来る。

 彼と同じように、戦闘も行えるような装備を整えた超特進クラスの面々も、同じように頷いている。そんな仲間達を見て、


「本当に。本当に協力してくれて、ありがとうね、皆!」

「うん。ボクたち二人だけじゃなくなって、十五人パーティーで動けるだなんて……本当に心強いよ!」


 アリアとミスラは声を震わせながら喜んでいた。

 そう、今回は俺たち超特進クラスのメンバーと、ミスラとアリアを合わせた総勢十五名で挑むことになる。俺達からするといつも通りの面々であるが、ミスラやアリアにとっては違うのだろうなあ、と思っていると、 

 

「うん、皆揃ったね。じゃあ、入り口まで案内するから、ついて来てねー」


 俺たちの前にリザがやって来て、手を上げて先導を始めた。

 ただし、今回のリザの服装は微妙に戦闘向きではないというか、明らかに動きにくそうな白衣を纏っている。というか、医務室での格好そのままだ。

 

「あれ、今回はリザさんはダンジョンにいかないんですか?」

「うん。申し訳ないけど、私は今回、入り口まで案内するだけだねえ」


 リザは残念そうに言ってきた。そんな彼女に対して、俺はふと思った。


 ……いつも学生の事情に手助けをしてくるリザさんにしては珍しいなあ。

 

 てっきりリザも俺達と一緒について来て、アリアやミスラに協力するのかと思っていたのだけれども。毎度毎度、現代の魔王が手を出すわけにはいかないという事だろうか。

 

 リザの表情からは残念はあるものの、焦りは感じられないし。そこまで緊急的な事案だと思っていないのかなあ、と思っている内に、俺達は宝物庫にある巨大な扉の前に立った。

 

「さあ、じゃあ、オープンっと」


 そしてリザが扉を開けると、目の前には巨大な洞窟が広がっていた。

 半円筒形をしたその洞窟の天井には、魔石で出来たランプが吊るされており、やや明るく遠くの方まで見えるようになっている。


「これが、覇竜のダンジョンか」

「うん。そうだよクロノ。挑戦者はここからどんどん入って行ってね」

 

 リザのその言葉に背中を押されるようにして、アリアやミスラを含めた超特進クラスの面々は次々に扉の敷居をまたいでいく。

 勿論、俺やソフィアもその敷居をまたぎ、ダンジョンへと足を踏み入れた。のだが、

 

「む」


 俺達と同時に入ろうとしたユキノが足を止めた。

 

「あれ、どうかしましたか、ユキノさん」


 なんで片足を上げた状態で止まっているんだろうか、と思って問うと、ユキノは首を傾げて上げた足を動かした。

 扉の敷居の部分を再びまたぐように。すると、

 

 ――ゴッ。

 

 という鈍い音がした。

 ユキノの額と足が、何かとぶつかったようだ

 そして、再度ユキノは足を止めて、こちらを見た。


「……ここ、透明な壁が、邪魔してる」

「え?」

「ワタシ、入れない、みたい」


 ユキノは言いながら、洞窟と宝物庫を結ぶ部分をゲシゲシとける。

 

「俺には何も見えないんだが……ソフィアは見えるか」

「い、いえ。全く。ただ、力の波動の様なモノは感じますね」

「ぬうう……」

 

 ユキノはパントマイムよろしく、手をべたっと虚空に張り付けている。

 確かに、彼女の言う通り、透明な壁があるようだ。

 一切こちらの洞窟側に身を入れる事が出来ていない。

 それを見て、ユキノの背後にいたリザが、

 

「あー、やっぱり無理なんだねえ」


 と、声を上げながら苦笑した。

 

「え? やっぱりって何ですか、リザさん」


 尋ねると、リザはその苦笑のまま、ユキノと俺達を見比べて、


「あのね。このダンジョンはね、今年二十歳になる人しか、入る事が出来ないんだよ」

「え……そうなんですか!?」

「うん。だから例え、アリアちゃんたちの親御さんが入ろうとしても無理なのさ。今の世代で攻略しなきゃいけないんだ。だから私も入らないって言ったのさ」


 なるほど。だから、さっきは微妙に残念そうな表情をしていたのか。

 ただ、そういう条件が分かっているなら、

 

「……なんで、ユキノさんに前もって言わなかったんです?」

「いや、もしかしたら背丈や体躯的な意味でサラマードもいけるかも……と思ったんだよ。でも……無理だったねー。判定厳しかったねー」

「リザ。ワタシは背丈的に貴方と変わらないし、胸の意味で言っているなら抗議したい所存である。あと、このダンジョンの設定にも。若い子しか入れないとか、このダンジョンはロリコンか……!!」

「ちょっと、落ち着いて下さいユキノさん! 変な事を言ってますって!」


 そもそも、ダンジョンに性的嗜好というものはあるんだろうか。まあ、何にせよ入れないなら仕方がない。

 今もどうにかユキノが透明な壁を蹴ったり齧ったりしているのだが、全くこっち側に来れそうにないし。

 俺が一旦扉の外に出て、ユキノの手を掴んだり、担いだりして入ろうとしても、彼女の体だけが弾かれて終わったし。

 

 ……これはどうしようもないな。

 

 探索メンバーが一人減ったのは少し残念だけれども、


「出鼻が挫かれましたが、とりあえず、俺達だけで行ってきますね」

「うん、頑張って来てねクロノ。今回は私たちはお留守番だから、傷薬とか食料とか、皆が帰ってきた時に必要になりそうなものを用意しておくよ」

「……とても納得いかないけど、行ってらっしゃい……! お弁当はソフィアに預けておくから……」


 そんな感じでリザは笑顔で。

 ユキノは不満気な顔で見送ってくれるのを背中に受けつつ、俺達は覇竜のダンジョンへと潜っていく。

 

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