大鵜取防衛戦①
5月7日 1500時
「総員、隊長に…………敬礼っ!!」
ザッ!!
「………………直れぇ!!」
「73師290連隊の貴様らに聞く!!我々が為すべきことは何だ!!」
「「「「「切る!斬る!Kill!!」」」」」
「我々の求めるものは何だ!!!」
「「「「「酒!金!女!!」」」」」
「うむ!総員!!(陣地設営に)かかれ~~!!!」
「「「「「応「プ~~~~~~~~~~~!!!」っ!!!」」」」」
「哨戒班が奇襲を受け、2人死亡!敵は敷香方面より接近!距離、1000。数、7000!陣地を包囲するように接近中!」
「貴様らァ!!敵だ!!我々の為すべきことを思い出せ!!」
「「「「「……………………………………」」」」」
「思い出したな?なら……………………」
そう言って、守備隊隊長柳生宗冬大佐は軍刀を抜き放った。
「総員、着剣!俺に続けぇ!!敵討ちじゃぁあああ!!!」
「「「「「うおぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!!」」」」」
「何だ?今の音は?」
「さあ?」
「おい。無駄口叩くな。敵陣地は目の前だぞ。」
「「Да!(ダー!)」」
攻略指揮官たる中佐の言葉によって黙らされる兵士。
「隊長。前方より何かが接近します。」
「日本軍か。なかなか早い動きだが、森の中なら此方が有利だ。
総員、戦闘用意!Японская армия(ヤポンスカヤ アーミャー)を蹴散らせ!」
「「「「Да!」」」」
「前方、森の中に敵!」
宗冬は軍刀を抜き払い、頭上に掲げ、怒鳴った。
「俺に続けぇええええ!!!突撃ぃぃいいいいいい!!!」
「「「「「うおぉぉぉぉおおおおお!!!!」」」」」
「敵、突撃してきます!!」
「戦闘開始だ!突撃!」
「「「「урааааааа(ウラー)!!」」」」
ロシア兵も次々と走り始める。
「死ねやあ!!」
「オラッ!失せろ!!」
ズシャ……ズシャァ…………
「貴様らぁ!血が、血が足りんぞ!!もっと、もっと斬らんかぁあああ!!」
「「「「「応っ!!!!!」」」」」
宗冬の言葉に答え、大地を赤く染めるべく、次々に斬りかかる日本兵。
「2人の敵!死ね!!」
日本兵が銃剣を振るう。
「урааа!」
ロシア兵がサーベルを突き刺す。
「おりゃあ!」
ズシャ…………
銃剣の横薙ぎを喰らったロシア兵が崩れ落ちる。
「よし!つ……グハッ…………」
別のロシア兵が日本兵の胸にサーベルを突き立てる。
森の中を血肉が舞い、怒号が響く。葉が、幹が赤に染められ、地にサーベルが突き刺さる。
「まだだ!まだやるぞ貴様らぁ!!」
居合の要領で軍刀を振るう守備隊長、柳生宗冬。
軍刀が閃けば敵の首が飛び、薙ぎ払えば臓物がばらまかれる。
「大佐に遅れをとるな!進め!!」
「少将!これ以上の犠牲は無駄です!撤退を!!」
「………………………………」
「兵は半分も残っておりません!ご決断を!!!」
「………………撤退だ………………撤退命令だ!全軍、ポロナイスクまで退却!急げ!!」
「退却だ!退却せよ!」
「前線に通達!撤退命令発令!ポロナイスクまで退却!!」
「はっ!」
ジャキン!!
軍刀とサーベルが交差し、火花が散る。
「お前……やるじゃねえか。」
「………………………………」
「だんまりってか?確かにロシア語は知らんが……………………まぁいい
死ね。」
ガキン!!
「ちっ。誰だ!………………って新手か…………仕方ない。2人とも死んでもらうか…………」
宗冬の目が剣士の目に変わる。
「何をしに来た!」
「撤退命令です!中佐!全軍、ポロナイスクまで退却とのことです!!」
「そうか…………退け!」
ギャキン!!
「話の途中に割り込むとは…………これだから猿は困る…………」
「中佐!」
「分かってるさ。……………………今だ!走れ!!」
「Да!!」
「あっ!てめぇら逃げる気か!!待て!待てぇええ!!!」
「ちょ、大佐!落ち着いて!!」
「うるさい!!奴を殺るのは俺だ!!」
「だから落ち着いてくださいって!!敵が退却してるんです!このまま突っても死ぬだけですよ!!」
「……………………クソッタレがァ!!!」
「軍刀を突き刺さないでくださいよ……いくら地面でも大佐が刺すと抜けなくなるんですから…………」
「んなもん分かってる!!………………あの野郎……次会ったら、必ず殺ってやる……………………必ずだ!!!」
「はいはい。分かってますから大佐も穴掘ってください。シャベルもありますから。」
「か~~っ!!野郎~~!!!」
「ちょ、早い!早すぎ!!!掘るの早すぎ!!ってか、掘るのここじゃなくてあっちです!!」
「そんなのは、先に言わんかぁぁあああ!!」
「………………まぁ、いいか。」
その後、森の中で謎の雄叫びをあげる動物がいるとかいないとかで、賭けになったとかならなかったとか………………
1600時
松前県函館市
大日本帝国陸軍 北方守備軍総司令部 司令執務室
ジリリリリリリン!!ジリリ
ガチャ
「辻だ。」
「おお!俺だ!!」
「………………切るぞ。」
「斬るぞ!」
「で、何だ。」
「さっきな、ロシア軍が攻めてきたんだ。で、追い返した。」
「それはもっと早く言わんか!!!」
立ち上がった瞬間、重厚な椅子が倒れ、警備の兵が扉を叩く。
「いや、大丈夫だ。」
「なんだ?茶でもこぼしたか?」
「貴様………………」
全く…………あいつの笑い声は耳に残るから困る………………
「まぁ、俺の笑い声は置いといてだな。今回攻めてきたのは6000とかそんなもんだ。で、敵の半分は殺った。」
「被害は。」
「32人死んだ。内、2人は哨戒中に襲われた。」
「あれほど陣地を有効活用しろと言っただろ!!!お前のことだ、いきなり突撃したんだろ!!アアン!?」
「おっ。よく分かってる!」
「「分かってる!」じゃないわアホが!!」
「仕方ないだろ。相手がサーベルしか持ってねぇんだから。」
「ったく…………………………他は!!」
「そうキリキリするなって…………」
誰のせいだと思ってる………………
「一応追い返したが、次来たら終わりそうなんだよ。で、増援が欲しい。最低1個連隊。」
「取りすぎだバカ。1個大隊でどうにかしろ。それ以上は編成が終わり次第だ。いいな。」
「はいよ。りょーかい。」
「マジでぶっ殺すぞテメェ……………………」
ガチャン!
「ハァハァハァ………………………………椅子、戻すか………………」
勝手に切りやがって……あいつ、次会ったら頭陥没させてやろうか……………………




