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関ヶ原迎撃ト攻勢

一戦隊が戦闘を始めた頃。

反乱軍第三爆撃隊が、沼田から飛騨高山方面を突破し、帝国政府軍関ヶ原陣地上空に侵入。


関ヶ原守備隊長兼第十騎兵師団(大垣機械化騎兵)師団長 

岡部 長敬(ながたか)中将は、到着済みの長浜歩兵師団・名古屋歩兵師団と共同で陣地の所々に防空網を構築していた。




陸軍歩兵・騎兵師団が有する新型対地対空用機銃「イ型二糎機銃」は、1師団に10丁。

砲兵はこれを有していないため、3師団。計30丁のみ。

これを2丁ずつ15陣地に分散配置していた。


これまでの訓練では、「それなり」の迎撃成績を挙げてきたが、やはり実戦となると話は違う。



「敵機来襲!敵機来襲!!北東の方向、距離4000、高度700!」


まず、敵機の発見が遅れる。



「もたもたするな!その弾薬はこっちだ!さっき言ったろ!」

「違う!それはこっちだ!早く持ってこい!」


そして、弾薬の輸送に手間取る。



「初弾装填良し!射撃用意完了!」

「なら今すぐ撃たんか!敵機はすぐそこぞ!!」


射撃用意完了とほぼ同時に敵機が上空にいる。



「敵機直上ぉおおお!!数、2!」

機銃班の見張り要員が叫ぶ。


「撃ち落とせぇ!!射撃を集中させよ!!」

「爆弾倉開きます!」

やはり、実戦で浮き足立っているのだろう。なかなか機銃弾が当たらない。

そして徐々に爆弾倉を開き始める反乱軍機。


「撃て撃て撃てぇ!!」

「やりました!敵機に命中弾!1機撃墜!」

二糎機銃弾後の直撃を受けた爆撃機が1機、煙を吹き出しながら、だんだんと落ちていく。

しかし、まだもう1機が近づいている。


「敵機爆弾投下ァ!!」

「退避ィィィィイイイ!!!」

爆弾倉から黒い物体がポロポロと落ち始めると、機銃員が一斉に退避を開始。

低高度の爆撃は極めて正確であり、ほぼ全弾が防空陣地に命中。

2丁の機銃とそれを囲む土壁や土嚢を吹き飛ばし、辺り一面に土と爆風を撒き散らす。






「中将閣下!!敵機5機以上が防空網を突破!本陣地に接近しております!」

本陣の見張り員が飛び込んで来た。

「閣下、こちらへ」

副司令の准将が、本陣後方の簡易壕へ案内しようと呼び掛ける。


しかし、それを片手で制すと立ち上がり、正面から外に出た。


外では対空迎撃戦闘が開始されていた。

爆撃を受けたであろう場所からはもうもうと黒煙が上がり、その直後には、対空機銃が命中した敵機が1機。爆弾か燃料タンクに直撃したのだろうか、一瞬で火の玉になって落ちていく。


右手では、イ型機銃の箱弾倉(20発)を抱えて走る弾薬員が見える。

迎撃前に最低20個分を機銃付近に持っていくことになってはいるが、突然の迎撃に追い付かなかったのだろう。ちらほらと同じように走る兵の姿が見える。


「閣下!ここは危険です。退避を」


そこに、偵察騎兵が1人。馬を走らせやってきた。

「東より新たな敵機が出現!数、およそ10!!」

「沼田は第三戦闘隊と爆撃隊の2隊ではないのか?何故、配備数以上の機体がある?」

ある意味、冷静さで准将に昇進したと言える彼。曽谷(そだに)は、これまたゆっくりと、落ち着いた声で偵察騎兵に問いかける。が、航空機数のことなど、一介の兵が知っているはずが無い。



『第五戦闘隊が樺太から出たというのは、あまりにも可能性が低い。

第四戦闘隊は脱出済み。そして館山に爆撃隊は無い。

他に爆撃隊があるのは神足(帝都)と長崎のみ。だな』


「……」

岡部は、無言のままだった。




結果としては、政府軍関ヶ原陣地の「対空陣地」は7割近くが破壊されたが、その他の砲兵陣地や防衛線等はこれといった打撃を受けることは無かった。


それでも、死者15名。負傷8名が出ている。


そして、反乱軍戦闘隊の通信妨害。爆撃隊の集中運用。そして謎の増援機(その後分かったことだが、反乱軍が占領した尾張小牧の爆撃演習場に駐機していた第四爆撃隊編成予定機を徴発し、関ヶ原に投入した)といった反乱軍の攻勢に対し、後手後手になっている帝国政府軍。


一方的な攻撃を受け、士気が下がり気味の政府軍は一大攻勢を計画。


政府側陸軍の内、北方函館の52・53と樺太の71・72・73・74(国後択捉と釧路等の蝦夷地内部)、南西諸島以外の30個歩兵師団と10個騎兵師団。20個砲兵師団(1師団96門)を総動員。

