異世界と、馬車。
どうやら私は死んだらしい。
その事に気付いたのは、口減らしに売られた後だった。
実際に死んだ訳じゃない、いや、死んではいるのだが……。
私は、異世界とやらに転生したということだと思う。
「ふぅ………。」
こういう、転生したら赤ちゃんの姿でした~~♪。とか、転んだ拍子に転生したことに気付きました~~♪。とか。
そういう事は、今みたいにハードな事態になってから、気付く事じゃ無いでしょ!?
「はぁ………。」
ため息も止まりませんよ…。
どうやら、私の異世界はハードモードなようです。
しかし、しかし待たれよと、ココは異世界。
そう、異世界だ!
そして、私は転生者なのだ!
そしたら、現状を打開するためにやることは一つ。
それは……。
「『ステータス』っ……、!!」
決まったっ……。
異世界来たらやってみたいこと、その……8くらい?
さてさて、私のチートはどんなものですかな、っと。
期待とワクワクを胸に、目を開く。
そこには、半透明なゲームとかで見るような、なんというか、実際に言葉で説明すると難しいな…これ。
まぁ、俗に言う《ステータスウィンドウ》とか《情報窓》みたいな、そういう自分にしか見えないモノは無かった。
うん。
…うん?どういう事だ?
あれか?目を閉じてたから、それとも私自信の事を考えながら唱えるとか。
「『ステータス』っ!」
「『ステータス』っ!!」
あれぇ……?
おかしぃなぁ……。
「『ステータス』っ……。」
だって、おかしぃよ?ココ、異世界だよ?
私、危機的状況だよ?
何か無いの?例えば、超パワーで扉を壊すとか、なんか凄い魔法とかで、馬車を燃やしたりして、脱出とか……。
ほら、他にはストレージとか、転移とか…。
異世界ならでは何か無いの?
「ほ…ほら、『ファイヤーボール』…」
「『ストレージ』っ!」
「『ワープ』ぅうっ、…!」
思い付くナニカを適当に唱えていく。
すると、目の前に空間が裂けたような、ネジ曲がったような。
貯めた水を、無理やり手で開いてこじ開けた、掻き分けた感じの穴が出てきた。
「えっ?……えっ?」
何?うん?…………。
「キターー!ほら見たことか!やっぱりあるんだよ。神様は見捨ててなかった。」
こんな見るからにワープホールな格好いい穴が出てきたんだよ?
こりゃあもう、勝ったね。何にかは知らないけど、もう勝ったね。
「フッフッフ、これでこんな馬車とはおサラバだぁ!」
恐る恐る、手から入る。
しかし、肘が入った辺りから腕から先が全く入らない。
「なん……っ!」
いや、わかった。これは違う、この穴はワープホールじゃなくて、ストレージだ。
それなら。
「それならっ!!」
『ドン!!』
馬車、進行方向の壁が強く叩かれる。
『オイっ!うるせぇぞ!』
『さっきからギャーギャー騒ぎやがって、もう売られたんだよ、少しはしおらしく出来ねぇのか!』
ため息が何度も聞こえてくる。
そんな風に怒鳴られてもね……。私は普通とは違って、異世界に来たばっかりなんだよ?
そんなこと、元自称高校生に言われてもねぇ…。
「ハハッ……はぁ…」
いや、自分で考えてダメージ受けないでもろて…
でも、いいもんね。
今はこんな、いかにも可愛い。どのくらいだろう?だいたい、8才くらいかな?
残ってる少ない、儚い?
8才の記憶力……。まぁ、この子の記憶だと、私が産まれて直ぐに、生活が窮屈になったみたいだし…。
おなかすいた記憶がつよい。
「はぁ、ブルーになってもね……。」
「せっかく異世界来たんだから、もう少しでもテンション上げないと…。」
「よしっ!」
一つ思い付いてた事があったんだよね。
馬車に乗った時の記憶だけど、私が投げて乗せられた後に、ガラガラって木を擦るみたいな音が、鳴ってたんだよね。
多分、閂が付けられた音だと思う。
アニメとか、ドラマで聞いた音だった気がするし。
その閂をストレージで回収して、扉を開けて堂々と逃げ出そうという、崇高な考えが思い付いてた訳ですね。
まぁ、そもそも馬車の後ろに人がいない前提の作戦ではあるけど、記憶上私を買いに来た人は、二人だった。
そして、前から話し声が聴こえてくる。
まだ、仲間が居るかも知れないけど、今以上に好機は無いと思うし、実行するべき…だと思う。
そうと決まれば直ぐに実行!
町とか、他の村に着いた後だとやりづらくなる。
他の子が売られる、とかだったら申し訳ないけど、今私に他の子を考えてる余裕もない。
扉の前に近づいて、一応隙間から外を見と、やっぱり予想通り一本の木で扉を停めてる……んだと思う。
なにせ、内側からだと木材で扉を停めてるのか、どうかわかんないし……
とりあえず、ストレージで閂回収作戦を開始する。
一、閂をストレージ内に収納する。
二、閂を取り除いたことで鍵か空いた扉を開け、脱出する。
三、物陰とか、馬車道から外れて身を隠す。
うん。完璧なプランだ……。うん、これ以上無いほど完璧すぎる作戦…。
「よしっ、始めるか……。『ストレージ』っ!」
カクヨムさんに投稿していたモノをこちらにも投稿…という形です。
(現在忙しく、あまり書く時間が取れない為の、苦肉の策…。)
遅筆な私の、幼作にして遅作……、応援よろしくお願いいたします。