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政略結婚

作者: あははっはっはは

 

「愛してるよ。クラウ。」

「私もよ、ロディ。」


 ・・・・・・退屈。


「クラウ・・・。」

「なあに?」

「綺麗だ。」

「・・・ふふ、嬉しいわ。」


 ・・・・・本当はちっとも嬉しくない。


「クラウ、愛してる。」

「まあ、嬉しいけど時間が無いわよ?」

「もう少し君のそばにいたい。」

「使用人が困っているわ。」

「・・・・・・・・・・わかった。行ってくる。」

「ええ。頑張って。」


 ロディは何度もこちらを振り返りながら馬車に乗り、仕事に出掛けて行った。


「・・・まったく、ロディはなんで私にベッタリなのかしら?」


 私、クラウ・メイ・ミーレはロディ・ルー・ネイカットと結婚している。でも政略結婚というやつであり、決して愛を囁きあうな関係ではない。相手と結婚するメリットがなければ捨てられるような関係のはず。

 ただ、マザコンでファザコンな私は我が家の利益のためにロディと愛を囁き会っているだけだ。


「奥様、旦那様がお仕事にお出掛け、寂しいのはわかりますが、早く室内に入らないと風邪を引いてしまいます。」

「・・・ええ、そうね。行きましょう。」


 そしてここの使用人達は私達がラブラブであると、嬉しそうに噂をするのだ。 おかげで感じなくていい罪悪感を感じる。でもロディを好きにはなれない気がする。


 ロディは美形で気が強くて鉄仮面で俺様なやつだ。令嬢達によれば、たまーにみせる優しさにキュンとくるらしい。

 でも私に対しては気が弱く馬鹿で犬みたいなやつだ。


 例えば・・・・。


『クラウ。』

『・・・ロディ?お仕事に行ったはずでは?』

『クラウといたいから、休んだんだ。』

『・・・・・・。』

『クラウ?』

『今すぐ、仕事にいきなさい。』

『え?』

『聞こえませんでした?仕事にいきなさい。』


 私が不機嫌そうに、いかにも怒っているという態度をとるとロディは鉄仮面と呼ばれる程にいつも無表情か顔を歪ませた。


『な、なぜだ。俺のなにがいけないんだ。クラウ、捨てないでくれ、お願いだ。』

『・・・。』

『綺麗なドレスも、ネックレスも買う。我が儘を言ってもいい。だから、捨てないでくれ・・・。』

『・・・お仕事、頑張って下さい。』


 そのときロディは、絶望したような顔をしていた。

 それから、ひたすら仕事に没頭するようになり顔色もどんどん悪くなっていったので、屋敷のなかで仕事中のロディの頭を撫でて、『あのときはお仕事をサボったから怒っていたの。ごめんなさい。こんなにあなたを追い詰めてしまうなんて思わなかったわ。』と言って許した。


 ・・・そのときはすごく嬉しそうだった。愛してると何度も言いながら私にキスの雨を降らせた。

 使用人にはとても素敵なお話だったみたいで、メイド達は自分も誰かにそれだけ愛されたい、とうっとりしながら噂話をしていた。


 私からしてみれば、愛らしい犬としか思えない。ロディにはチワワが一番似合うかもしれない。


「ふふっ・・・。」

「奥様?」

「いえ、ロディが帰ってきたらプレゼントをあげようかしら、と思って。」

「!プレゼント選びならお手伝いします。」

「いえ、自分で作るわ。白い布と茶色と黒とピンクの刺繍糸と針で作るつもりよ。」

「まあ!すぐに用意しますね!」


 使用人はとても嬉しそうにして走っていった。

 使用人が屋敷で走るのは緊急事態だけで、走るととても冷たい目で見られたりするのだが・・・。それに格上の人にわざとお尻を向けていいのは5m以上離れてからだ。

 この屋敷の人達は元気すぎると、いつも思う。でも気が楽だし、とても楽しいので注意はしない。他人がくれば大人しいしね。


 私は部屋に戻り、また嬉しそうな使用人がくるのをまった。







 俺はロディ・ルー・ネイカット。クラウ・メイ・ミーレの婚約者で貴族だ。クラウとは政略結婚であるが、俺はクラウに惚れている。

 しかし、クラウにそのような様子は無い。俺に合わせているだけで、全く俺に傾かないのだ・・・。


 だから俺は、女友達のメイリア・ハット・ローディアスに相談した。


『メイリア、相談がある。』

『なにかしら?』

『どうしたらクラウが振り向いてくれる?』

『・・・政略結婚でしょ?彼女、恋人位居るんじゃないかしら。』

『なっ・・・それでも!』

『じゃ、彼女に好意を示すのよ。誰でも好意を示られたらそのうち好きになっちゃうわ。・・・多分。』

『そうか!わかった!頑張る!』

『大丈夫かしら・・・?』


 そして、実践した。余り効果があるのか分からないが、一緒に過ごす時間が増えて大満足だ。

 最近は抱きしめ合うこともあるんだぞ!!


 だが、クラウに至近距離で微笑まれ、しかも抱きしめ合うとクラウの普段は髪で隠される首筋が色気を放つ。首筋のほくろに思わず唾を呑み込んでしまう。そして、抱きしめ合うことでクラウのあまり大きくはない胸が俺に当たり、ふにゅ、と少し形を変える。

 クラウの細い腕が背中にまわり、ぎゅっと力をこめられた時は心臓がマッハで動いたかと思った。


 ドギマギしまくってるのばれたら恥ずかしい。クラウには未だに話すだけでもドギマギしてしまう。


 さ、ら、にだ!!!最近、クラウが俺のためにハンカチを作ってくれたのだ!俺のために!白いレースのついたハンカチにチワワの可愛らしい刺繍がはいっている。作るの大変だろうに、俺のために!

 その日は興奮しすぎてなかなか眠れなかった。


 ちなみにメイリアにそのことを自慢したら、興味なさそうに生返事をしていた。



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