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プロローグ

 20世紀。

人口の増加により、人々は海や宇宙に新たな住処を求めた。

各国は、人工衛星、宇宙ロケット、宇宙望遠鏡、深海探査船などを作り出し、宇宙の果てや海の底を知るための機器を作り出し、次々版図を広げていく、と思われていた。


 これらの技術は東西冷戦の代理戦争というべきものであり、双方の技術は直接戦闘のできない時代にあって、砲弾の代わりでもあったのだろう。数多くの軌道衛星が打ち上げられ、太陽系の他天体への進出によって完全なる闇はなくなるものだと思われていた。


 しかし、月面着陸が成功し、人工衛星が軌道上を回り始めたにも関わらず、なぜか年々成功率が著しく落ちていった。そして、20世紀が終わる頃には、大きな事故や膨れ上がった予算に対する民間からの反発により、深海及び、宇宙開発はほぼ終結を迎えていた。

 先進国の人口増加率が減っていき、世界人口が減少の方向に向かっていたのも原因なのかもしれない。

 

そして、地上から見た闇は、闇のままで残されていた。


 21世紀が始まり、約四半世紀が過ぎた頃。

地上から観測できない月の裏側の闇の中から巨大な建造物が、這い出てきた。

月に向かって一直線に。

「この星には宇宙に出るすべはなかったのではないか?」

宙を浮く街のような飛行物体の中心にある塔の中で、巨大な影が呟くように問いかける。

「そのはずです。このようなものを打ち上げる技術は、われわれの草が潰しきったはずです」

その影の前に跪く3つの影のひとつ、ドーム上の頭に円筒状の胴体、体の周囲に触手のようなものを生やしたものが、静かに答える。

「だが、この眼の前にある残骸はどう説明する?」

上半身が異常に大きないびつな姿の影が楽しそうに呟く。

もうひとつ、はっきりと形がわからない影も、声なく同意の意思を示す。

「わたしが使った草どもは、優秀とは言えぬ連中が多いゆえに情報の伝達がうまく行っていない可能性があります」

円筒の体を持った影が、触手の動きに僅かな焦りを見せつつ弁明する。

「まぁよい、こちらには傷一つなかったのだから」

この話は打ち切りである、というふうに奥の巨大な影が楽しそうに呟く。


暗闇より現れた、巨大な街の周囲に戦艦のようなものの残骸が浮かんでいる。

宙を行く街の被害が見当たらないことを鑑みるに、一方的な戦闘であったらしい。


 金属の破片の中を街が音もなく進んでいき、月のクレーターの一つにゆったりと着陸した。

月の裏側にできた侵略者たちの前線基地である。


「さて、この星に対する最終作戦を開始する。

各々、姿を現せ」


円筒状の影は、大きい白衣をまとい、長髪を耳の上で2つに結んだ幼い少女に。

上半身の大きな影は、長身かつたくましい体格をしたビキニアーマーをまとった女性に。

不定形の影は中肉中背の軍服のようなかっちりした服をまとった、ショートカットの女性に。


 そして、それらをまとめる影は豪奢なソファに体を預けた、中世貴族のような華やかなドレスをまとった、巨大な女性へと姿を変えた。


「彼女」らが地上の日本に侵攻を開始して一ヶ月。


日本から、あらゆる軍事施設は姿を消した。

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