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関ヶ原陣地

5月29日

1100時


反乱軍部隊が愛知県豊橋を占領後、愛知県豊田市方面に侵攻。


同時に渥美半島伊良湖岬を占領した反乱軍部隊が、愛知県営船舶の旅客船を徴発。

徴発した船に乗り込んだ300の兵が知多半島河和に上陸。

その後、同様に徴発した漁船等の船舶をフル動員させ、兵が次々知多半島に送り込まれてくる。



1300時


武豊町・豊田市占領の報を受けた帝国政府は、陸軍名古屋基地の放棄を決定。第24自動化歩兵師団(元24歩兵師団)と第8砲兵師団を美濃大垣まで後退させ、大垣の部隊と合流し次第、関ヶ原に陣地を形成するよう命じ、幕府軍を迎え撃つべく動き始めた。

反乱軍に情報が漏れぬよう、慎重に撤退準備をしていたが、そこに反乱軍沼田航空基地所属、第三戦闘隊の13機全機が飛来。名古屋上空を飛行偵察し、10分程で戻っていった。











1500時

「全車前進!!突入せよ!!!」


山形より遥々やって来た反乱軍第8騎兵師団(自動化済)のトラック、40台が爆薬によって吹き飛ばされた名古屋基地正門を突破。

続々と基地内部へ入っていく。


基地内部は撤退時に火がつけられており、兵舎の燃え残りなどから黒い煙が立ち上り、所々で視界を遮っている。


「こちら第1小隊!司令室と通信室を制圧!」

「第2小隊!武器庫に少量ながら武器有り!」

その中でも反乱軍は基地内の制圧を進め、突入から10分後には基地の要所をすべて押さえることに成功した。

その頃、反乱軍第44歩兵師団(前橋)より第700連隊が鉄道輸送により碓氷峠を突破し、軽井沢・佐久に軍を進めていた。









1600時

長野県佐久市


「おい、関東の軍隊が反乱起こしたって本当か?」

佐久市中心部の商店街。その中のある茶店で、背の高い男と低い男の2人のが話している。

「本当さ。それに、噂だが佐久に侵攻するとかしないとか……」

「おいおい………………もし、本当に来たらどうするつもりだ?」

「当然潰すに決まってんだろ!誰があんな田舎者に街を明け渡すんだ!」

背の小さい方が答えた。

「……それなら、どうする?他に集めるか?」

「それなら、市長がいい。市長もこの話に乗るだろうよ」

「分かった。そうと決まればさっさと行くか」

背の高い方の男がそう言うと、2人はさっさと会計を済ませ、店を出ていった。






1800時

陸軍省

「報告!名古屋歩兵砲兵師団は一宮市内に到着!現在、名古屋歩兵師団は大垣機械化騎兵のトラックを用い、高速移動中!」

「近江長浜歩兵師団は関ヶ原への移動を開始!関ヶ原到着予定は2200!砲兵師団の移動は遅れており、到着予定は翌30日 0500!」


陸軍省に置かれた統合戦闘司令部(統戦部)には、陸海空各軍からの情報は勿論、日本各地に潜んでいる諜報員などから伝えられる反乱軍の動向や、諸都市の状況などが直接集まってくる。

当然、それは司令部上層部に伝えられ、その内容を踏まえて作戦が立てられ、その作戦が各所に伝えられ、始めて部隊が動く。


「航空軍に命令!翌30日 0700より戦闘機を名古屋上空に派遣し、敵部隊の偵察に向かわせよ!!」

「復唱!航空軍に命令!翌30日 0700より戦闘機を名古屋上空に派遣し、敵部隊の偵察に向かわせよ!!」

「復唱よしっ!行け!」

「海軍省より伝令文!秘匿甲です!」

「秘匿甲はこっちだ!隣の小会議室に来い!」

「富山・新潟の諜報員との連絡途絶!軍部隊との連絡も取れません!!」

「それは諜報部に回せ!諜報部はこの上の階や!」


ひっきりなしに伝令と命令が飛び交う陸軍省第1大会議室。

統戦部に詰める軍上層部関係者は

陸軍中将 山田 乙三(おとぞう)

海軍中将 山下 源太郎(げんたろう)

航空軍特務少将(実質的中将) 小林 照彦(てるひこ)


