その名は、鍬形ハルカ
その日は、大雨のときだった。
女子寮からまっすぐ学園に向かう途中に川で溺れかけの子猫がいた。
その飼い主は、一生懸命にその子を助けようとしていた。
その様子を見ていたリューナは、果敢に助けようと川に潜ろうとしたが、思っていた以上に流れが早くリューナは、躊躇してしまった。
その時、飼い主の猫が、流れてしまったが、川を走る一人の女性が現れ子猫を救って見せた。
「問題ない。どんな命も大切なものだ。基本だが、大切な事だ」そう言い残して、その女性は、どこかに瞬時に消え去った。
リューナは、ただならないものを謎の女性に感じた。
次の日の朝、リューナは、ずっと謎の女性の事ばかり考えていた。
「この学園の生徒ではないし、何者なんだろうか?」とその時、アルグランドが、リューナにちょっかいをかけてきた。
「どうしたんだ?リューナ、昨日から変だぞ」
「実技練習の時だってのにボーとしたりしてよ」
「らしくないぞ」リューナをアルグランドは心配した。
「おいお前ら席につけー。今日は転校生を紹介する」担任のフレデリック先生が、真面目な表情で生徒達に言った。
「入れ」 そうフレデリック先生が言うといつしかの雨の時に見た女性がリューナの視界に入った。
思わず、大声を上げるところだったが、頑張ってリューナは抑えた。
「Sクラスの生徒になる鍬形ハルカだ。家庭の事情でここに転入してきた。では、ハルカさん。皆に挨拶を」フレデリック先生が、そう言うとハルカは、素っ気ない感じで自己紹介をした。
「本当は名乗るものではないが、先生の手前挨拶させて頂く。鍬形ハルカだ。馴れ合う気はないとだけ言っておく以上だ」可愛げない女子だリューナは、そう思った。
「席は、リューナの隣が空いてるからそこに座りなさい」フレデリック先生がそう言うとゆっくりとリューナにハルカは近づいてきて席に座ったかと思ったらいきなり、リューナの席とくっつけた。
その事により周りは、ハルカはリューナにデレたと思いこみ「きゃー」と女子達は、黄色い声を上げた。
周りは、ハルカとリューナの仲に百合を想像したからだ。
「なんのつもりだ。一体」リューナは、驚いた。
「子猫を助けようとして川に飛び込もうとしてたが、躊躇した子だろう?君。あの時の君が可愛く見えてしょうがなかった。お前だけは特別だ仲良くしてやろう」ハルカは、リューナに耳打ちしてきた。
「ま、なんだ。リューナ、面倒をよろしく頼むよ?ではホームルームは、終わりだ」フレデリック先生は、立ち去ってしまった。
「ところでだ?好きな子はいるのかい?君は」ハルカは、リューナの顎に手を当て自分の方に向かせた。




