自己紹介は突然に
「……〜〜〜えーそれじゃ時間が少し余ったから自己紹介でもしてもらおうかー、てきとーでいいからねー、はい、じゃあ左前の君から」
担任が一通り話し終えると生徒達に無茶振りをしてきた
「…えっ、僕？あ、えっと…………」
いきなり始まった自己紹介
普通なら最初のこいつのように慌てるだろう
否！！
この俺に抜け目はない！！
こんな事もあろうかとこのquestionに対する完璧なanswerはすでに用意してあるのだよフッフッフッ！！
「はいじゃあ次は一番後ろの君」
そんなことを考えていたら俺の番が回ってきた
「はい」
俺は立ち上がってこう言った
「時女夕です。よろしくお願いします。」
……完璧だ
高校生活を平穏に過ごすためには目立ってはいけない
その点この自己紹介は、目立たない
尚且つ、シンプルで最低限のことは伝えている
そして最後の『よろしくお願いします』
目立ちはしないが、最後まで礼儀は忘れない！！！
これぞ日本人！！ジャパニーズ！！！！大和魂！！！！
達成感に満ち溢れながら座って、一騎の方を見る
今の自己紹介で俺の存在に気づいたらしく、こっちを見て笑顔で手を振ってきた
俺は軽く笑って見せ、自己紹介してるやつに視線を移す
どいつもこいつも俺のをパクったようなことしか言わない
まぁ俺の自己紹介が完璧過ぎたから仕方ないか
……いや俺だって分かってるから
誰だって思いつく平々凡々な自己紹介だってこと言われなくても分かってるから！！
なんて頭の中でノリツッコミしてるといつの間にか一騎に順番が回ってきた
「えーっと、どもー！！竹内一騎でーっす！！！
『カズ』とか『カズくん』とか好きに呼んでねー！！！！
ちなみに彼女はいないけどー、俺イケメンじゃん？だから俺に見合う人じゃないと付き合わないから、俺のこと狙ってた女の子たちは注意ねwww
あっ、友達だったら誰でも大歓迎だよー！！！ウェルカムウェルカム！！！！
ってな感じで、これからよろしくお願いしまーっす！！！！」
彼は根はいい奴なのだが、いかんせん空気が読めない
これまでの空気を打ち破った、元気がよく、周りを煽るような自己紹介（本人に自覚はないだろうが）
そのせいでみんなポカンとしていた
流石は天然ナルシスト、自分の犯した過ちに気づかないどころか、周りがポカンとしてるのを見て不思議そうな顔をしている
「…あ、えっとじゃあ次」
先生の言葉でまた自己紹介が始まった
しばらくすると、あの変人美少女パントマイマーの順番が回ってきた
「二階堂 早希です。よろしくお願いします。」
あれ？
本当にパントマイムしてた人？すんごい落ち着いてない？
彼女はそれだけ言うと席に着いた。
……しかしそう思うのも束の間、勢いよく立ち上がった
「なんてねーwwwwwww何揃いも揃って似たような自己紹介（笑）してんのwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwそんな安パイな自己紹介して楽しいんですかー？wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww全然自己のこと紹介できてないやないかーいwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwそれとも『全てを語らない俺カコイイ』とか思っちゃってんのwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww厨二病かそなたらはwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwヘイドクターwwwwwwwwww急患ですwwwwwwwwwwwww厨二病患者がたくさんいますwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwヘルプヘルプゥゥゥwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww自己紹介ってのはなwwwwwwwwwwwwwwwwwwこうやってやんだよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「皆様、初めまして。わたくし二階堂早希ともうします。
皆様のお目にかかるのは今日が初めてで、とても緊張しておりますが、自己紹介をさせていただきたいと思います。
わたくし……ww…にかいww……どうwwww………早希は……………」
「やばいwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww堅すぎるwwwwwwwwwwwwwwwwwwあたしの自己紹介堅すぎwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwマカライト鉱石より堅いわwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
……
…………
………………うざい。
その一言に尽きた。
なんだこいつは、なんだこの煽りは
俺の想像の遥か上を越えてきた
やはりただ者ではない
よし、目を合わせるのも辞めておこう
「てことで！！！二階堂早希でございます！！！！！！マイブームはパントマイムです！！！！みんなよろしくぅ！！！」
ひとしきり笑い終えると彼女は最後にそれだけ言って座った
……いや、マイブーム変わりすぎだろ