この3人が、統戦部から陸海空各省に伝令を出す。

また、政府や役所関係へは内務省から出向している数人を介して伝えられる。



「復唱が違う!越前大野には置かず、勝山だ!」

命令の復唱を間違えた兵士に対する怒鳴り声。


「秘匿乙はこっちじゃない!ここの反対の事務室だ!」

こっちは伝令文を間違えて持ってきた兵士に対する怒鳴り声。


他にも色々な声が響き渡る。

それは、まだ終わりそうもない。






時は少し戻り

1720時

国鉄佐久駅


「こんな時間に貨物なんぞおったか?」

「高崎から臨時貨物が入るとかなんとかあったが………こんな長いの意味あるかねぇ…………貨車もえろう大きいし、客車の改造と違うか?あれ」

信越本線の途中駅、佐久。

行き先こそ長野になっていたが、わざわざ佐久に停まる必要があるとは思えない。

「発車は?」

「6時やと。40分もなにするんだか…………」

駅務室の中で、茶を飲みながらゆっくりと会話を続ける2人の男。

毎時2~3本しか走らない信越本線。数分前に長野行きが出た後の駅は、人もおらずゆっくりとした空気が漂っている。

そして、その中に突然現れる15両の貨物。この空気の中では明らかに違和感だ。


「…………どうせ長時間交換の一種やろ。ほっとけや」

「そや…………なんや?あいつら便所でも行くんか?」

先頭の機関車から、2人の男が降り立つ。

長時間運転する機関士らが用を足しに、途中駅で降りるのはよくあることだ。が、その2人からはなにか違う雰囲気を感じる。

「…………タバコでも吸いたいんと違うか?」

「そんなもんか?何かが違う……気がする…………」


1728時

「…………便所やったな」

「だな。タバコも吸いそうじゃねえし、気のせいか」

「ま、放っとけや。40分にゃ下りの軽井沢が来るぞ。もちっとしたら改札に出ねえとな」


(首都の位置的に上り下りが逆になってます。)


「んだな。…………ところでよ。マッチねえか?なんか落としたみたいでよ」

タバコをくわえ、ゴソゴソとポッケに手を突っ込みながら、隣の同僚に聞く。

「マッチ落としたぁ?お前よく落とすよな、ほんと」

そう言いつつ、マッチを取りだし、火をつける。

「すまねえな」

タバコを火に近づけながら呟く。

「別に構わんさ」

タバコに火がついたのを確認すると、サッと火を消す。

「………………ハァーー」

「ちゃんと灰皿使えよ」

「分かってら……っと!」

机の端の灰皿に手を伸ばす。

「…………後で何か食うか……」

「タバコ吸い終わってから言えよ」

「………………」

「んじゃ、終わったら飲みにいっか。たまだしな」

「おっ!嬉しいねぇ「ピィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!」っ!?」

突然響き渡る警笛。

「あのクソ電機(電機機関車)なにしてやがんだ?

おいコラ!うるせえじゃねえか!」

「どうせミスか何かやろ。見逃したれや」

警笛に続いて、また人工音が響く。

ガラガラという音。貨車の扉が開く音だ。


扉が開いて数秒

「!!逃げっぞ!!」

「応よ!まったくなんて日なんや今日は!」

突然走り出す2人。 

2人が駅務室を飛び出し、駅舎を走り抜ける頃、ホームにいるのは軍人だけだった。



1735時

反乱軍。佐久駅占拠




「申し訳ありません!!駅員2人に逃げられました!」

「構わん。それより、進軍準備を急がせろ。3分後には出るぞ」

次々と車両から兵が出、整列していく。


「進軍準備完了!」

「目的地は佐久市役所及び佐久警察署!駅前通で分離する。よいな?では……進め!」


2個大隊 1200人が、行進を始めた。





「関東の軍か?」

「佐久は反乱軍に取られるんか?」

駅前商店街では、多くの商店街関係者や買い物客、周辺住民が建物の隠れながらこっそりと反乱軍の行進を見ている。


「反乱軍は佐久から出てけ!」

突然、どこからか石が投げられる。

「んだ!出てけ!二度と()な!!」

「帰れ帰れ!!」

事前に準備されていたのだろう。小さいものは直径3cm。大きいものはこぶし大まで。様々な石が、反乱軍に投げつけられる。


「おらっ!撃てるもんなら撃ってみやがれ!!」

「馬鹿者!撃ってはならんぞ!!」

撃ってみろと囃し立てる群衆。その言葉に銃を構える兵士。その兵士を止めるべく隊長格の士官が声を張り上げる。

必死になる彼らも、投石の影に隠れる者たちには気づけなかった。

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