祭り
すいませんでした
対抗戦もいざ始まってみると面白いものだ。
さっきまであんなに険悪ムードだった両軍も今は戦ってる味方の応援をしている。
逃げてた特待生も賛成して日本の体育祭の様な盛り上がりを見せている。
さらに場外乱闘を互いに一切しない秩序に則っている。
いい空間だ。
そして、本日の目玉カードの1つである、
ダグ=スカーフvsイリム=スターライトの試合が始まる。
ダグは大剣を使用する重兵タイプで自らは動かず、出方を伺うタイプ、あまりタイマンに向いていないように見えるが、この大一番を任されるくらいの実力者ではあるようだ。
一方でイリムは魔術は実戦で使えるレベルにはまだ満たしていない為、双剣を使っているが背中には一般的な剣も装備している。
双剣の場合は射程が短く不利ではあるが、一般試験からの特待生としてのプライドを見せてもらいたいところだ。
「その剣じゃ俺の大剣には届かないぜ」
「五月蝿いわね、二流のくせに本当の戦いを見せてあげる」
その場で軽く足踏みをしてすぐに動き始める。
前までは一直線に突っ走っていたイリムだったが、流石にそれでは不利と判断したのか、少しずつ距離を縮めながら様子を伺う。
(彼の体型、持ち武器を見ると確実に重兵…セオリーならこちらの攻撃に合わせる…けど!)
ダグは見てる人全員を騙した、タイミングを読み、イリムに距離を合わせ大剣を振り上げる。
イリムは、横跳びで何とか回避。
ダグは続けて横凪を一閃。重量ある大剣とは思えない程軽く扱っている。
その追撃にはダグの仲間は大いに沸いた。
しかし、その攻撃もバク宙で躱す。
イリムの反応速度は俺の見た中で1番早いと思う。
「ここは、戦場じゃなくて、対抗戦これくらいやって当然って訳ね……けどこれで終わり!」
着地と同時に跳び上がり斬りかかろうとするも、ダグはその攻撃を何とか大剣で防ぐ。
剣が交差する。激しい剣音がバリアの外にも聞こえる。
それだけレベルの高い試合に場外も食いつくように見て大盛り上がりのようだ。
自分の動きに忠実なイリムに対して、独創的な動きをするダグ、この勝負は互角だと思われた瞬間に決着は案外あっけなく着いた。
「この俺が…短剣の女なんかに……」
「……」
イリムは無言で訓練場を出ると、歓声が聞こえて来たようで、耳を塞いだ。
「……五月蝿い」
「いいじゃねえかよイリム〜いい動きだったぜ」
「触らないで」
マギアの取り巻きに触られてイラッとしたのか払ってどこかに行ってしまった。
「くそっ……すまん!」
その後回復を終えたダグも外に出ると労いの言葉がかけられる。
それほどに実力が拮抗しており最高の試合だった。
結果はイリムの勝利。
最後は得意の接近戦で、流れるように弱点を捉えた。
ダグも熱くなっていたのか、数歩前に踏み込んだせいで斬るのが少しだけ遅れてしまった。
その時一歩引いてカウンターを狙っていたら結果は変わっていたかもしれない。
「次はいよいよ私の番みたいね」
ラフィーネが立ち上がると、マギアも同時に立ち上がり訓練場に入る。
その時には他の所で戦っていた人達も一度試合を止めこちらに見に来るほどだ。
「ルイスとグランはどっちが勝つと思う?」
「俺の主観と偏見ではあるが圧倒的にラフィが勝つだろうな、いくらマギアがラフィの術に気付いていたとしても突破して勝つ事は難しいだろうな、ラフィも実力で言えばA級くらいあってもおかしくは無い」
グランの意見は最もに聞こえる。
やはり年齢による経験の差は大きい。
マギアが俺と同じ12歳に対して、ラフィーネはルイスと同年の17歳。
扱う魔術は炎と氷、マギアの方が一見有利に見えなくは無いが、氷は守備にも有用である高位な魔術だ。
「俺も同じだな一方的になるんじゃ無いか?手加減さえしない限りは」
「あの人するようなタイプじゃ無いでしょ」
俺は漫画とかの知識でああ言う人当たりの良さそうな人は結構と言うか相当な残酷な性格であると言う事を知っている。
まあ、ラフィーネに関してはその片鱗を隠そうともしていない気がする。
試合が始まるとすぐに、ラフィがマギアに話しかける。
「ねぇ私、剣術使えないの、だから魔術だけにしてくれないかな?」
