~北海道へ ③~
特にやることがないまま、夜になった。
いつも通り夕食を食べ終わり、部屋に戻っている途中、通路で話し声が聞こえた。
「……はどうだ?」
「あと、30分後です。」
「……か。………に知られては無いだろうな?」
「大丈夫です。」
「分かった。なら、移動しよう。」
『誰だ?何か聞き覚えがあるが………………』
すると、こちらに向かって来る音がしたので、急いで近くのトイレに飛び込んだ。
カツカツカツカツ…………
通り過ぎた事を確認して扉をゆっくりと開くと、
そこには誰もいなかった。
「失礼する。」
ここは、駆逐艦「松」艦橋。
と、いっても所詮300トン級駆逐艦なので、艦橋と言ってもそこまで大きい訳じゃない。甲板の上に小さな櫓を載っけたような感じだ。
「これは、陛下。如何なさいましたか?」
「いや。特に用は無いんだが、何やら事が起きそうなんでな。」
「「…………………………」」
「……ご覧になりますか?」
「そのために、ちょうどこの時間に来たんだよ。」
「聞いておられたんで?」
「正確には、「聞こえた」だがな。」
「艦長。時間です。」
「うむ。
教練射撃よぉーい!!
総員、配置に着け~~!!」
「教練射撃よぉーい!!!」
カンカンカンカンカンと、夜の太平洋に鐘の音が鳴り響く。
艦内が急に騒がしくなり、怒声が飛び交う。
午後9時40分
発令から4分。総員、配置に着いたとの連絡が来た。
「時間は?」
「4分です。」
「上々だ。
見張り!標的艦は見えるか?」
「…………こちら見張り。艦影らしきものは見えますが、標的艦かどうかは…………」
「そうか。
なら、新兵器の力を見てみることにしよう。
探照灯、起動!!」
「探照灯。起動!!」
「了解!探照灯起動します!!」
バッ!!
「うおっ!!
こんな明るいなんて聞いてないぞ!!
クソッ!!呉戻ったら改装班に文句いってやる。こんな艦橋の近くに作るバカがいるか!!前部主砲が見えんじゃないか!!」
「標的艦、視認!!
距離、7000!」
「照準合わせ!!」
「照準よし!!」
「撃てっ!!」
「次弾装填!」
「着弾まで17秒!!
………………………………………………だんちゃ~~く、今!!」
「近弾!上2、に調整!!」
「調整!上2!!」
「調整完了!!」
「撃てっ!!」
艦橋
「次で何射目だ?」
「8射目です。」
「砲は?」
「主砲のみですが。」
「いや、副砲だ。」
「射程外です。」
「そうか…………しかし、なかなか当たらんものだな……」
「そもそも見えてないですがね。」
「それを言うな…………」
「…………………………だんちゃ~~く、今!!」
「命中!!」
「全主砲、照準合わせ!!」
「…………後部主砲照準よし!!」
「撃てっ!!」
「着弾まで16秒!!」
「艦長!命中弾です!!!」
「そうか!やっと当たったか!」
「次より斉射に移ります。」
「分かった。」
それにしても、眩しい…………目が眩む…………
「………………だんちゃ~~く、今!!」
ゴワーーン!!
「標的艦、炎上!!」
「次!!
撃てっ!!」
そのまま2斉射すると
「標的艦、撃沈!!撃沈です!!!」
「「「よっしゃあ!!」」」
「艦長!撃沈です!!」
「そうか!!よし、とっとと探照灯を消せ!!」
「了解!」
ふ~。これで眩しくなくな………………次は周りが暗くて見えない…………
「よし。教練射撃終了!!」
「教練射撃終了!!」
さて、ぼちぼち部屋に戻ることにしよう。
「艦長。良いものを見せてもらった。ありがとう。」
「はっ。ありがとうございます!!兵達も喜ぶことでしょう。」
「それでは、部屋に戻らせてもらおう。」
「では、案内を……」
「いや、大丈夫だ。それでは。」
そして、俺は艦橋から部屋へと戻った。
時間は午後10時30分を過ぎた頃、そろそろ寝ることにしよう。




