2人のアイス
「こんにちは。」
春うららの昼下がり。
2人ご夫婦が来店してきた。
いつものようにソファ席に座り、
メニュー表を見て楽しそうに談笑をしている。
『すみません。』
「何かお決まりですか?」
2人の元へ駆け寄る。
やっぱり少し緊張するな…
『たまごサンド2つと、コーヒーひとつお願いします。』
『クリームソーダもお願いします。』
「たまごサンド2つと、コーヒーと
クリームソーダ、おひとつずつですね。」
『『はい』』
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
『また来れてよかったな。』
『ほんとそうよね。』
棚に飾られたアンティーク雑貨に壁に掛けられた振り子時計。
思い出のこの席も何もかもあの時のままだった。
『閉店するって聞いた時は驚いたけど、
まさか、お孫さんが継いでくれるなんてね。』
『思い出の場所だもんな。』
初めて君と出会えたこの場所で
もう一度一緒に過ごせるなんて
本当に夢のようだ。
時の流れは誰にも止められない。
それでも、たまにはこう過去に戻れるような
不思議な場所があったっていい。
『お孫さんに感謝を伝えないとな。』
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「お待たせしました
たまごサンドとコーヒー、クリームソーダになります。」
この2人は知っている。
祖父母が経営していた時からの常連客だ。
見かけることも多々あり、顔馴染みと言ってもいいだろう。
ふと声をかけられる。
『ありがとうございます。』
「こちらこそ。」
詳しく言われなくてもわかる。
その想いは自分も同じ、
僕もあなたもこの場所を無くしたくなかったのだから。
「今度、お子さんも連れてきたらどうですか?
サービスして差し上げます。」
『次来る時は連れてきますね。』
僕も恋人欲しいな…
愛される店は愛する人々を連れてくる。
この空間には、安易に立ち入るべきではないな。
店の隅にソファとテーブル、2人の姿。
窓には、花瓶に生けられたチューリップ。
ちなみにクリームソーダのアイスは
少し大きめにしておきました。
スプーンは2つです。
お読みいただきありがとうございます。
記憶を語る上で、
場所ってけっこう大切だと思ってます。
アイス関連で少し話させてください。
屋台のかき氷で、
ストローの先がスプーンになってるやつが好きです。
誰か共感してほしい、、