~北海道へ ⑤~
翌日。
「それでは、第「もうその挨拶は良かろう。早く本題に入らんか。」」
「カメヌリ。失礼じゃぞ。」
「……………………」
「え~。それでは、第9回 日ア条約交渉会議を始めさせていただきます。
それでは、最初の議題、国境の制定に入らせていただきます。」
そして、5分後…………
「我々、日本政府は、先んじて領有していた小樽及び、内浦湾の半分までの領有を要求します。」
「それは出来ぬ。我々はこれ以上譲歩することはない。」
「我々もこれ以外は譲れません。」
「もう、オニウシまでを領有しているのだから良いだろう?」
「元はと言うと、貴様らがここに侵入してきたのが原因であろう!!」
「シャクシャイン首長。」
「どうした。」
「この地図の、え~、カヤベヌプリですか?」
「そうだが。」
「ここの麓の一番とがった部分から左に線を引いて、南側と小樽が日本領、北側がアイヌ領というように国境を制定してはいかがでしょう?このまま、不毛な話し合いを続けるよりはましだとおもいますが。」
「ふむ……良いかな?」
「問題ないかと。」
「同じく。」
「同じく。」
「仰せのままに。」
「カメヌリ。お主はどうじゃ?」
「………………良いだろう。賛成する。」
「我々の意志は決まった。そっちはどうじゃ?」
「これで構わんか?」
「「「「「はっ」」」」」
「問題ありません。」
「そうか。なら、決定じゃな。」
「ええ。」
「それでは、次の議題に入ります。
辻殿。」
「はい。それでは、皆様。地図をご覧ください。そして、シャクシャイン首長。」
「なんじゃ?」
「この中から、あなた方の支配地域を線で囲ってください。」
「分かった。………………………………こんなもんかの。」
囲まれた線を見ると、先程決まった国境から北の蝦夷地全体と、奥尻島・焼尻島・天売島・利尻島・樺太の約南半分・択捉島以南を支配しているらしい。
「なるほど…………なかなか広大ですね。
これならば…………この島は?」
「ああ、ここか…………
数年前、大陸から来たロシア人とやらに奪われてしまったよ。まだ、仲間は生き残っとるとは思うんじゃがな……。」
「そうでしたか…………
では、樺太・択捉島・稚内・小樽・根室に海軍基地と陸軍基地を、釧路・網走に陸軍。国後と利尻に警備隊を配備する。
以上でいかがです?」
「食料は?」
「内地から輸送します。」
「輸送だと?こんな北の果てにか?」
「ええ。勿論、ある程度は生産もしますが、その量は微々たるものになりますので。」
「船か?」
「船です。」
「内地からここまで輸送するのにどれだけ手間がかかるか。分かっておるのだろうな!!」
海軍大臣が怒鳴る。
「はい。大変な手間になりますね。」
「ならば!」
「皆様。ご存じですか?
樺太には資源が眠っていることを。」
「具体的には?少量だと話にならんぞ!」
「主な資源は海洋資源。その他にも、石油などが採掘可能です。」
「石油か…………」
あれだけ怒鳴っていた曽根も、石油が絡んでくるとなると、静かになった。
「どうです?内地から輸送する価値はあると思われますが?」
「ちょっと待て。貴様らの支援など無くとも、我々は防衛できる。よって、支援など不要だ!!」
「…………ならば、ロシアが択捉島に攻め寄せた時は、どのように防衛なさるおつもりですか?カメヌリ殿。」
「当然。敵を内陸に引き込み、地形を利用し、叩くに決まっておろう。」
「もし、海上が包囲され、孤立してしまった場合は?」
「闇に乗じて上陸だな。」
「…………なるほど。」
「分かったか?これで支援はふ「甘いですね。」なんだとっ!」
「甘いと言ったのです。闇に乗じて上陸?上陸可能な土地を奪われたら終わりですよ?」
「ならば……貴様らはどうするのだ!」
「まずは、海軍艦艇を用いて海上で迎撃、上陸された場合は、砲撃により敵を減らした上で、歩兵の突撃で敵を撃滅します。」
「くっ…………しかしだ「カメヌリッ!!」!!!」
「もう、よせ。我々の戦士らで守ることが不可能な以上、頼らざるおえん。」
「なっ…………これ以上譲歩することは無いと言っていたではないか!!」
「それでもだ!!
オニウシ。我々の戦士らで択捉は守れるか?」
「………………不可能です。あれだけの数、そして我々よりも遠距離から攻撃できる相手に真っ向から打ち勝つのは…………」
「ならば、これしかなかろう。
これ以上、同胞を見捨てる訳にはいかん。」
「では………………」
「その通りじゃ。辻と言ったな?
よろしく頼む。」
「はっ。アイヌの方々には、指の一本触れさせません!!」
「では、詳細は明日にでも。」
「そうじゃな。」
さて、無事に決まったはいいが、カメヌリ氏との関係がどんどん悪化してる気がする…………




