痛いし、お腹空いた。
痛い、痛い、痛い痛い。
腕を、めちゃくちゃ強打した……
考えてみれば当たり前だったなぁ、馬車は走ってるんだから、そりゃ降りようものなら、こんなことになる。
運良く飛び方が良かったのか、馬車がスピードに乗ってなかったのか、骨折せずに済んだ。
いや、死ななかった事の方が凄いのかも。
骨折しなかった。いや、アドレナリンでそう感じて無いだけかもだけど、骨折してないのは、奇跡かもなぁ……。
痛いのを我慢してでも今は逃げなくちゃ。
馬車が私が逃げたことに気が付いて、引き返してくるかも知れない。それに、次捕まったら絶対に逃げられない。
所見だからこそ通用するズルみたいなものだから…。
「はぁ、こんなことなら飛ぶ時のプランも考えておけば…。」
「いや、意味ないか……どうせ結果は変わんないだろうし…」
馬車道から逸れて、森の中へ逃げるように駆ける。
道の方が安全なのは分かってる。異世界だから、モンスターが出てくるかも知れないし、道から外れるから町や村、人の居る場所から離れるかもしれない。
もしかしたらそのまま死んでしまう可能性だってある。
そんな不安もあるけど、憧れだった異世界に。それも現実で、足を踏みしめれる。
ワクワクで胸がいっぱいになる。それでも。
「痛い…。」
暫く歩いていると、けもの道に出た。
さっきよりも幾分か歩きやすくなったけど、それでもやっぱり歩きづらい。現代日本に生きてた人間にとって、こんな道は選んで通らない限り歩かない。
それに加えて、今は大体8才くらいの体だ。尚更歩きづらく感じる。
けもの道を歩いていると、少し開けた場所に出た。
空も少しずつ暗くなってきているから、今日はここで休むことにしよう。
「おなかすいたぁ……。」
痛みには、激しく動かない限り気にならなくなってきた。その代わり、空腹が襲ってくる。
こんな自然の中に、そのまま食べて良さそうなものが無いか、周りを見渡す。
赤い実のようなものが、沢山つぶつぶと付いてる植物が目についた。
どうしよう。
すごくお腹が空いてる。少し、少しだけなら大丈夫…だよね?
恐る恐る一粒食べてみる。
小さい実を口の中で潰してみると、フレッシュな香りが鼻を抜ける。
「っ……辛ァい!!」
次に、辛みがピリピリくる。これ何処かで……。
「胡椒だ!これ!」
辛い…でも、美味しい。
よかった…少しは食べれるものが見つかった。
この調子なら、遭難時の3の法則も大丈夫かもしれない。
遭難したとき大事になるのは、呼吸が3分、体温3時間、水3日、食べもの3週間だったかな?
人間が生きられるギリギリだっけ?とりあえず、すぐに欲しいものは水だなぁ…。
そう言って、立ち上がる。
もう少しだけ動けるうちに、近くを散策しとかないと…。
といっても、暗くなってきたから、周りをチラッとまわるくらいに留めてくつもりだけど。
けもの道をもう少し進んでみる。
すると、あまり歩かないうちに広い場所に出る。
えっ……。
「…川だ!」
こんなに運が良くていいの?ついに異世界でのツキが回ってきた!
走って川に駆け寄って、水を飲む。体の痛さが気にならないくらいに嬉しい。
ガブガブ飲んで喉が潤ってから気付いた。
川の水って、飲んだら危ないんじゃ……。 まっまぁ、キ…綺麗な、透明で透き通った水だし。
「お腹壊さないかなぁ……?」