終戦
遅れました
「那覇司令部より命令文です!」
「貸せ」
唐突に届いた命令文。
関東反乱後、艦隊の保全を第一とする那覇司令より命令が来、その翌日には海軍省輸送部からも艦隊保全命令が届いた。
そのため、これまでずっと艦隊を動かさぬようにしてきたのだが、今になって与那国への派遣が命ぜられたのだ。
「何を今更…………そんなに出したいなら那覇から出せばよいものを……」
石垣護衛艦隊司令 衡臣研斎は、艦隊に出撃命令を出しつつ、呟いた。
6月2日 1030時
樺太型砕氷輸送護衛艦と同様に、「機関だけ最新」の淡路型護衛艦
石垣基地所属の
「石垣」「宮古」「波照間」「西表」「与那国」
の5隻は石垣を出港。
西表島の北側を回り、与那国島へ向け進んでいた。
「発光信号にて後続艦に通達後、艦隊進路3-1-5に変更。
「進路3-1-5」
以上」
「よーそろー」
曇り空の中、ガシャガシャと音をたてて信号機が動く。
「「リ・ヨ・ウ・カ・イ」
5番艦返答。全艦からの返答確認」
「よろしい。進路そのまま」
艦隊は巡航速度の20ノットで進んでいく。目的地の与那国北部 与那国港までは、大体3時間20分程度。清朝連合軍の艦艇にさえ気を付けていれば、特に問題は無いはずだ。
そして、何ら問題なく与那国島を視認距離に捉えた。
もう、既に港周辺から山へ向かって砲弾を撃ち込んでいる敵艦の様子がよく見える。
時折、山側からも砲撃が行われるが、砲弾が足りないのだろうか、そこまで強力な砲撃には見えない。
「距離7000より、各個に主砲砲撃開始。
八糎副砲は4000より砲撃を開始せよ」
「よーそろー。主砲7000、副砲4000より砲撃」
伝声管で艦全体に伝えられると、急に騒がしくなり、小銃を抱えた兵が艦内を走り回る。端から見れば、砲撃後に上陸するかのような感じだ。
「距離7000で砲撃を開始する!総員、準備にかかれ!」
「距離10000を切っているぞ!砲の確認急げ!」
「砲弾の補充よろし!射撃制御盤の確認は!?」
「射撃制御盤確認完了。異常無し!主砲動作も異常無し!」
一斉に確認作業が行われ、射撃準備が整っていく。
「全艦、砲の異常無し!主砲及び副砲の射撃準備よろし!」
「よろしい。進路そのまま。作戦開始と同時に汽笛鳴らせ」
「作戦開始と同時に汽笛鳴らし、よーそろ」
そして、数分後
清朝連合艦隊との距離が7000を切った。
「汽笛鳴らせ」
「汽笛鳴らせ~~」
先頭且つ旗艦の石垣が警笛を鳴らした。
それは辺り一面に響き渡り、それを聞いた各員が行動を開始した。
それは、敵艦攻撃ではなく艦内掌握とも言える行動だった。
「降伏ぅ?
どうせ騙し討ちか何かに違いない。無視だ無視!」
南西諸島では清朝連合軍の侵攻に慌ただしかったが、本土も慌ただしくなっていた。なんと、陸軍省に「幕府軍総司令代行」を名乗る者がやって来たためだ。
まさか、反乱軍がこんなに短期間で降伏するなど、陸海空軍はおろか、帝国政府ですら考えておらず、そのため陸軍大臣の長谷川は騙し討ちだと考えた。が、統戦部から政府へ伝えたところ中枢はそう考えなかったらしく、すぐさま御前会議の召集が伝えられ、数時間後に開始となった。
反乱軍側の話によると、早期終結と東日本のほぼ全ての軍部隊が参加することを前提とした戦闘計画であったため、まず仙台や庄内、館山空の離脱により、鎮圧と戦力低下、そして今日分かったことだが新潟方面は反乱軍にも政府軍にも属さない独立勢力として行動しているということだ。
まあ、どちらにしろ初期の時点で反乱軍の計画が崩壊していたのは事実だ。
結果、幕府軍(反乱軍)は大日本帝国政府に降伏。
帝国軍の管理下に置かれた。
そして南西諸島、石垣護衛艦隊の離脱。
「張 廷玉」を名乗る人物が航行中の艦隊を武力により制圧し、帝国から清朝連合軍へ寝返った。
石垣護衛艦隊が清朝連合軍についたため、南西諸島の制海権を一時的ながら帝国は失い、与那国への救援は遅れることとなった。
帝国の戦いは、続く
長い間でしたが、これにて終了です。
ありがとうございました!




