懐かしい匂い
刹那が龍牙と相討ちになり刹那が消えた世界では、元譲は、食事も碌に取らない日が何日も続いていた。
甄姫が元譲を慰めようと必死になったが、彼女は、その手を払い除けた。
「刹那がいない世界なんて・・・・なぜ、帰って来なかったの?私が悪かったの?アーマードガールズを作ってしまったばかりにこんなことに・・・・」元譲の目に悲しみから来る憎しみの炎が灯った。
「それは違いますわ!」甄姫は、怒鳴った。
「誰にも想定外の出来事は、あります!良くも悪くも、刹那と過ごした時間がたくさんあるからそう思うのは、貴女が刹那が一番好きだったからです!なら、刹那の意思は、貴方が今の状態を望んでいると思いますか?私は、まだあの刹那がどこかで生きてると思います!あの刹那が、ただで死ぬとは到底思えないです。別世界にいるのではないでしょうか?そして、そこで必死になって戦っている。私はなんとなくですけど、そう思うのです」甄姫は、元譲に熱く語った。
「甄姫。そうだよね。あの子は、一日でも早く平和にしたくて、他のアーマードガールズと戦ったもんね。でも、刹那は、壊された。不条理だ。この世界は、残酷すぎる」元譲の目には、力がなかった。
「貴女は!貴女は、刹那の気持ちを無にする気ですか?」甄姫は、元譲に平手打ちをした。
「刹那も、貴女と過ごす時間が好きだった。それは、貴女も同じ、それは貴女達見てればわかるだけど、今の貴女は、甘ったれなんですよ!次々と壊れていった他の機体達に失礼な発言ですよ!その発言は、私が許さない!貴女は!自分の今するべき行動を投げ出そうしてる!許さない!この甘ったれが!」再び元譲に甄姫の平手打ちが飛んできた。
「甄姫、教えてよ!今出来ることって何?こんな私が出来ることって何?答えてよ!」元譲は、怒鳴った。
「黒い元譲は、空間に穴を開けて現れた。おそらく、時空間の類そこにヒントはあるのでは?それを解析し、私達で刹那に会いに行くってのはどう?いかにも貴女の好きそうな話ではありませんか?」甄姫が、発した一言に元譲の周りにシスカ達が集まった。
「行きましょう!貴女なら出来るよ私達も協力する」シスカは、元譲に手を差し伸べた。
そして、元譲は、元気を取り戻し時空間の解析を始めた。
(待っていて、刹那!貴女を一人にはさせないから)元譲は、刹那の事を必死に考えた。
「ハックシュン」リューナは、珍しくくしゃみをした。
「珍しいな、風邪でもひいたか?」アルグランドは、リューナに尋ねた。
「いや、違う。でもなんか、懐かしい気持ちになった」リューナは、笑った。
(ここでの生活が忙しくて、マスターのこと考えてなかったなぁ。落ち込んでなければいいけど、甄姫達がいるからいいか)刹那は、しみじみ思うと懐かしい匂いが風に乗ってやってきた。