「あ?ハンデが欲しいのか?」
「ええ、私か弱いから」
「はぁ……」
するといきなりマギアが短剣をラフィに投げつける。
分かっていたのか、一切ビビる事もなく、氷の膜を作りヒビは入るものの剣が体に届くことはなかった。
「しゃあねえな……こんなんで文句言う奴が最強なんてありえねえもんなあ!」
「ふふっありがとう、嬉しいわ……でも、貴方は私に勝てない」
「何だと!」
怒りに触れたマギアは両腕に炎を宿した。
その炎は青色を放っている。
「氷雪の槍」
頭上にある無数の槍がマギアを襲う。
「うおおっ!」
マギアは周りに炎を纏い氷の槍を溶かして進む。
「剣は使わないんじゃねえのかよ!嘘つきやがって……火炎放射!!」
マギアも防戦一方にはなるまいと反撃の一手を出すが、槍を対処しているうちに戦場は既に氷の世界になっていた。
建造物はマギアの炎に負ける事なく逆に火が消えてしまうほどだ。
「ごめんね、マギア君、私負けるのが1番嫌いなのだから……」
そう言ってラフィは手を掲げる。
すると、マギアの足元に氷山が出来る。ギリギリ一度は躱す事が出来た。
マギアは連続は無いだろうと思っていたが、ラフィの攻撃は一度や二度では終わらなかった。
避けた先にも、またその先にも、追い打ちをかけるように氷の刃が襲い掛かる。
もはや一方的な試合展開だ。
特待生側はあまりの実力差に言葉も出ない程だ。
「これなんだよな……氷の魔法が高位だとされる理由は」
「どう言う事?」
「まあ、ラフィはそこら辺のとは次元が違う訳だが、氷は気体を放つこともできれば個体としてマップを掲載することもできる。その点に置いてまず1つ、そして、その形成された地に繋がるような形で氷を作り出す事が出来る……元ある所から増殖させるだけだから必要魔力も多くはないし、不意打ちも突く事ができる。後はシンプルに凍らせたらな……
それに比べたら火属性は火力は最上位だがその一点だけ、簡単な話だ」
「くっ……そ、がっ!」
マギアは何もできていない。
あんなに一般生を挑発しておいてこのザマは恥ずかしいのだろう。
もう誰がみても決着の着いている試合に風穴を開ける一手を繰り出す。
ラフィの氷山の中にわざと入る。
そうする事で追加で攻撃されることは無い。
「おお!マギアって奴頭もキレるんだな!とはいえ、実戦でこれなら死んでるのによくやるなー」
これにはルイスも感激の様子。
そして、自分を囲っていた氷を青い炎で溶かしてそのまま直接ラフィを狙う。
「火球・蒼!!!」
放った攻撃はラフィが出した氷をことごとく貫いて溶かす。
「まだだ!火炎放射・蒼!!」
避けられるのをお見通しでさらに追撃。
「ぐはっ……」
しかし、その追撃も虚しく、ラフィの氷の槍がマギアの心臓を貫いていた。
すると、マギアの目の前に来て耳打ちをする。
「よく頑張りましたね、貴方も善戦してましたよ」
「……チッ」
ラフィが訓練場を出ると皆が駆け寄っていく。
「流石はラフィさんだ!マギアなんて雑魚に負けるはずがないんだ!」
1人の男が大きな声で我が軍の勝利宣言をする。
その声に呼応する様に他の人も声を上げる。
トータルだと、特待生の方が勝利数は多いみたいだが、この一戦で息を吹き返していた。
すると───
「いえ、私はマギア君にハンデを貰っていました
もし全力を出されていたら私は負けていたかもしれません、だからこれ以上彼を侮辱するのはやめて下さい」
そして、マギアが出てくる時には両軍共にあたたかい拍手に包まれていた。
それを見て、不安だったであろう教師達も安心の様だ。
「まあ、恐らくハンデが無くてもラフィが勝ってただろうけどな……こんな一方的にはならんとは思うけど」
「小さい声とは言えこの雰囲気に水を差すなよ俺でも分かる」
「悪い悪い……んじゃ俺は一番強そうな奴と試合でもしてくるか」
そう言って、用のある男と付き添いの女を連れてどこかに行ってしまった。
「グラン……」
「何だ?」
「この場を借りて言う、俺と勝負をしないか?」
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