現在前線となっている四日市・関ヶ原・吉崎御坊・芦原の4方向より侵攻し、海軍艦と共同で反乱軍を撃滅する。


海軍は長崎・呉の全艦と、舞鶴の大半の艦を繰り出し日本海側と太平洋側(寧海)の両方より陸軍と共同で侵攻する。


その後、反乱軍が内陸に退却した後は、陸軍と航空軍第一戦闘隊・爆撃隊と第二戦闘隊が反乱軍航空隊を撃滅。その勢いでもって、一気に北上し、反乱軍を壊滅させる。

 

また、まだ連絡していないため確定では無いが、北方守備軍・艦隊・第五戦闘隊が南進し、南北挟撃による反乱軍壊滅も予定してある。


と、言いつつも今すぐ動員出来るはずもなく、実際に作戦として実施可能なのは6月の中頃だ。

海軍こそ、翌日より動き、反乱軍に対する海上封鎖を実行しているが、編成と移動に時間がかかる陸軍は、攻勢まで比較的近場の部隊で守りきらなければならない。

関ヶ原と四日市は、比較的防衛線の構築が進んでいる方だが、芦原と吉崎御坊は大隊規模の部隊が居るだけで、これといって防衛線になっているという訳ではない。

同様に、越前勝山へも警戒のために部隊が出ているが、敵が本腰を入れて攻めてきたらば、間も無く陥落するだろう。


そして、退却する暇も無く、北陸・東海に到達した敵軍によって半包囲され、政府側飛び地になっている飛騨高山と信州松本。現在は第12自動化歩兵師団(高山)が高山の西側にある清見と北西の古川、南の一ノ宮に1個大隊ずつを配置し、残りの部隊の大半を機動守備隊として高山に待機。一部は信州松本と越前勝山への連絡部隊として動かしている。

が、未だ連隊要員が勝山に到着したという知らせは無い。


また、松本の第45歩兵師団は現在連絡のとれない諏訪・木曽・長野方面に部隊を出し、警戒にあたっている。    


この陸の孤島と化した高山、松本は食料・各種資源ともに心許なく、このままの半包囲が続くと2・3ヶ月後には資源系が、また半年後には食料のほとんどが、仮に今から配給制にしても枯渇に近い状態になる。と言う連絡が最後に入ったのが、昨日の夕方だ。


その間も反乱軍は進んでいるであろうし、飛越国境と南の岐阜方面から同時に攻撃されたらば、さすがに耐えきれず、押し負けるだろう。


松本も同様に、諏訪・木曽と長野から来た場合、押さえきれるとは思えない。


それでも、守りやすく攻めにくい山岳地帯の飛騨高山。

諏訪・木曽・長野の3方向を押さえる松本。


この2つを落とされるのはまずい。


しかし、飛び地故ににすぐ派遣することも出来ない。


これならば名古屋から撤退すべきでは無かったとの意見も出ているが、関ヶ原を超えて軍を送り込むのに時間がかかる以上、2方面から攻められていた名古屋に留まり続けては、師団の壊滅も有り得た。




そして、この飛び地問題で陸軍は放置派と援軍派遣派の2つに分かれて、揉めた。

統戦部は防衛線構築後、攻勢の予定だったため、飛び地への援軍派遣に反対。

仮に、派遣するとしても、反乱軍に制圧されたであろう岐阜市のすぐ隣。本巣を通り郡上から高山へ抜けるか、越前大野から入るかしかない。どちらにせよ距離が長く、道も良くない。


しかし結局のところ、攻勢時の前線として活用すべく、越前大野から高山方面への援軍派遣を「陸軍省」が決定。

海空の支援無しで実行することになった。


そして今回派遣されるのは、姫路に屯する陸軍第3自動化歩兵師団に決まった。


先ず、自動化の名になっているトラック輸送(1個連隊分)と鉄道輸送で越前大野まで移動。


トラックがそのまま高山まで向かうのと同時に、1個連隊が徒歩で九頭竜川上流の越前和泉村(現 九頭竜湖駅付近)まで移動し、トラックは和泉村と高山を往復。

トラックが、和泉と高山の間を往復するのにほぼ半日かかるので、往復にかかる時間は約1日。

よって、1日おきに大野から和泉へと兵が移動する計算だ。


その後、2日ほど休息を取った後、再度トラックが大野まで戻り、食料や燃料を積み込み高山へと戻る。


大体だが、兵員輸送3.5往復、貨物輸送2.5往復と言ったところか。


統戦部が未承認のため、これにかかる各種費用と燃料等はは陸軍持ちだ。

しかし、一般市民への食料輸送も実施するため、支援金として政府から少なくない金が支払われている。


この時点で、収支は+のはずだ。







反乱から数日、5月が終わり、6月になった。

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