謎のパントマイマー
俺らは先生に案内されて、これからの1年間の多くをここで過ごすであろう、1年3組の教室で待機させられていた。
教室の後ろの角にある自席で、俺は校門で一悶着あったあとに校長の肛門の話を聞かされたのか…と感慨にふけっていると、視界の端に動いている人が見えた
目をそちらに向けると、目鼻立ちの整っている、黒髪のロングヘアの美少女がいた
正直めちゃくちゃタイプだ。
新宿を歩いていてもこんな可愛い美少女にはなかなか巡り会えないだろう(新宿に可愛い子がたくさんいるという偏見)
それが……
それなのに…………
パントマイムをしている
しかもかなり上手い
パントマイムにも色々な種類があるが、その中でも1番オーソドックスかつ、本人の力量が試される『壁』の演技だ
空中に手をペタペタさせているだけなのに何故かそこに壁があるように見える、不思議だ……
しばらく彼女の容姿と演技に見入っていたが、ふと我にかえった
入学式後の静まり返った教室で、彼女は一体何をしているのだろうか
彼女は顔はいいが、多分ヤバいやつだ…
よし、眺めるだけで関わりは持たないでおこう
彼女から視線を外し、教室を見回してみる
女は…ブスばっかだ
4,5人可愛い子もいるが、俺みたいなやつが関わることはないだろう……ww
男子は……明らかに高校デビューしてるやつ、根暗そうなやつ、リア充っぽいやつ、色々いるな……
仲良くなれるとはおもえないが…
まぁ誰とも関わりを持たずに空気のように安全に過ごせればいいか……
そんな風に思いながら教室を見回していると、見覚えのある後ろ姿を見つけた
彼は竹内 一騎
同じ幼稚園、小学校、中学校に通った幼馴染で、俺が唯一友達と呼べるヤツだ
ナルシストで天然だが、容姿はモデルでもやってるんじゃないかってくらい良く、活発で、裏表のない性格の彼には色々と振り回されたが、なぜか悪い気はしなかった
同じ魅師校に入学するとは聞いていたが、同じクラスになるとは……
空気のようにひっそりと過ごせなくなるなぁと思いつつも少しホッとした自分がいた
周りを見るのにも飽き、ボーッとしていると、担任でなるであろう40前後の男の先生が入ってきた
「今日から君らの担任になる〜〜〜……」
よかった、普通の人だった
校長のような人ではないかと少し身構えていたが、安心した